• ホーム
  • JICA中部
  • トピックス
  • 2020年度
  • 【実施報告】日本と途上国をつなぐ新たな研修のカタチ-課題別研修「先進国市場を対象にした輸出振興/マーケティング戦略(D)」遠隔研修を終えて-

【実施報告】日本と途上国をつなぐ新たな研修のカタチ-課題別研修「先進国市場を対象にした輸出振興/マーケティング戦略(D)」遠隔研修を終えて-

2021年1月20日

中部初!課題別研修の遠隔実施

研修最終日、ほっとした表情が見られました

JICA中部所管課題別研修としては初めて、「先進国市場を対象にした輸出振興/マーケティング戦略(D)」をオンライン実施しました。2020年11月26日から12月9日まで、一日3時間のライブ講義・演習を10日行いました。この研修コースは、従来、約4週間の来日研修により実施してきたものです。しかし、今年度は新型コロナウィルス感染症の世界的流行を受け来日研修が見合わせとなったため、研修の講義部分を中心に遠隔実施し、来日が可能になった時点で現場視察を中心とした研修を行う計画に変更しました。全体の研修を通して、途上国の地場産業を活かした輸出向け商品のブランド化やマーケティング戦略を学ぶことを目的としています。

今回の遠隔研修には、インドネシア、マレーシア、ラオス、東ティモール、ミャンマー、バングラデシュ、サモアから、輸出振興に関わる行政官11名にご参加いただきました。日本側では、有限会社人の森に研修の企画・運営を担っていただき、コースリーダー兼講師である同社取締役の野田さえ子氏が研修員の学びを導きました。

遠隔研修の工夫-研修成果向上のために-

Google Classroom上でのコミュニケーション

遠隔研修では何よりもネット環境の確保が重要です。特に相手国が途上国の場合、多くの国ではネット環境が整っている場所や地域が非常に限られています。そのため、各国のJICA事務所を通じて研修員の受講環境を確認し、職場や自宅での受講が難しい場合にはホテルやJICA事務所の会議室など比較的ネット環境が整った場所を提供しました。時折、研修員側のネットワークが不安定になることもありましたが、おおむね問題なくZoomによるライブ講義を実施することができました。

遠隔研修ではリアルタイムでのコミュニケーションは講義の接続時間内に限られるため、研修効果を最大限に引き出すために様々な工夫をしました。その一つとして、オンライン学習システムGoogle Classroomを活用し、講義の録画映像の配信、講義資料や補足情報の提供、課題の受け渡し、コメントや質疑のやり取りを行いました。これにより、講師・研修員・JICA間で効果的にコミュニケーションを取ることができ、知識の共有、学びの促進という点では来日研修に劣らない手ごたえを感じました。

遠隔研修を通じたKnowledge Co-Creation(知識共創)

JICA研修事業の英語名は、2015年にTrainingからKnowledge Co-Creation Program (KCCP) に変更されました。これには、研修員同士、また研修員と日本側関係者との議論・対話を通じて相互に学び合い、共に発展する双方向の関係を築いていきたいという思いが込められています。その点、研修員が自国から参加する遠隔研修では、現地の情報を即時に受け取ることができ、また、自国の状況に照らし合わせて研修員が課題に取り組めることがメリットになります。例えば、今回の研修員から日本への輸出の可能性を秘めた産品の現地生産者情報が提供されましたが、こうした情報に関心を持つ日本の企業につなぐことでビジネス関係を生み出せるかもしれません。また、別の研修員は自国の宗教理解や製品特徴の強みを生かした産品の輸出を検討していますが、日本の事情や関係者について情報を提供することで日本市場へのアクセスの可能性が広がります。

これまで多くの来日研修を担当してきた研修コースリーダーの野田さえ子氏(有限会社人の森)からも、「日本側にも有益な情報を得ることができ、日本国内の在留外国人と連携することの重要性にも気づかされ、本当に知識共創(knowledge co-creation)につながる研修だった」と感想をいただきました。

遠隔研修への参加を通し、研修員は研修テーマや日本への理解を深め、来日研修への期待がさらに高まりました。来日が可能になるその時を心待ちにし、今後も相互の学び合いを続けていきたいと思います。