「スポーツの持つ力」

広島大学 教育学部第四類 健康スポーツ系コース 4年
長岡 駿

短期ボランティアのきっかけ

 私は大学2年の時に学生柔道連盟のプロジェクトでベトナムに行き、柔道の交流を行いました。以前から海外に行ってみたいという興味もあり非常に良い経験でした。これをきっかけに短期ボランティアに興味を持ち、春休みを利用して活動できるということで応募しました。また以前、柔道部の先輩が同じように短期ボランティアとして活動しており、色々と話を聞く中で自分も是非やってみたいと感じるようになりました。東京で任国事情など4日間の研修を行い、期間が1ヶ月と短いので事前に何を行うか考え、そのための準備をして臨みました。

ザンビアでの活動

柔dojoの生徒と

 活動は主にザンビア第2の都市であるキトウェというところで行いました。配属先の道場を含め、計3つのクラブで柔道の指導を行い、対象年齢は、下は小学生、上は50代の方まで幅広く指導しました。早朝はトレーニング、午前中は買い物、午後から夕方にかけて道場で指導という生活を1ヶ月近く送りました。多くの生徒は本格的に競技として行っているわけではなく、教育の一環として、趣味として行っている方がほとんどでした。対象年齢が低いクラブには、基本的な礼儀作法から指導を行い、寝技、立ち技、投げ技までを1ヶ月で練習し、普段の練習の軸を作るように指導しました。また中高生には本格的な立ち技まで指導し、実際に試合形式の練習もできるようになりました。彼らは興味をとても持ってくれていて、かつ身体能力が高いのでのみ込みも早くすぐにできるようになっていました。ザンビアのナショナルチームとも稽古を行い、ザンビア全体の柔道のレベルを感じることもできました。また電気がなく日没とともに練習を終えるという環境だった道場に蛍光灯を設置し、電気を通し、練習時間を長くとれるように整備も行いました。柔道の指導だけでなく、環境を整えるような活動も行いました。さらに道場や学校を訪問し、日本の紹介を行う授業なども行いました。

活動を通して

Lechwe International Schoolの生徒たちと

 まず英語で指導することの難しさを感じました。しかしそんな中で、一緒に柔道を行うことで通じ合えるという柔道、スポーツの力を改めて感じました。さらに配属先の方と「なぜ柔道を行うのか」という話をしました。配属先の方は、柔道や勉強を行い毎日忙しい生活を送ることで、ドラッグや犯罪を行う可能性が減るという話を聞かせていただきました。街のマーケットなどに行くと、貧困でお金を要求してくる子供、ドラッグでぐったりしている子供たちが多くいました。そういった子供たちがいることにも大きく心を動かされ、その子たちを救うための柔道という考え方を持つことができるようになりました。実際に配属先の道場に練習に来ている子供たちはほとんどが貧困層であり、両親がいない孤児であるという状況でした。しかしその子たちは犯罪やドラッグは一切行わず、毎日楽しそうに片道6キロを歩いて学校、練習に通っていました。子供達全員が充実した生活を送れるような環境にしてあげたい、日本の人たちにもその環境を知って欲しいと感じました。

今回の経験から

 自分にとって非常に良い経験になりました。柔道の指導だけではなく、貧困の問題などの日本では経験できないことを、身をもって体験することができました。柔道に関すること、日本に関することをたくさんザンビアの子供達に伝えることができたし、何より柔道を一緒に行い、成長していく姿を見ることができたのが一番の思い出です。将来的にザンビア全体、子供達を取り巻く環境がより良くなって欲しいと思います。また私自身、そういった子供達と日本の子供たちが柔道などのスポーツを通じて交流できる場面を作るような活動をしたいと考えています。どこまでできるかはわかりませんが今回の経験を生かしていきたいと思います。