「日本での経験を母国インドの発展へ -長期研修員へのインタビュー(インド編)-」

【写真】Rohit Bhardwajさん、Gaurav Pandeyさん、Harsh GuptaさんJICA・元長期研修員(イノベーティブ・アジア)
Rohit Bhardwajさん、Gaurav Pandeyさん、Harsh Guptaさん

■写真:左からハルシュさん、ロヒットさん、ガウラヴさん

今回は、2019年9月に豊橋技術科学大学を卒業したインドの元長期研修員、Rohit Bhardwaj(以下ロヒットさん)、 Gaurav Pandey (以下ガウラヴさん)、Harsh Gupta (以下ハルシュさん)の3名にお話しを伺います。
皆さんは、2017年9月にJICAが実施する「イノベーティブ・アジア(注)」の長期研修員として来日、豊橋技術科学大学の大学院生として学業に励みました。
(聞き手:JICA中部 研修業務課)

最初に日本への留学を決めた理由を教えてください。

ロヒットさん:日本の教育水準の高さや最先端の技術に興味を持ち、日本への留学を決めました。日本人ノーベル賞受賞者もとても多いですしね。日本の大学では、最先端の研究と設備の整った研究室など多くのリソースを学生たちに提供していることを知り、そのような恵まれた環境で研究をしたいと思いました。

ハルシュさん:幼い頃から日本の文化に興味がありました。アニメを通じて、日本人が時間をきちんと守り、礼儀正しいということを知り、そのような国で最先端の技術を学びたいと強く思ったので留学を決めました。

ガウラヴさん:私はこの「イノベーティブ・アジア」プログラムの目指すところに賛同しました。多くのアジア人留学生が日本の大学での研究やインターンシップの経験を活かして母国の発展につなげることは素晴らしいアイデアだと思いました。将来的にインドと日本の架け橋となって働くことができればと思い、留学を決めました。

皆さん豊橋技術科学大学大学院では永井先生の研究室で研究を行ったのですね。どんなことを学びましたか?

恩師の永井先生と

ロヒットさん:マイクロシステムを生物医学分野に応用する方法を学びました。 主にがん細胞に焦点を当て、試験管内で臓器や組織を発達させるための細胞の3Dプリンティングについて研究を行いました。

ガウラヴさん:私はBio-MEMS (Bio Micro Electro Mechanical Systems)という分野に取り組みました。特にピコリットルのバイオ溶液を並列的に吐出するディスペンサアレイの研究を行いました。

ハルシュさん:私は、レーザーパルスを使用したHeLa細胞(がん細胞)の細胞内送達に関する研究を行いました。最終的には細胞内にDNAを導入し、細胞の機能を制御するという研究です。

ロヒットさん:大学院での研究は私の視野を大きく広げました。研究倫理やプロフェッショナリズム、プレゼンテーションスキルやコミュニケーションスキルを習得したことの他に、規則を守ること、忍耐強さ、時間管理が目標達成の要であることが大きな学びでした。

ガウラヴさん:指導教員の永井先生が熱心に指導してくださったおかげで大変充実した研究生活となりました。先生は学術や研究面だけでなく、日常生活においてもサポートしてくださいました。研究室の皆さん、大学職員の皆さんなど多くの人に支えられた2年間でしたね。

ロヒットさん:そうですね。来日当初は言葉の壁を感じましたが、皆さんの協力とサポートによってすぐに壁を感じることはなくなりました。大学でのこれらの経験が後に就職に大きな影響を与えたと思っています。

印象的な出来事や思い出を教えてください。

かけがえのない仲間たちと

ロヒットさん:たくさんの友人と出会えたことです。特に同じ時期に来日したイノベーティブ・アジアの仲間とはとても仲が良いですね。共に旅行し、互いの誕生日を祝い、日本の四季を味わい、そして卒業することができました。

ハルシュさん:研究室の日々が思い出深いです。永井先生から学んだことは今でもしっかり私の胸に刻まれています。また、研究室の補佐員である奥田さんは私たちにとって母親のような存在で、食事の配慮をしてくださったり、休日に一緒に外出したりと、とても親切にしてくださいました。

イノベーティブアジアプログラムに参加した感想はいかがでしたか。

ガウラヴさん:国際的な視野が大きく広がり、また日本企業での就職に対して具体的にイメージできるようになりました。JICAのサポートがあったことも大きかったです。中部センターのスタッフはいつも私たちに寄り添い、サポートをし、時にはJICA中部でのイベントにも招待してくれました。多くのJICAスタッフのサポートがあってこその留学生活だったと思うので、JICA長期研修員の一員であったことをとても嬉しく思っています。

豊橋技術科学大学を卒業後、皆さん同じ会社に勤務しているのですね。

ガウラヴさん:現在(※インタビュー時2019年12月中旬)、株式会社デンソーで研修を行っており、12月末にインドに帰国してAutomotive Electronics Power Pvt. Ltd.(自動車用リチウムイオン電池モジュールを製造する東芝・デンソー・スズキによる合弁会社)で勤務します。

ロヒットさん:研修では実務の他に日本の労働文化を学びました。今後はハイブリッド車に関する技術を習得し、同僚と協働して日本と同じ品質の製品を製造管理します。

ハルシュさん:私は研修で製造ラインの管理を主に担当しました。他には会議の参加、ドキュメントの準備、プロセスフローの準備などの経験を積み、インドでの勤務に備えました。

ガウラヴさん:大学院生時に日本でインターンシップをすることができ、その経験を活かしてインドに拠点を置く日系企業に就職できたことは非常に幸運でした。

ロヒットさん:今後は必要な技術を更に身に付け、コミュニケーション能力を高めてどんな課題にも対処できる社会人になりたいです。そしてクリーンな環境作りに貢献するためのキャリアを積極的に積んでいきたいと思います。

最後に、日本の皆さんに一言お願いします。

ロヒットさん、ガウラヴさん、ハルシュさん:
日本への留学は私たちの人生に大きな影響を与えました。日本の皆さんは常に親切で、時間を守り、誠実で、勤勉で、その姿勢に感銘を受けました。2年以上過ごした日本は第2の故郷です。間もなくインドに帰国しますが、今度は自分の家族を連れて、また必ず日本に来たいと思います。本当にありがとうございました。