住民を巻き込む多文化共生-国内と海外の事例よりー 第1回オンラインセミナーを開催しました!

2021年10月28日

保健・医療と教育分野の国内・海外の事例を紹介いただきました。

【画像】 多文化共生を考える上で、「当事者」を巻き込むことはとても重要です。その当事者は地域の住民、子ども、保護者、行政等、抱える課題によって様々です。
 第1回目のセミナー前半では、保健・医療と教育分野から、国内と海外の事例をそれぞれ紹介いただき、「当事者」である地域の住民や団体、関係者をどのように巻き込んだのか具体的に紹介いただきました。

●多文化共生における保健・医療分野の取り組み(中部大学 大谷かがり氏)

 長年、愛知県豊田市を拠点に活動されている中部大学大谷氏より、外国籍住民の健康を支える取り組みについて、その経緯や具体的な活動をご紹介いただきました。地域の団体(トルシーダ)に協力頂きながら実施している健康相談会で、実際にあった相談内容や栄養の講義などのご紹介がありました。また、問診では、医療のことに留まらず、暮らし(子育て)についても相談もあったそうです。子どもたちの健康を支えるために、多職種が連携し話し合う必要性を最後に提起いただきました。

●JICAにおける保健・医療分野の取り組み「高齢者のための地域包括ケアサービス開発プロジェクト(タイ)」(JICA人間開発部保健第四チーム 佐藤里衣氏)

 JICAの佐藤氏より、JICAがタイで実施している保健・医療分野の事業について紹介しました。この事業は、急速に高齢化が進む日本で生まれた「地域包括ケア」の考え方を、タイが抱える高齢者福祉問題に取り入れたものです。タイの政策者(行政)、現場実務者(看護師等の専門職)、当事者や裨益者(本人や家族)を、どのように巻き込み、事業を実施したのか説明いただきました。

●多文化共生における子どもの教育の取り組み(特定非営利活動法人トルシーダ 伊東浄江氏)

特定非営利活動法人トルシーダは、子どもたちの日本語支援を中心に活動している団体です。不就学の外国籍の子どもの居場所づくりについて、活動拠点である愛知県豊田市の保見団地で実施している取り組みを紹介いただきました。日本語支援だけでなく、日本で外国籍の方が暮らしていくため、地域を巻き込んだプロジェクトについてもご紹介いただきました。その中で見えてきた、当事者意識のなさや立場の違いよる情報と思いの共有ができない等、課題についてもお話いただきました。

●JICAにおける教育の取り組み「みんなの学校」プロジェクト(JICA国際協力専門員 國枝信宏氏)

JICA国際協力専門員の國枝氏より、JICAがアフリカ8か国の小中学校で取り組んでいる学習環境改善について紹介いただきました。このプロジェクトでは、それぞれの国、その地域の状況とニーズに応じて「地域ぐるみ」の教育改善モデルの構築と普及を行い、学校運営委員会の強化を行っています。また講義では、地域ぐるみで活発な活動を継続する鍵として「住民集会」が取り上げられました。住民集会を通じてみんなで計画し承認するプロセスを年間通して行い、情報共有と討議を重ねること、地域ぐるみで子供の健やかな成長を願って目的志向をもって行動する大切さをお話頂きました。

保健・医療と教育分野の事例から多文化共生を考えました。

 セミナー後半は、国内と海外の事例を踏まえて、その共通点やアプローチ方法、学べる点についてパネルディスカションを行いました。

保健・医療への取り組みでは、単体ではなく、教育や栄養、地域づくりや暮らしそのものが関わっており、多職種そして多世代に対してアプローチが必要な点は、国内と海外問わず同様という意見がでました。「みんなの学校プロジェクト」で行政や保護者など、まったく考え方や方向性が違う方同士の場を共有し、コーディネートするにはどうすれば良いか質問がでたところ、「お互いが理解しあうきっかけづくりが重要、プロジェクトのキャンペーン等を通じた行政への働きかけでは」と、登壇者の経験に基づいた様々なヒントをお伺いできました。

また、国内と海外事例の共通項を探す中で、JICAの國枝氏からは、「親が子を思う気持ちはどこにいても変わらない。何とかそこに活動の軸を向け、当事者意識をもたせ活動を展開できないか」というご意見に、他の登壇者も大きく頷かれていました。中部大学の大谷氏も、「子どもは宝。今、日本にいる外国ルーツの子どもは、日本で大人になり、日本の将来を支えていく宝だと思っている。そういった人たちをどうやって支えていくのかを考えたい。」とおっしゃっていました。その国の未来を担う子どもたちにできること、誰もが尊重される共生社会をつくるために、私たち一人ひとり当事者として向き合い行動を起こす重要性、それを改めて気づく時間となったように思います。

参加者からは、住民を巻き込む多文化共生を考えていく上で、地域の住民や支援者側も当事者意識をもつことの重要性や、今回のセミナーのように全く違うと思われる分野から共通点を探し出すことの意外性等の感想を頂きました。
 
当事者を巻き込み自分ごととして考えること、そのキーワードとして出てきたのは、「コミュニティ」、「ファシリテート」、「場づくり」でした。第2回、第3回ではその方法を実践で学びます。

今後もJICA中部は、随時セミナーを開催していきますので、是非ご参加ください!