教師海外研修の経験から得たもの

【写真】千葉 友香(ちば ゆか)さん静岡県立中央特別支援学校 教諭 教職12年目 2017年度教師海外研修参加
千葉 友香(ちば ゆか)さん

静岡県立中央特別支援学校で教員をしている千葉友香さん。前任校に勤めていた2017年度に開発教育指導者研修(実践編)を受講し、教師海外研修でエチオピアに渡りました。海外研修を受けるきっかけとなった当時の思いや、学んだこと、今後に向けて感じていること等をお話しいただきます。

自己紹介をお願いします。

はじめまして!静岡県立中央特別支援学校で教員をしている千葉友香です。前任校に勤めていた2017年度に開発教育指導者研修(実践編)を受講し、教師海外研修でエチオピアに行かせていただきました。研修を通して得たことは、4年経った今でも自分の心に残っていて、当時のことを思い出すことで、パワーが蘇ってきます。現在、教職12年目を迎え、中堅研修の一環である社会体験研修という機会で JICA 静岡県デスク様で2日間の研修をさせていただきました。海外研修を受けるきっかけとなった当時の思いや、研修で学んだこと、今後に向けて感じていること等、改めて自分の言葉でお伝えできればと思います。

開発教育・国際理解教育に興味を持ったきっかけは何ですか?

学生時代は「卒業したら、海外へ行きたい、留学したい」と漠然と考えていました。外の世界に憧れを持っていて、異文化に興味があったからです。ただそんな思いも、ある経験によって少し変わっていきました。
教職単位を取得していた私は、中学校の教員免許状を取得するために、特別支援学校で2日間の実習を行い、そこで障害のある子どもたちに出会いました。たったの2日でしたが、私にとって、これまで知らなかった世界と出会った衝撃でした。色々な障害の子がいて、多様な学び方をしていました。一人一人に応じた教材や支援がなされていて、先生がゆっくりと児童生徒に話しかけている姿を見ました。「すごい!」と思ったことが特別支援教育に興味をもったきっかけでした。卒業後、特別支援学校で講師として働き、ますます子どもたちに魅了されていきました。「子どもを正しく理解したい。」「この子にとって本当に必要な支援とは何だろう?」と考えている日々でした。
教職8年目の年に、特別支援学校の教員をしている知人から「教師海外研修」についての情報を得たことがきっかけで、先述の研修へ応募をしました。その当時の自分は、正直、開発教育・国際理解教育の実践は、ほとんど経験がありませんでした。「開発途上国に行って、自分の知らない世界を見たい、感じたい!」という思い一心でした。無知にも関わらず特別支援教育の世界に飛び込んで行った時の感覚と似ていました。自分の視野を広げて、新しい世界が広がって行くことへの期待感がいっぱいでした。

開発教育指導者研修、教師海外研修を通して学んだことは何ですか?

エチオピアの子供たちと

エチオピアの主食「インジェラ」

ファシリテーターや参加者とのグループワークを通して、自分の意見を伝えること、相手の意見を聴くこと、自分とは異なる考え方でもその背景や理由を知ること、対話を通して自分の考えが深まっていくことを実感しました。日々の授業づくりで目指していた「主体的・対話的で深い学び」を体感することができたように思います。1年間のこの研修プログラムを通して、自分も社会の形成者の一人という自覚が強くなりました。まずは知り、気付き、自分事として考え、どのように行動できるのかを考える思考のサイクルを心掛けています。
 海外研修では、大変貴重な経験をすることができました。学びの柱となる「肯定的にエチオピアと出会うこと」「日本とエチオピアの繋がりや同一性を理解すること」「共通の課題について共に考え、共に超えるということ」
を研修仲間や現地の海外協力隊の隊員と考え続けました。さらには、町の風景や独特の匂い、生活をする現地の人々、建設中のビル、交通状況、路上にいる家畜等々…。現地に来たからこそ得られる情報がたくさんあり、体感することができました。全ての出会いが自分の学びとなりました。発酵したインジェラを「意外と美味しい!」と食べたこと、宿泊先のホテルで、窓ガラスが割れていて、スタッフに伝えたら「No problem.」と返され仲間と笑いながらレジャーシートをかけたこと等、「エチオピアを丸ごと受け入れたい、存分に味わいたい」という思いで過ごした12日間でした。そして何より、現地の子供たちとの出会いを通して、子供たちの目の輝きを失わせてはいけない、どのような環境に置かれている子も成長したい、学びたいと思っているのだということを感じました。改めて、未来を担って行く子供たちへの教育の重要性、学校の役割について考えることができました。

教師海外研修に同行した仲間たちとの繋がりについて教えてください。

大切な仲間たち

ワークショップ「日本の子どもに伝えたいこと」

愛知、岐阜、三重、静岡とそれぞれの地域から、そして校種も小学校、中学校、高校、特別支援学校と様々でした。研修では、対等な立場で共に学ぶ仲間ということで、ニックネームで呼びあいました。普段のキャリアや立場は関係なく向き合い、そしてお互いを尊敬し合えた仲間だと思います。現地では、教育関係の青年海外協力隊の隊員も含めて、「日本の子どもたちに伝えたいこと」というワークショップを行いました。自分もそうですが、メンバーのそれぞれが、目の前の児童生徒たちに向き合って模索を続けているのではないかと思います。
研修を終えた後も、連絡を取り合ったり、結婚式へサプライズで乱入したりする仲です。時々、「どうしているかな。」と思いを馳せています。これからもお互いをサポートしあう関係でありたいと思っています。

実践していること、また今後の展望について教えてください。

IZUこどもdeマルシェ

研修で取り組んだ参加型プログラムづくりでは、学習者自身が「知る→気づく→考える→行動する」という学習者の行動変容を支えることの重要性や、教えるのではなく「引き出す」こと、学習者が主体である、ファシリテーターとしてのあり方等を学びました。研修で学び得た手法は、特別支援教育の授業づくりや教員向けの校内研修推進にとても生かされることを感じています。現在の勤務校では、昨年度、高等部の生活グループ(知的障害教育代替の教育課程で学ぶ学習集団)で、「日本と世界のつながり」という実践を行いました。教室内にある物や自分の持ち物を見て「Made in◯◯」「◯◯製」というタグを探したり、スーパーの広告から輸入品を見つけたりする活動をしました。普段は特に気にも留めず、生活をしている生徒たちから「こんなに外国からの物が多くあってびっくりした。」という感想が聞かれました。
地域活動としては、静岡県東部で「IZUこどもdeマルシェ」というイベントに携わっています。このイベントの主旨は「障害のある・なしに関わらず、子どもたちのやってみたいという思いを実現させること」です。実行委員は、医療、療育、福祉、教育の現場で障害のある子どもに関わっている様々な職種のメンバーです。この経験を通して、様々な人々との繋がりの偉大さを実感しています。

私にとって、開発教育・国際理解教育を学ぶこと、特別支援教育を学ぶことは、互いに影響しあい、より学びが深まって行くように感じています。特別支援学校の教員として専門性を高めると共に、広い視野を持てるよう、今後も人との繋がりを大切にして、学び続けていきたいと思います。