ザンビアでのボランティア活動を振り返って

2020年12月7日

2018年度3次隊 日本語教育
国立ザンビア大学
河田実紗

1.はじめに

私はザンビアの首都ルサカにある国立ザンビア大学で日本語教育隊員として活動していました2018年度3次隊の河田実紗と申します。2019年1月にザンビアに赴任し、2020年3月に新型コロナウイルスの影響を受けて退避帰国しました。ザンビアに派遣される前は、日本やインドネシアで日本語教師をしていました。

2.赴任後の活動

赴任当初、ザンビア国内で有資格者の日本語教師は私のみでした。私は日本語教師として授業運営の経験はありましたが、カリキュラム作成や学生・成績管理、広報等の全般的な日本語教育業務を行った経験がなかったので、赴任前はとても不安でした。しかし、赴任後は同僚の先生や大学の教職員の方々、同じザンビア大学内にオフィスを構える北海道大学アフリカルサカオフィスの方々に支えられ、活動を軌道に乗せることができました。

私はザンビア大学の正課講座、ザンビア大学の学生や教職員・地域住民を対象とした公開講座や5日間短期集中講座を開講、運営しました。学生が日本語を勉強する主な動機は、日本のアニメ・漫画が好きだったり、日本の技術に興味があったりするからです。日本留学を希望する学生もいます。ザンビア大学の学生は少し恥ずかしがり屋ですが、教えるのが上手で授業でも教え合いを多く取り入れました。ザンビアには日系企業が少なく、学生が日本人と接する機会は少ないですが、ザンビア大学が首都にあるおかげで、他の青年海外協力隊員やJICA関係者の方などが授業の見学に来られ、学生が多くの日本人と日本語を話す機会を得ることができました。

私自身、ゼロから日本語を勉強する学生に教えた経験がなかったので、日本語が全く分からない状態の学生が約8か月後には日本語で簡単なコミュニケーションがとれるようになったときはとても感慨深かったです。

3.退避帰国中の活動

2020年3月以降、私の帰国に伴い、ザンビアでは長期的に日本語を教えられる日本語教師が不在となり、全ての日本語の対面授業が中止されています。

一方で、遠隔地に住む人がオンライン上で講義を受講できるようザンビア大学に導入されたmoodle(e-learning学習システム)が、コロナ禍におけるザンビア大学の対面授業の代用とされています。

帰国後はザンビア大学の正課講座の学生に対して、moodleに教材をアップロードしたり、ミニテストや作文等の課題を課したりしています。もし私がザンビアに再赴任できなくても、日本語教育が再開しやすいように、moodleにアップロードしている教材は授業でも先生がそのまま使用できるものにしています。また、12月には正課講座の最終試験が行われるため、筆記試験・リスニング試験の問題を作成しました。大学に日本語の先生がいなくても、日本語を勉強し続けてくれている学生がいることを嬉しく、そして誇りに思います。

また、11月にはJICA関西が主催する「日本語教育に関心ある方のための JICA海外協力隊トークライブ~ 現役の日本語教育隊員から学ぶ、日本語を使った国際協力 ~」への登壇の機会がありました。ザンビアは日本人にとってあまり馴染みのない国なので、日本語教育のみならず、ザンビアという国を知ってもらえる機会にもなったと思います。

4.ザンビアでの活動を振り返って

当たり前ですが、ザンビアにはザンビアの習慣、文化、価値観があります。スーパーのレジで行列ができても、店員は作業スピードを速めません。最初はイライラしましたが、イライラしているのは私だけでした。日本では、レジで行列ができていると私は焦って財布から小銭を探してちょうどの金額を払うことを諦めることがありますが、ザンビアでは焦らず財布の中から小銭を探すことができました。彼らにとってレジの仕事とは正確にお金のやりとりすることに過ぎないのかなと感じました。

授業では、会話練習や書き練習などの練習の目的や目標を学生自身が把握し、自分や他の学生の目標達成のために練習していました。時には、私が用意した練習以外の方法で、自分に合った練習を増やしたり、足りない部分を補ったりするなど、私が授業の目標や目的を言う必要はありませんでした。

ザンビア人は物事をシンプルに考えたり、何が大切なのか・肝なのかをよく理解し、それらを大事にしているように見えました。私も悩んだり困ったりしたときは、物事をシンプルに考え、一番重要なのは何か、それが達成できているのか、できていないならどうしたら達成できるのか、達成できているなら、悩む必要はないと思うようになりました。

これらはほんのわずかな例ですが、ザンビアでは多くの人に出会い、様々な出来事を経験し、学ぶことができました。

5.おわりに

帰国後、時折ザンビアでの生活を思い出します。ザンビアでは、すれ違う時に知らない人でも挨拶をするのが一般的です。日本人の私も例外ではなく、気持ちよく挨拶を交わします。挨拶ひとつですが、どこかザンビアに受け入れてもらえているように感じました。またザンビアの公用語の1つであり、首都ルサカで話されているニャンジャ語の挨拶は"Muli Bwanji(ムリ ブワンジー?)" "Ndili Bwino(ディリ ブィーノ)."です。日本語に翻訳すると「こんにちは、元気?」「こんにちは。元気だよ」です。日本では普段の挨拶で「元気?」と聞く習慣があまりありません。ザンビアに赴任した当初は、いちいち「元気?」と聞かなくても顔を見れば元気と分かるだろうと思っていましたが、日本に帰国してしばらくは毎日挨拶を交わしていた現地の方々はもちろん、日本ですれ違う知らない人に挨拶したくて、すれ違う人が元気なのか気になってたまらなくなりました。

ザンビアのインターネット環境があまり良好ではないこともあり、zoom等を用いたオンライン授業を行うことが困難なことは、残念ですし、寂しくもあります。私の任期は来年の1月で終わってしまうので、ザンビアに再赴任できる可能性は低いですが、ザンビア大学で対面での日本語教育が少しでも早く再開されることを心から願っています。

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授業中の教え合いの風景

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帰国直前に日本食パーティーをした時。河田隊員は写真中央向かって右