HAKUNA RYUTA HAKUNA FURAHA

【写真】岡本龍太青年海外協力隊/タンザニア/コミュニティ開発
岡本龍太

協力隊に応募したきっかけ

 大学を卒業して民間企業に就職した。尊敬する上司や同僚に出会い、仕事にはそれなりに満足していた。社会人になってから始めたバックパック旅行。長期休暇を利用してインド、エジプト、ブラジル、マレーシアなど一人でまわった。日本では感じることのなかった『生』のエネルギーがそこにはあった。旅に行くにつれ、もっとこの感覚を味わいたい、海外で暮らしてみたいと思うようになった。充実した派遣前訓練、活動の内容、帰国後の進路に魅力を感じ、協力隊に応募。2018年3月にタンザニア派遣となった。派遣された村の名前はムパンダンギンド、人口約2,000人の小さな村。電気も水道もない。ここで2年間、住民の生活向上に携わった。

かまど普及で現地に溶け込む

【画像】 活動の中で特に改良かまどの普及に力を入れた。住民が使う3点かまどは熱効率が悪く、薪の消費量が多い。薪の消費量、調理時間や火傷のリスクを減らすメリットのある改良かまど。住民から住民へと広がり、2年間で70以上の家庭がかまどを作った。
 あるとき近所の5歳の女の子ケイシャが「うちにもかまどできたよ。見に行こ」と言って手を引いてきた。「自分も立派に村の職員の仕事をできているな」と胸が熱くなった。何十年、もしかしたら百年以上も繰り返してきたやり方を変えてくれた。それは自分という異質な存在でも十分に役に立てるという実感を与えてくれたのであった。

人生で大切にすべきものとは

【画像】 ある日の夜、ケイシャのおじいちゃんが病気で亡くなった。近所から大きな声が聞こえてやまなくなった。耳を澄まして聞いてみると「なんでいっちゃうの」「さみしいよ」と家族や近所の人たちの声。そして朝までおじいちゃんを安らかに送るための歌が続いたのだ。翌日も300人を超える人が葬式に集まり、涙を流し、最後のお別れをした。自分は人の死にここまで涙できるのだろうか、自分の死でこんなにも悲しんでくれる人はいるのだろうか。自分は人との付き合いを疎かにし、表面的なものになっているのではと心が痛くなった気がした。電気も水道もない村だったが、人と人との繋がりが僕の心を満たしてくれた。

日本に帰って思うこと

 2020年3月に任期を終え帰国したが、帰国後は新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続いた。日本に帰ってやりたいことがたくさんあったのに出鼻をくじかれ沈んでいた。しかし、そんな状況下でもできることに取り組んでいる人たちのニュースを見て、このままではいけないと思った。ムパンダンギンドで学んだのは人と人とのつながりの大切さ。気軽に会えないこんなときだからこそみんなを繋ぐために何かできないか。そう思い、僕たち協力隊の強みの一つである語学力を活かして、いろんな言語で歌を歌う「世界に届け-Reach the world Project」を企画した。世界を包む脅威に一丸となって乗り越えていこう、そんな思いを込めた。動画を見た人から、日本だけでなく、世界中から喜びのメッセージをもらった。
 タイトルの「Hakuna Ryuta Hakuna Furaha」は僕がいつも来ていたTシャツに由来する。タンザニアへの出発前に友達が作ってくれた。その意味はスワヒリ語で「No Ryuta No Happy」
そんな存在になれるように今後も生きていきたい。