教育

制作担当者からのメッセージ

【画像】

又地淳国際協力専門員

この度、日本の初等算数教育で学ぶ基礎的な計算方法について解説するJICA-Net教材を作成しました。具体的には、日本の小学校1年生で学ぶ、「数の概念」、「たし算」、「ひき算」、「10より大きい数」、「繰り上りのあるたし算」、「繰り下がりあるひき算」をカバーしています。

途上国の子どもたちの計算の仕方を見ていると、小学校高学年レベルになっても指を使って計算していたり、計算する数だけ棒を書いて線を引いて消したり、一本ずつ数えている場面がよく見られます。

他方、日本の算数では「おはじき」や「ブロック」などの「半具体物」を用いて、自分で動かしながら、数の概念を理解したり、足し算や引き算を学びます。そして、いつの間にか、そのようなものを使わずに、頭の中で計算できるように指導します。また、頭の中で10のかたまりを作ったり、10を二つの数にバラしたりする、10の合成と分解の操作が日本の算数教育では重視されています。

基礎的な計算の仕方について途上国の関係者と話すと、このような日本の一般的な考え方が、多くの途上国では必ずしも重視されていないことが分かってきました。日本の指導法や考え方が、必ずしも途上国にとって最適かどうかは、慎重に考える必要はありますが、少なくとも、「途上国の教育関係者に対して、日本の算数教育の特徴を説明する教材があると役に立つだろう」と感じたことが、今回の教材を作りたいと感じたきっかけでした。

この教材を使った途上国の教育関係者が、日本の算数教育の経験を理解し、指導方法の改善や、自国のカリキュラムや教科書・教材の開発に役立てていただけることを願っています。またこの教材が、協力隊員や事務所の教育担当のみなさんにとって、日本の教育経験を振り返り、任国との考え方の違いを考えるきっかけになれば幸いです。