2018年1月27日
【当日の内容】
教員や学生、広く国際教育に関心のある方を対象に行っている本研修会の第2回は、その年にJICA中国が行う教師海外研修に参加した先生方から発表をしてもらっています。まずは今年度の訪問先であるスリランカ研修の概要を、岡山市立山南中学校の江國友哉先生、修道中学・高等学校の藤島真介先生が報告しました。スリランカ北部を訪ねたときに実感した内戦の歴史、異なる民族が共生するということ、また青年海外協力隊の活動から見えてきた日本の国際貢献やスリランカの課題と現状、そして現地で学んだ事柄から自身の生徒に何を伝えたいと考えたのか。短い時間の中でスリランカ研修の目的とねらいを的確に話していただきました。
スリランカを訪問した一人である、鳥取市立瑞穂小学校の小林千華先生には、自校の小学1年生を対象に行った授業を再現。会場全体に貼られた11の問題を、参加者が解答用紙を手にクイズラリー形式でめぐり、答えを考えていきます。国の基礎知識だけでなく、小林先生自身が現地で出会った学生から聞いた学校の話など、海外での体験を生かしたオリジナリティあふれる問題に、参加者は楽しみながらも頭を悩ませていました。
模擬授業の後に、小林先生から授業実践の感想と課題を聞きました。クイズの内容は担当する児童それぞれが関心を持っている分野(車や機械、食べ物、動物など)をなるべく網羅できるように考えたとのこと。瑞穂小学校は全校で45名、小規模校だからこそできる教材作成の方法かもしれません。また、クイズ作成時には「海外研修に参加した全員が各自撮影した写真や動画を全員で共有したことで、自身が見落としていた風景の画像も見つけることができた」と話します。研修参加者全員がそれぞれ異なる視点や価値観を持つからこそ、多様な情報が収集でき、それを生かした授業実践ができる、教師海外研修のメリットが生かされた、興味深い授業でした。
岡山県玉野市立日比中学校で英語を担当する井本亜希先生は、全5時間の授業を行い、その最後の授業について発表してくれました。スリランカ研修のバス移動中、雨が降る中で花売りの少年に出会ったエピソードをもとに、開発途上国にとってどんな支援が有効か、中学生である自分自身に何ができるのか、を生徒に考えさせる授業を実践しました。発表を聞いた参加者からは「スリランカ『を』教えるのではなく、スリランカ『で』教える実践になっていて素晴らしかった」「世界の問題から自分のできることを考える、『Think Globally, Act Locally』の視点にとても共感できた」といった感想が上がっていました。
プログラムの最後は、荒川共生さんによるワークショップ「ウーリー・シンキング」です。環境、難民問題、教育、貧困、フードマイレージ、国際協力、持続可能な社会、戦争、多様性の尊重など、様々なテーマがお互いどのように影響し合っているのか、参加者同士で意見を交換しながらあらゆる問題のつながりを考えるワークショップです。関連性を感じたテーマ同士が毛糸でつながっていくことで、ばらばらに存在しているかに思えた様々なテーマが、実は網の目のように複雑に絡み合っている現実を実感することができます。プログラムの前半で教師海外研修参加者から発表された、スリランカで感じた課題や問題も、地球規模の問題も、そして私たちの日常も、すべてがつながって切っても切れない因果関係にあることを考えさせられた時間でした。
ふり返りの時間には、第1回の本研修会で様々なワークショップを実施していただいた県立広島大学の富田和広教授の進行で、参加者は研修の感想を5-7-5の川柳で表現しました。
「遠くても 先生が行けば 近い国」
「かんがえよ! 自分に何が できるかを」
「モヤモヤを 脇にたずさえ 明日も行く」
「教室が 世界の縮図 忘れずに」
「他人ごと 見方を変えて 自分ごと」
高校生から海外ボランティア経験者、ベテランの教員の方まで、幅広い方々に参加いただき、時間が足りないほど充実した研修会となりました。
JICA中国では、これからも世界を身近に考える研修会を実施していきます。どうぞご期待ください!