長期研修員(レソト王国)インタビュー

2020年8月4日

アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)「修士課程およびインターンシップ」プログラムで広島大学に3月末まで在籍されていたレソト王国出身のMamotjoka Joyce Moraiさんに、日本の生活を振り返っていただきながら、レソト王国について教えていただきました。

ご自身について教えてください。

名前: Mamotjoka Joyce Morai
国籍:レソト王国
大学:広島大学大学院国際協力研究科
日本滞在期間:2年6か月

教師として母国の生徒のために熱心に勉強されているモライさん

私の名前はマモトホカ ジョイス モライです。 私はレソト王国のSt Paul's deaf school(聾(ろう)学校)で聴覚障害または難聴を抱える生徒の教師をしています。 2014年にレソト国立大学を卒業し、特別支援教育の学士号を取得しました。 2020年3月に広島大学では特別支援教育とインクルーシブ教育を専攻し、修士号を取得して卒業しました。 私の研究テーマは、聾唖または難聴の子どもに対する、英語での読み書き能力向上を目指す指導法について考察することでした。私は教えることが好きですし、今後も生徒たちの読み書きの能力とモチベーション向上に役立つために、一生懸命勉強し続けていきます。

(どうして特別支援教育とインクルーシブ教育を勉強しようと思ったのですか?)
レソト王国にはPrimary school として4年制と7年制の2つの聾(ろう)学校がありますが、教員が聾唖または難聴の生徒への読み書きの教え方を知らないからです。私もそうでした。教え方を知らない教員が教えても、聴覚障害のある生徒は結局読み書きができないまま聾学校を卒業し、その後、健常者と一緒の学校に入ります。レソト王国の学校制度では、Primary schoolに7年、High schoolに5年通い、卒業した後に大学進学となります。7年制の聾学校に通った生徒は、一般のHigh schoolへ、4年制の聾学校に通った生徒は一般のPrimary schoolに3年間通い、一般のHigh schoolに進学します。一般の学校では通訳者と一緒に授業を受けますが、結局読み書きが習得できないまま卒業するため、大学にも入れず、仕事に就くこともできないというのが現状です。読み書きができていなくても、進級がストップすることはなく、卒業させられてしまいます。
進学も就職もできなかった生徒は、通常実家に戻りますが、大半の生徒が実家に戻らず、また聾学校に戻ってきます。聾学校では、食事の供給はもちろん、仕事探し、何かしらのスキルをつけさせるために受け入れてくれる施設や団体を探すことまでサポートします。聾学校はあくまでもPrimary schoolですので、年齢的な問題で彼らを長い間居させることができません。レソト王国には、彼らのためのSkill Centerがありますが、男性専用の施設です。女性用はありません。聾学校の職員は、毎週のように彼らを受け入れてくれそうな団体宛てに受入を要請するための提案書を作成して送っています。女性の場合、理美容や料理、美術、縫製の技術を身に付けさせるために、そういった事業内容の団体に提案書を送っています。
受け入れ要請の提案書は自国だけでなく他国にも発信しており、日本を含む海外からボランティアの方が来られることもあります。海外のボランティア団体の方々は、レソト王国の聴覚障害者が抱える問題を目の当たりにして大変驚かれていました。

(聾学校職員の仕事が多岐にわたっていて負担が大きいですね。)
ですから、読み書きを教えるスキルを学びに日本に来ました。まずは、教員が教え方を学ばなければなりません。

(レソト王国では、手話はありますか?)
皆がそれぞれ違う手話を使っていて通じていません。バラバラで意味を成していません。共通の手話のプログラムが私たちには必要です。

レソト王国について教えてください。

Malibaのロッジで撮影したレソト王国の美しい山々の眺め

特徴ある伝統的な帽子と鮮やかな色柄の伝統衣装

レソト王国は南アフリカ共和国の内陸国です。美しい山や風景が有名です。 伝統的なBasotho(ソト族)の帽子と衣装など豊かな文化があります。Thaba Bosiu文化村、Mokorotlongという博物館、Kome洞窟、恐竜足跡、Katse植物園、Morija博物館などがあります。レソト王国は年間を通じて四季があり季節を楽しむことができますが、電気、食料、水へのアクセスが制限されている農村地域の人々にとって冬は厳しい季節です。

(日本の気候はいかがでしたか?)
レソト王国と似ています。レソト王国も夏は暑く、冬は寒いです。標高が高いですし、乾燥していて、日本ほど夏は蒸し暑くありません。

(伝統衣装がとても色鮮やかですね。色柄に種類がありますか?)
季節で袖の長さも変わりますし、冬に着るガウンも伝統的なものがあり、柄が入っています。レソト王国は10の地区に分かれていて、伝統衣装にそれぞれオリジナルカラーとオリジナルの名前があります。着ている伝統衣装の色でどこの出身かが分かるようになっています。

日本とレソト王国の文化の違いを教えてください。

レソト王国では、来訪者や越してきた人を村全体で歓迎します。プレゼントと料理をたくさん用意して、おもてなしをするのが習慣です。ですが、日本では一人暮らしをするためにアパートに入居した際、隣人に引っ越しの挨拶に伺いましたが出てきてもらえず、その後も隣人を見かけることすらなく、どんな人か分からなかったのが、気味が悪くて最初はすごくストレスに感じました。
他には、目上の方に対しての礼儀が違います。レソト王国では、目上の方と目を合わせて話をすると無礼者と思われます。日本に来た当初、教授と話すときに、教授の目を見ないようにしていました。でも日本では目を見て話さないと無礼であることを知りました。また、日本では目上の方が立って話をしていたら、聞く方も立ちますが、レソト王国では座って聞くのが普通です。

(日本人がレソト王国に行く時は、この習わしを知っておかないと無礼者になってしまいますね。他の研修員の方々は、日本人のお辞儀に驚かれていますが、レソト王国ではお辞儀はしますか?)
少しスタイルが違いますが、お辞儀はします。レソト王国では体を少し斜めに傾けます。

好きな日本食とレソト王国の伝統料理を教えてください。

トウモロコシはPapa,大根の葉はMorohoと呼びます。チキンシチューを添えました。

キャベツが好きなので、広島風お好み焼きです。お店で麺とお肉とキャベツを重ねていく作り方を見て、もっと好きになりました。
写真はレソト王国でよく食べられている料理です。日本で私が友人のために作った時の写真です。

(主食はトウモロコシですか?お米は食べますか?)
すりつぶしたトウモロコシが主食です。レソト王国ではお米は作られていないので、購入するとしても高価なため食べられていません。このすりつぶしたトウモロコシは日本でもネットで購入できたためレソト王国の味が再現できました。
写真の緑色の野菜は、大根の葉です。日本では、白い根っこの方を主に食べるため、スーパーでは葉が切られた状態で売られていて驚きました。レソトでは白い根の部分は家畜に与えて、人間は葉だけを食べます。日本で料理を教えてもらう機会があり、白い部分をサラダにして食べました。レソト王国に帰ったら皆に伝えようと思っています。

最後に日本人の皆様に一言お願いします。

Universal Studios Japanで初めてローラーコースターに挑戦。人生はまるでローラーコースターのようですが、日本に来れたことは私の教師としてのキャリアにおいて大きな前進となりました。

思いやりのある日本の皆様、私の好きな日本語でArigatou gozaimasu。
皆様の繁栄・平和・健康をお祈りします。