2016年6月26日
【内容】
教員や学生、広く国際教育に関心のある方々を対象に毎年行っている本研修会、今年も第1回を実施しました。今回の講師は長年教員をされ、関西でJICA教師海外研修にも参加された経験のある山中信幸氏。ご自身が作成した教材をたくさん披露してくださいました。
最初に配られたのは、輪ゴムやチョコレート、料理に使用する丁子や1円玉など身の回りにあるものばかり。これらが世界とどうつながっているかを考えるところからスタートしました。私たちが普段何気なく使っている物の原材料の多くが開発途上国で生産されていたり、それによって現地の人々の生活や自然環境が変化したりしている現状を知っていきました。
後半では、私たちが使うスマートフォンや携帯電話、パソコンやテレビといった電子機器に使われるレアメタルが、アフリカの国の紛争を長期化させる原因となっているという映像を視聴し、自分たちが無意識のうちに、間接的に他国の平和を脅かしている可能性を知りました。その現状を踏まえ、戦争がなくならない理由が書かれた13のカードをグループごとに読み、最も大きな理由と思われるカードから順位をつけていきました。
地球規模の課題や戦争・紛争など、遠い場所で起こる大きなテーマの問題を自分事として捉えるのはとても難しいことです。正解などありません。それでも私たちができること、しなければいけないことは、今回のように「考えることを止めない」ということなのかもしれません。
午後は、昨年度教師海外研修でラオスを訪問した2名の先生方が作成したワークショップです。
岡山県共生高等学校の尾山誉教諭は、現地で撮影したラオスの写真を見せながら、ラオスにある課題を紹介していきました。母子医療や学校教育について、経済状況と雇用の問題についてなどを解説し、その情報をもとに、参加者は「より良いラオスにするためにはどの問題から優先的に取り組むべきか」を考え、優先順位をつけていきました。グループにより何を1位にもってくるかは様々でしたが、「まずは国民の命と健康が第一」と、医療問題やラオスに残る不発弾の問題を上位にあげるグループが目立ちました。
昨年、小学1年生を担当した荒木友子教諭の行ったワークショップは、ラオスという遠い国の話から自分の家族、生活に視点を戻していくユニークな内容でした。「ラオスの子どもたちも、日本の子と同じように『大切なものは家族』と言っているよ。では皆さんも、大切な『家族』に手紙を書いてみよう」。参加者は普段言いにくい感謝の言葉を便箋にしたため、身近な人への想いを再認識したようです。
最後に、ラオス研修に参加した方々が体験したラオスの伝統儀式「バーシ」を再現してくれました。バーシは進学や就職、結婚や旅立ちなど、新しい門出に立つ人へ安全と成功を祈る儀式。参加者同士でそれを真似し、メッセージをつぶやきながら相手の腕に糸を結びました。この出会いがこれからも続きますように、みなさんの仕事や活動がうまく行きますように、参加者全員とご家族が健康で笑って過ごせますように…。
開発途上国の現状を直視し、考えることは、ともすると深刻で胸が痛いことも少なくありません。しかし、最後の「バーシ」を体験し、「心がほっこりした」「あたたかい気持ちで帰ることができる」とコメントして下さった参加者がたくさんいました。
当日は暑い1日でしたが、岡山、島根など県外からも多くの方にご参加いただき、とても充実した研修会となりました。第2回は2017年1月28日(土)に実施します。どうぞご期待ください!