Interview 20 鍵山 喬さん(三重県四日市市在住)

シニア海外協力隊 ドミニカ共和国 廃棄物処理(2009年9月~2011年7月)
シニア海外協力隊 メキシコ 廃棄物処理(2015年10月~2017年10月)

1.JICA海外協力隊への応募のきっかけは何でしたか?

退職後の何をすべきか迷っていた時に、友人から退職後のJICA海外協力隊としてのボランティア活動の経験談を聞いたことや海外生活へのあこがれ、風景、人々、文化に興味を持っていたこと、さらには自分の経験や知識、持っている技術等を世の中の為に役立てたいと思っていました。こうした思いから、これまでとは全く異なる環境に身をおいて新しいことに挑戦しようと決断し応募しました。

2.JICA海外協力隊としての2年間は、どのような活動を行いましたか?

開発途上国で大きな問題となっている廃棄物処理についての助言、対策指導を行いました。初回赴任先のドミニカ共和国では、ごみ処理について実際にゴミ箱を試験的に設置するなどして人々のごみの排出挙動について調査し、ごみ箱設置の必要性とごみ収集車が確実に収集していくための効率アップのための方策(例えば積み替え基地の設計など)を提案しました。また収集車両が不足しており、特に地域の小中学校周辺でのゴミの散乱放置がひどく害虫の発生や腐敗臭などの衛生上の問題がありました。この問題を解決するため在ドミニカ日本大使館と協力し、草の根・人間の安全保障無償資金協力を活用して、日本の中古のごみ収集車を整備して供与しました。日本の収集車両は小型のため現地の狭い道でも効率的な収集作業が可能となり、学校周辺の環境衛生面に寄与することができました。

また2回目に赴任したメキシコ合衆国では、下水道の排水処理プラントの改善(例えば臭気対策)や新設されるプラントの技術内容に関し、プロセスの原理やオペレーションのポイント、設備の特徴などを解説するなどしました。特に汚泥のメタンガス(注1)1化行程で副生するガスの有効利用や処理残渣(注2)の堆肥化利用方法などについて提案し、それらの一部は実際に採用され、プラントエネルギー(注3)使用の削減に寄与しました。

(注1)メタンガス:可燃性ガスで、有機物の腐敗や発酵などにより発生する。メタンにはCO2の4倍の温室化効果を有す。
(注2)処理残渣(しょりざんさ):有機物汚泥をメタン発酵処理した残りかす
(注3)プラントエネルギー:排水処理プラントを動かすための熱(重油)や電気をさす。

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日本からドミニカに到着し、整備され寄贈された中古ゴミ収集車(ドミニカ)

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学校周辺に散乱するゴミ(ドミニカ)

3.任期を終えて帰国した後、現在のお仕事を選んだ理由やそのお仕事に巡り合うまでどのような道をたどりましたか?

現在は、日本に在住する外国人への日本語ボランティアとして活動しています。これまでにペルー人やその子供たち、ブラジル人、更には技能実習生として来日しているベトナム人などに言葉だけでなく日本をよく理解してもらえるように習慣や文化についても伝えるようにしています。また四日市市でJICA海外協力隊のボランティア経験や活動内容について講演をしています。

4.JICA海外協力隊として過ごした2年間で経験したこと、それらの経験から学んだことで、今の仕事や人生に役立っていること影響を与えたことなどありますか?

JICA海外協力隊としての現地におけるボランティア活動は、JICAをはじめとして、受け入れる国の政府や、地方自治体の関係者、職場の同僚など多くの人達の助けがあってこそ初めて可能です。実際に現地で生活を始めると、現地で生活していく為の住居探し、電気や、通信などの契約、台風による停電などいろいろと困った事が起こります。そのような時に現地の人達から受けた助けは本当にありがたいものでした。その頃のことを思い出すと、ボランティアとして現地のために何かをなすというよりむしろ自分が彼らから受けている恩恵の方が多いのではないかと感じたことが多々ありました。現地の人々の温かい思いやりや、気配りには今でも私の心の中に強く印象深く残っています。こうした経験が、ボランティア活動は相互作用といわれる所以であることを実感しました。

モノや金は使えばなくなってしまいます。他方、利他の心や気持ちは使われなければ消滅していきます。これからも些細なことでもいいから誰かの役に立つ活動を行って利他の精神を持ち続けていければと思っています。

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海洋汚染に繋がる河川に漂うゴミ(ドミニカ)

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排水処理プラントでの設備の点検立ち合い(メキシコ)

5.JICA海外協力隊として「海外の開発途上といわれる国が抱える課題にボランティアとして取り組むこと」と、「日本の自分が育ってきた場所や住んでいる地域の課題に取り組み元気にすること」は遠いように感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、共通する点を教えてください。

海外であれ、地域であれ、課題解決の根本は人にあります。世の中の為に、誰かの為にという思いは地域でも海外でも同じです。往々にして組織や自分のためというエゴが頭をもたげてきますが、社会や人々のためにという少し広い視点を見据えたうえで、個々の具体的活動や行動を行っていけば、部分最適化ではなく全体としてより良い方向に物事が向かっていくと考えています。

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新規排水処理プラントの建設状況(メキシコ)