サイドイベント「ABEイニシアティブを通じたアフリカと日本の懸け橋-日本企業のアフリカでのビジネス促進に向けて-」

ネットワークをより太く、強く

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元研修員と、インターン受入れ実績のある企業関係者によるパネルディスカッション

「日本企業は、信頼できるネットワークとして、ぜひわれわれを活用してほしい」
「文化や言語の違いはあるが、日本企業はまずは一歩踏み出すことが重要」
「顧客がこれだけ多様化しているのに、日本企業が多様化しなくてよいわけがない」

2019年8月28日、横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)のサイドイベントにて、力強い発言が相次ぎました。

このサイドイベントは、アフリカの若者を日本に招き、産業人材育成を目指す長期研修プログラム「ABEイニシアティブ」をテーマにしたもので、2014年以来、プログラムに参加した研修員はすでに1,200人以上に上っています。当日は、ABEイニシアティブを通じた日本とアフリカのネットワーク拡大をテーマに、元/現役研修員や日本企業、大学関係者が参加して、日本企業から見たABEイニシアティブの活用や、研修員から見た帰国後のネットワーク維持の重要性について議論が交わされました。

プログラムにはアフリカ54カ国から1,200人以上が参加

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留学先の大学で講義を受ける研修員

ABEイニシアティブは、アフリカの若者に日本の大学院での修士号取得と日本企業でのインターンシップの機会を提供する1~3年間の長期研修プログラムです。アフリカの産業人材育成と、日本企業のアフリカでのビジネスの「水先案内人」を育成することを目的に、2013年に開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で構想が表明され、2014年に初めての研修員が来日しました。

以来、2019年4月までにアフリカ54カ国すべての国から1,219人が来日。すでにプログラムを修了した研修員は775人に上り、研修員のネットワークや、日本企業と研修員が連携したビジネスも誕生しています。

JICAは、こうした成果を共有し、プログラムの今後の活用の道を探るため、8月28日に横浜市でTICAD7のサイドイベント「ABEイニシアティブを通じたアフリカと日本の懸け橋-日本企業のアフリカでのビジネス促進に向けて-」を開催しました。

TICAD7で安倍首相がABEイニシアティブのさらなる拡大を表明

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企業でのインターンを通じて日本のモノづくりを体感
写真:SUNTECH CO., LTD.

ABEイニシアティブのプログラムが本格的に動き始めた2014年以来2019年6月までに、研修員のインターン受入れ先として登録いただいた企業は584社、留学先として登録いただいた大学は77校に上っています。今回のイベントには、インターン受入れ企業や留学先大学の関係者、在京アフリカ大使館などから140人以上が参加しました。

イベント開会に当たり、JICAの加藤宏理事(当時)が、安倍晋三首相が同日のTICAD7本会合オープニングスピーチで表明した、今後6年間で3,000人の産業人材を育成する「ABEイニシアティブ3.0」を紹介し、今後もアフリカと日本が協力してプログラムを推進していくと決意を述べました。

また来賓代表として日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟会長代行の三原朝彦衆議院議員にごあいさついただき、ABEイニシアティブ発案のきっかけや本プログラムへの熱い思い、そして研修員や日本企業に対する温かい激励を頂きました。

日本で得た知識・経験が多様な活動として結実

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エジプト出身のアフメド氏は筑波大学在学中に留学生向けの日本文化情報発信に取り組んだ経験も発表した

現役の公務員、民間企業や教育機関所属者など、さまざまな顔を持つABEイニシアティブの研修員は、20倍という競争をくぐり抜けて来日します。イベントでは、5人の元研修員と現役の研修員が、プログラムを活用した多様な活動を紹介しました。

日本の大学で学んだ起業家育成メソッドを、帰国後勤務先の大学での人材育成に活用するソマリアのハッサン・モハメド氏、出身国のケニアを含む東アフリカ3カ国のABEイニシアティブ研修員と日本企業をつなぐプラットフォームを構築したキプケンボイ・ベンソン氏、母国の水資源や衛生に対する問題意識から日本で公衆衛生を学び、洗剤などを製造する日本企業の海外拠点で活躍するウガンダのロビナ・アジョク氏、学んだ地震工学を生かして日本企業に勤務するエジプトのアラファト・アフメド氏。そして現役のABEイニシアティブ研修員であるトーゴ出身のヤウオビ・ヘルトン氏は、アフリカでパソコンが安価で購入できるITプロジェクトを立ち上げ、日本企業との協働を図っています。

研修員と日本企業を結ぶプラットフォームも誕生

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インターン先の企業で日本文化に関するドキュメンタリー制作に取り組む研修員

ABEイニシアティブ研修員の発表に続いて、パネルディスカッションにはインターン受入れ企業2社が登壇しました。

神奈川県横浜市で排水処理薬品を製造する日之出産業株式会社取締役の藤田香氏は、「アフリカ各国の水事情などの情報や自社サービスに対するアフリカ目線でのフィードバックのおかげで、アフリカ展開について具体的にイメージできるようになった」と述べ、兵庫県神戸市の通信・音響・映像機器の製造販売を手掛けるTOA株式会社海外営業部マーケティング課長の上野裕介氏は、「インターンシップ生の受け入れの経験がアフリカ進出に向けた社内環境整備に貢献した。文化や言語の違いはあるが、まずは一歩踏み出すことが重要」と話しました。

最後に、ABEイニシアティブから生まれた人的ネットワークをいかに発展させていくかなど、会場の来場者も含めて白熱した議論が行われました。

「日本企業は信頼できるネットワークとして、ぜひわれわれを活用してほしい」と呼び掛けたのは、全アフリカのABEイニシアティブ研修員と日本企業を結ぶプラットフォーム「Kakehashi Africa」の現CEOである南アフリカ出身の元研修員、ニコ・デ・ヴェット氏。また、会場を訪れていた大学関係者は、受け入れている研修員の起業家精神やイノベーションへの関心の高さを賞賛し、日本の学生に還元するためにも、アフリカと日本、双方が参加する起業家育成プログラムを立ち上げてはどうかと提案しました。