「教えて!JICA中部」第三 回 長期研修 食料安全保障のための農学ネットワーク協力「Agri-Net」 プログラム

2022年11月4日

「教えて!JICA中部」第三回

Halo semuanya! (インドネシア語:皆さん、こんにちは!)

中部センターでインターン中のレオナルドです。第一回と第二回記事を読んでJICA、またJICA中部についての理解を深めていただけたなら嬉しいです。今回、「教えて!JICA中部」第三回記事では長期研修 Agri-Netプログラムについて紹介します。Agri-Netは第一回記事でご報告したアフリカ稲作研修と関係しているため、テーマとして選びました。Agri-Netプログラムは、開発途上国の農業高度人材育成を目的とした奨学金プログラムです。今回、プログラムに参加したインドネシアからの留学生にインタビューをしました。是非最後まで読んでください!その前に、Agri-Netプログラム背景について紹介します。

Agri-Netプログラムの背景

JICAは対象の開発途上国の農業農村開発事業を効果的に推進するために、農林水産分野人材育成計画2020-2030を策定し、農業や水産等に係る人材育成と共に、長期研修員受け入れ事業を実施しています。この人材育成計画を通じて、JICAは開発途上国のSDGsゴール2「飢餓をゼロに」の達成に加え、二国間の関係強化やネットワーク構築によって、将来的に共同ビジネスや、共同研究に繋げることを目的にしています。この計画の目標を達成するために、様々な研修を実施しています。その中に、第一回記事で説明したCARDの稲作研修といった短期研修に加え、JICAも農業食料安全保障のための農学ネットワーク「Agri-Net」プログラムである長期研修の実施を行っています。

Agri-Netプログラムとは、世界食料安全保障の課題解決のための農学系人材のネットワークを構築し、将来的に国のリーダーとなる行政官・研究者等を日本の農学系大学に留学させるプログラムです。このプログラムは、受入大学と研修員とのマッチングの他、返還不要の奨学金を提供し、日本の農業・農村開発経験の講義、そしてプログラム関係者と留学生のネットワークを強化することが狙いです。

Agri-Netプログラムの研修員(留学生)にインタビュー!

Tri Wahyu Cahyonoさん

Q.自己紹介してください。
私は、インドネシア出身のTri Wahyu Cahyono(トリ・ワーヒュ・チャーヨノ)です。インドネシアの農産省の職員であり、現在、名古屋大学生命農学研修課で食料経済学を学んでいます。

Q.研究テーマを教えてください。 
私の研究テーマは、インドネシアにおける首都移転政策の影響によるコメの食料安全保障の分析です。首都移転の計画があるため、首都移転先であるカリマンタン島の土地を農業から住宅や政府機関の建物に切り替える必要があります。しかし、それによりコメ生産と需要変動が影響を受けるため、この研究はその状況に対応するための分析を行い、政策提言を行います。

Q.Agri-Netプログラムに応募したきっかけを教えてください。
農業省や他の政府機関を対象にしたJICAの公募を目にしたことがきっかけです。様々な研修がJICAから提供されていましたが、私が知らせを受け取ったのは、このAgri-Netプログラムでした。Agri-Netプログラムは食料安全保障のテーマで行われているため、私は名古屋大学にある食料経済の研究室を選びました。

農業省では様々な奨学金が提供されていますが、基本的に上司の判断によって左右されます。JICAの公募案件が出た時、上司から応募する許可を頂きましたので、Agri-Netのプログラムに応募しました。

Q.TriさんがAgri-Netプログラムを開始して2年が経ちました。Agri-Netの良いところや学んだことを教えてください。
Agri-Netプログラムの利点は、奨学金に加え、ネットワーク作りと、日本の開発経験を現場の人から学べることです。Agri-Netでは、Agri-Net奨学生を対象としたコースが提供され、教授だけではなく、現場で実践している関係者のリアルな経験、最先端な知識もコースを通じて教わり、日本の農業現場を知ることができました。

このプログラムに参加することで、私は日本の農業がなぜここまで発展したのか、インドネシアの農業が日本に追いつかない理由について知識面や技術面でも理解できるようになりました。具体的に、インドネシアは日本に比べて一つの開発ステップである工業化が欠けています。日本では、新しい技術が誕生した際、工業の熟度が高いため、新しい技術の導入・大量生産が可能ですが、インドネシアの場合、設計やプロトタイプ開発ができたとしても、その技術を大量生産可能にする工業が存在していないため、インドネシアがその技術を農業に活かしきれませんでした。また、それに加え、インフラ設備、人材、経済状況、様々なことが重なりあって農業と絡んでいて、農業しか考えていても解決にはつながらないことを実感しました。もしこのプログラムに入らなかったら、このようなことを知ることができませんでした。

Q.帰国後の予定は?
インドネシアに帰国したら、日本で学んだ応用できる知識や方法を導入したいです。特に、結果よりプロセスを優先すべき考え方を広めたいと思います。インドネシアは、日本に比べて、「コメを食べていないなら食べるとは言えない」という言葉があるぐらい、コメの消費量がとても高いです。インドネシアの一人当たりのコメ消費量は日本の二倍とされていて、健康にも生産にも害になる対処すべき問題です。日本で学んだことを活かして、コメや他の食べ物を考える時、生産だけではなく、物流や、消費とのバランスも大事にしなければならないということを広めたいと思います。

個人感想

「教えて!JICA中部」第三回の記事が終了しました!いかがでしたか?
今回は、私の母国でもあるインドネシアの行政官へのインタビューで、私にとって様々な発見がありました。

今回は、インドネシアと日本の農業の現状と違いを学ぶことで、プログラムの重要性を実感しました。奨学金だけではなく、日本開発経験の講義や留学生と専門家とのネットワークを提供することで、大学で学べない現場情報、共同ビジネス、共同研究や、国々の情報交換により、新しい機会に繋げることができることから、日本にとっても利点のあるプログラムだと考えます。Triさんの話を聞くことで、Agri-Netの目的である母国で貢献できる高度人材育成が確実に行われていることが分かりました。開発経験の講義や、ネットワークの目的も非常に評価されていることから、このプログラムの有効性が伝わってきました。それに加え、知日派・親日派の増加にもつながるため、プログラム修了後も長期的な関係を保つことが期待されます。Triさんが残り1年間の学生生活を有意義に過ごし、博士課程を無事修了できるよう願って、今回の記事を終了します!

次回、「教えて!JICA中部」第四回(最終回)記事では、現在実施中の上下水道の課題別研修をご紹介します!どのような研修なのか?ぜひ楽しみにしてください!


報告者
JICA中部 研修業務課 インターン プラタマ レオナルド