デジタルフォーラム「外国につながる子どもたちの未来に向けた連携について」を開催しました!

2023年3月30日

第1部 基調講演

【画像】第1部では、静岡文化芸術大学政策部国際文化学科准教授 佐伯 康考氏から「外国につながる子どもたちの未来に向けた教育、支援、連携について」と題し、講演いただきました。言語面や在留資格による進学・就職のハードル、外国につながる児童・生徒に関わる教員の育成について等、多面的に外国につながる子どもたちに関する日本の教育現場の現状と課題についてお話をいただきました。課題解決のためには、教育現場におけるICTの活用など、新しいことに取り組んでいくことの重要性や様々なアクターの連携が不可欠であること、そしてそういった連携を実現していく場として、プラットフォームの必要性について言及されました。
また、可児市国際交流協会事務局長 各務眞弓氏から可児市における取り組みを紹介いただくとともに、中学生で来日し可児市で育った静岡文化芸術大学3年生のパドゥワ・キンタロウ氏よりご自身のこれまでの経験をお話いただきました。

第2部 パネルディスカッション

第2部のパネルディスカションでは、教育現場で活躍されている7名のパネリストを迎え、それぞれの取り組みの共有を通じて、(1)多言語・多文化化、(2)進学・就職支援を論点に外国につながる子どもたちの教育、支援、連携のあり方を考えました。

コーディネーター:佐伯 康考氏(静岡文化芸術大学政策部国際文化学科准教授)

パネリスト:(五十音順)
朝倉 匡哉氏(越前市教育委員会事務局 教育振興課指導主事)
各務 眞弓氏(可児市国際交流協会 事務局長)
加藤 洋子氏(岩倉市立岩倉中学校 岩倉市日本語・ポルトガル語適応指導教室長)
粂内 直美氏(三重県立飯野高等学校 英語コミュニケーション科主任)
倉橋 徒夢氏(ブラジル人学校EAS担当理事)
都筑 太氏 (知立市立知立東小学校校長)
パドゥワ・キンタロウ氏(静岡文化芸術大学学生)

■越前市教育委員会事務局教育振興課 指導主事 朝倉 匡哉氏からは、越前市における現状と支援策、課題と対策についてお話をいただきました。近年の傾向として、学習言語が確立されていない子供たちが増えいていることを挙げ、今後の対策の必要性を言及されました。

■可児市国際交流協会 事務局長 各務 眞弓氏からは、自己肯定感を高める仕組みとして、言語を限定せず、自分の考えを表現することの重要性や活躍できる場の提供について事例を用いて紹介いただきました。外国につながる方々が今後も増加することが予想される中、学校や企業など受け入れ側も変わっていく必要があると言及されました。

■岩倉市立岩倉中学校 岩倉市日本語・ポルトガル語適応指導教室長 加藤 洋子氏からは、当市の現状と支援体制についてご説明いただきました。中学校の課題として、小学校から中学校へ進学した時にギャップを感じる子どもたちが少なくなく、生徒の自己肯定感が下がっていく様子を目の当たりにしている中で、在籍学級で活躍してもらうために、日本語教室でのサポートのあり方を常に課題に感じておられると思いをお話されました。

■三重県立飯野高等学校英語コミュニケーション学科 主任 粂内 直美氏からは、学校の体制や進路の実現に向けた取り組みや校外との連携についてご紹介いただきました。校内では「外国人」という言葉をあえて使わず、日本人、外国人という区別を払拭したいというお言葉が印象的でした。また、校外との連携を増やし、生徒が学校以外でも活躍できる場づくりを進めていきたいと今後の展望についてもお話いただきました。

■ブラジル人学校EAS担当理事 倉橋 徒夢氏からは、ブラジル学校の様子や活動を写真で紹介していただきました。進学や就職支援をしている中で感じる課題として、進学・就職に対する考え方の違いからくる日本社会からのプレッシャーを感じるとお話されました。外国人学校としては生徒を日本社会に溶け込ませたいと考えており、また日本語教育も進めていきたいと考えているが資金面で難しいとの思いも聞かれました。

■知立市立知立東小学校校長 都筑 太氏からは、外国籍の児童が7割である同校の現状と国語と算数で実施している習熟度別グループ指導の事例紹介をいただき、多国籍化による情報伝達、児童のキャリアプランや教員の業務量・育成についての課題をお話いただきました。県や市のサポートを得ながら取り組んでいるものの、やはり言語の壁が厚いといったお言葉が印象的でした。

■静岡文化芸術大学生パドゥワ・キンタロウ氏は、当事者として自己肯定感に対する思いや進学にあたっての経験をお話しいただきました。進路選択をしていく中で課題に感じたこととして、情報がなく選択肢が限られていたり、ロールモデルがいなかったというご自身の経験から、現在は可児市国際交流協会が実施するキャリア教育のイベントに経験者として参加されたり、自ら情報発信をしていきたいとお話されました。
 
 パネルディスカッションを通じて、いわゆるダブルリミテッドに関する課題や、文化的背景による教育に対する考え方の課題、自己肯定感に関わる課題など学校だけでは解決できない問題が多く、またニーズが多様であることから、改めて連携すること、連携の幅を広げていくことの重要性や今後の可能性について考える機会となりました。

なお、このフォーラムの録画を公開しておりますので、ぜひ、ご覧ください。

今後もJICA中部では、このような多文化共生に関するセミナーやシンポジウムを開催していきますので、是非ご参加ください!