【実施報告】2019年度 第2回 国際教育研修会

2020年2月27日

  • 日時:2020年1月25日(土)10:30から16:45
  • 会場:エソール広島(公益財団法人広島県男女共同参画財団)
  • 参加者:41名

【当日の内容】

  • 講義、ゲーム、ワークショップ「ゲームを通して考える他者理解」(鳥取大学 教育支援・国際交流推進機構 教員養成センター 准教授 大谷 直史 氏)
  • 2019年度JICA中国・四国 教師海外研修 報告(2019年度JICA教師海外研修参加者)
  • 授業実践報告-教師海外研修の知見を活かした「平和学習」:中川 尚子 教諭(岡山市立操南中学校・2019年度JICA教師海外研修参加)
  • 教師海外研修の学びを教室へ:
    模擬授業1):坪池 由美子 教諭(熊野町立熊野第一小学校・2019年度教師海外研修参加)
    模擬授業2):中村 秀司 教諭(鳥取県立鳥取西高等学校・2019年度教師海外研修参加)
  • ふり返り(大谷 直史 氏)

「他者理解」とはなにか、「他者」とは誰か?

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大谷直史先生

教員や学生、広く国際教育に関心のある方を対象に行っている国際教育研修会の第2回を開催しました。

鳥取大学准教授の大谷直史先生は長年、鳥取市内で子どもの居場所づくりを展開しています。不登校や他者とコミュニケーションを図ることが難しい子どもが集い、学生などがボランティアをしています。大谷先生はご自身の経験をもとに、なぜ家庭以外の居場所が必要なのか、コミュニケーションとはなんなのか、などを解説されました。そして、ゲームがコミュニケーションツールとしてどのように生かされるのか、説明して下さったのちに、大谷先生が開発・作成されたカードゲームを参加者全員で体験しました。そのうちのひとつである『デイエバー』というゲームは、特定の単語から各自がイメージする色を選び、グループ内で比較、全員イメージした色が同じであることを目指すものです。このゲームを通じて参加者は、「同じ」であると嬉しいがつまらない、「違う」ときには悲しいけれど楽しい、という相反する感情に気づかされました。これは、外国の文化や習慣に触れたときにも通じることかもしれません。そしてここから大谷先生は「異質なものこそ楽しいのであれば『理解しよう、分かろう』とする必要はなく、ただ他者と共に居る、というだけで良いのではないだろうか」というコメントをされました。私たちは常に「相手」や「異文化」を「理解」すべきもの、ととらえて努力します。しかし、異なるもの、人はそこに在る、居るだけでいい、という発想は、参加者にとっても斬新で「とても面白く、新しい考え方を知るきっかけになった」、「『他者理解』の説明は、まさに国際教育の根本的なものであると感じた」と感嘆の声が上がっていました。

ラオスでの学びを日本の子どもたちへ-教師海外研修参加者の報告-

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中川尚子先生の発表

午後は、JICA教師海外研修に参加された中国地方の先生による授業実践報告です。

岡山市立操南中学校の中川尚子先生は、訪問国であるラオスで出会った青年海外協力隊員との交流を、2年生が行う平和学習に取り入れました。同校の生徒が調べた原爆と広島についての情報を、ラオスの大学生が見聞きし、学び、その感想をまた岡山の中学生が聞く。このやり取りを通じて、平和とはなにか、世界の平和のために自分自身に何ができるか、をそれぞれが考えていきました。そして、ラオスの学生が祈りを込めて折った千羽鶴が同校へ送られ、2年生の生徒はそれを広島訪問時に持参したそうです。原爆ドームを眼下に臨む会場で、日本とラオス両国の若者の平和への想いを共有できた時間でした。

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坪池由美子先生の「ラオスの手話講座」

広島県熊野町立熊野第一小学校の坪池由美子先生は、4年生の全児童に行った授業を再現してくれました。ラオスに関するクイズを解き、現地から持ち帰った現物を実際に見て触り、現地の若者に人気の伝統的なスイーツ「ナムワーン(タピオカ入りココナッツミルク)」を実際に味わうことで、多様なラオスの良さを知ることができました。坪池先生は子どもたちに、ラオスを入り口として世界の課題に気づき、もっと知りたいと思う心情を養いたいと、この授業を実践されたそうです。参加者からは「体験すること、導入を楽しくポジティブなものにしたことが、きっと今後の子どもたちの学びにつながっていくと思う」、「教師が教え尽くさない授業の良さを実感できた」といった感想が上がりました。

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すごろく体験中の参加者

鳥取県立鳥取西高等学校の中村秀司先生は、放課後に希望者を募って行った「ラオスすごろく」を紹介してくれました。各グループにはすごろくのシートとタブレットが配られ、出た目の数字の写真と問いをタブレットの中から見つけ、参加者はその答えを考えていきました。その問いには明確な正解はなく、自分の意見を共有して、互いに考えを深めていくものです。中村先生は、この教材を使った自主セミナーを通じて、「私たちは『開発途上国が下で、先進国が上だ』のようなステレオタイプな視点を持っていないか」「途上国での開発は『先進国が支援してあげる』ものだととらえていないか」、生徒に問い直してほしかったと言います。そして、自分自身も渡航前はODA等を通じて「ラオスが日本から学んできた」と誤解をしていたが、日本がラオスから学ぶことがたくさんあると痛感した、と語りました。参加者は大人でも難しいすごろくの問いを議論しながら、中村先生のメッセージをしっかりと受け止められたようです。

第2回国際教育研修会も朝から夕方までの長いプログラムでしたが、興味深い発表と多様なワークショップが続き、あっという間の1日でした。

JICA中国では、学校や地域で実践につなげることのできる、楽しく興味深い研修会をこれからも実施していきます。どうぞご期待ください!