「地域有識者懇談会」(第9回会合)開催概要

1.日時

2016年2月26日(木) 15:30〜17:30

2.場所

JICA中部セミナールームB

3.出席者

  • 委員:伊藤範久委員、原田さとみ委員、山田雅雄委員
  • JICA中部関係者:熊谷晃子所長、竹内康人次長兼市民参加協力課長、森本康裕総務課長、岩瀬誠研修業務課長、小原基文専任参事、多田知幸専任参事、八重樫成寛専任参事、伊藤英樹職員、木村真樹子職員、竹之越佳子職員、立場正夫市民参加・民間連携協力アドバイザー

4.議事概要

次の(1)から(4)のテーマに関する最近の動向、取り組みの状況につき報告され、引き続き意見交換が行われた。主な報告、意見は以下のとおり。

(1)フェアトレード・市民参加協力

  • 昨年、名古屋市はフェアトレード・タウンとなった。来年度の名古屋市予算要求案のなかにフェアトレード関係予算が計上されたり、市長提案の中でもフェアトレードについて言及されている。名古屋市の場合、単に開発途上国とのフェアトレードというだけではなく、環境ともつながるフェアトレードという考え方を採用している。世界とつながる私たちの暮らしを見直し、交流の促進や町のにぎわいの創出にも貢献することを企図しており、この点が名古屋市がフェアトレード・「タウン」を推進することのメリットとなる。自然環境の使い方や地域との関わり方がフェアであるかどうか考え、地球環境や地域との間でフェアトレードを行い、自然の恵みを次世代に引き継げるようにという意図もある。
  • フェアトレード・タウンになったことにより、フェアトレードが市の政策の様々な面に取り込まれるようになった。例えば、給食にフェアトレードのゴマ使用するようになったが、これはこれまで使ってきたゴマも排除する訳でなく併行して使用するとい事例が生まれた。また、市民経済局の消費者市民教育や健康福祉局の食育ではエシカルやフェアトレードが取り上げられるようになった。
  • 名古屋市が制作したフェアトレードのリーフレットでは、日本と海外との関係だけではなく、国内での川・水域の上流と下流の関係も示されており、私たちの生活がつながっているものを示している。

(2)NGOとの連携

  • JICAの草の根技術協力は、JICAが直接行う開発協力では届かない部分をカバーするもので、JICAの開発協力事業より難易度が高い。何もないところや実施体制の弱いところ、またこれまで試みられていない事柄に臨むこと等のチャレンジ精神をうまく評価することは大切ではないか。
  • 一昨年、草の根技術協力開始から10年が経過し、NGOとJICAで、10年間の振り返りを行ったが、草の根の特色として、国ごとの政策としての優先順位が低くて手が付けられていない分野にNGOが関心をもってくれて、カバーできるというメリットや草の根レベルで住民により近いところで実施され、裨益効果がいきわたるというメリットがあることが指摘された。また、草の根技術協力は必ずしもJICAの国ごとの優先分野に合致してなくとも実施する方針をとっている。一方で草の根技術協力でも成果を求められている面もあり、そのバランスを考えて審査、選定されている。ご指摘の点にも注意して進めてゆきたい。
  • インフラ輸出には現地政府とのネットワークが必要。自治体が草の根技術協力を実施し年数を積み重ねれば、その効果として人的ネットワークが形成され、将来の新たな事業展開に広がりがでるのではないか。

(3)民間企業連携

  • 中部経済連合会は「新中部圏の創生〜各地域の自助努力と連携による経済的自立性の向上〜」という報告書を取りまとめた。現在、日本の経済のうちグローバル企業は良い状況にあるが、ローカル経済圏を対象としている企業の状況は必ずしも良くなく、グローバル企業からローカル企業へのトリクルダウン効果はまだ十分ではない。この状況は中部圏でも同様。これからの中部圏を考えるとリニア新幹線開通が大きな要素となる。この報告書は、スーパーメガリージョンとしての中部圏の創生の意味合い、可能性を提示するもの。また産業界自らに対し奮起を呼びかけるとともに、国、自治体にその支援を呼びかけようとするもの。その施策の方針として3つの柱「定住人口減少の抑制と交流・対流人口の増加」、「リニア新幹線開通にともなうスーパーメガリージョンの一角を担う」、「各地域の経済的自立性を高め、地域間の連携を深める」を掲げ、具体的な提言を策定した。
  • 水の命とものづくり中部フォーラムの研究開発人材育成検討ワークショップの取り組みとして、この地域の環境、水分野の研究者の研究分野の一覧表や名古屋大、名古屋工業大、豊橋技術科学大やこの地域の自治体と関係する外国とその取組の一覧表、ICETTの研修事業の実績等の情報整理を進めている。
  • 水の命とものづくり中部フォーラムのもう一つのビジネス検討ワークショップでは、中部にある水やものづくりのノウハウ、得意とする技術を中部ブランドのビジネスパッケージとして売り込むコンセプトで検討を進めている。上下水道分野で中小、中堅企業の得意とする技術、製品それぞれをパッケージに仕立てている。
  • 中小企業群がどのように海外ビジネスに取組むかという事例として、シンガポールの国際水週間の展示では、水の命とものづくり中部フォーラム独特の取組みとして、安部日鋼のPCタンクによる配水池、テスコアジアの給水ネットワーク全体の無収水対策、兼工業のバルブ、愛知時計電機の電磁流量計などパッケージにして売り込みを図った。そのうち一つでも関心を持ってもらえれば、他の企業の技術にも関心を持ってもらえるのではないかと考えている。また、例えばPCタンクは上水道だけではなく下水道や排水処理にも使えるので、関心を持ってもらえれば同じ技術の活用・売り込みを横方向にも展開することができる。
  • プラントエンジニアリング会社は、自前ではなく、下請け中小企業を使っていることが多い。全体をまとめる役割は必要であるが、中堅・中小企業だけでも一つのシステムを構築できる可能性があり、今後は、そうした事例を紹介してゆきたい。
  • スリランカでは日本製品・技術の価格は多少高いが、確実で長持ちすることが理解されつつある。スリランカの水道機器のある製品では英国のBSと日本のJISなど国内規格をつくることが進められている。規格を満たさないとよい製品と判断されない。この規格が本格化すれば英、日の競争となるが、価格での競争にも対応できる水準。上水道システムの全体を受注できなくとも、それぞれ固有の技術があるので、その技術を個々に売り込むことも一つの方法と考えている。

(4)グローバル人材育成・大学との連携

JICA中部が名古屋市上下水道局と実施している研修に名市大の学生さんに加わってもらう取組については、大学を刺激する良い事例である。

以上