【実施報告】オンラインセミナー「SDGs×多文化共生-中国地方から考える『住み続けられるまちづくり』-」

2020年9月14日

2020年9月5日、JICA中国はZoomを活用したオンラインセミナー「SDGs×多文化共生-中国地方から考える『住み続けられるまちづくり』-」を開催しました。
どこからでも参加できるオンラインの特長から、中国5県はもちろん、北海道から沖縄まで、そして海外からもお申込み頂き、244名もの方がご参加下さいました。

中国地方から考える多文化共生

佐藤教授の講演の様子

明木さんの講演「中国5県の多文化共生の現状と課題」

 はじめに、東京都市大学の佐藤真久教授に「持続可能な社会を読み解く多様なレンズー国際的視点とグローバルな視点を獲得する-」と題してご講演頂きました。SDGs(持続可能な開発目標)が掲げられた社会的背景や世界の動向、世界のグローバル化と私たちの日常生活から見えてくる国同士の相互依存、そして新たな時代の「豊かさ」とはなんなのか、難しく見えるテーマについて丁寧に解説して下さいました。

 広島県安芸高田市で国際交流協会の代表理事・事務局長を務める明木一悦さんからは、中国5県の多文化共生の現状と課題についてお話頂きました。5県別の外国人人口、言葉の問題や子どもの教育、地域住民とのコミュニケーションや防災、福祉といった多文化共生分野における様々な課題を解説頂いたあとで、在留資格による問題の違いについてもご説明下さいました。地域における多文化共生を考えるとき、私たちはつい「外国にルーツを持つ方」と対象をまとめて考えがちですが、彼らがどのような立場と資格で日本に滞在されているのかによって、取り巻く環境も直面する問題も大きく異なります。そして現在のコロナ禍において、新たな課題も浮かび上がってきています。しかし明木さんは、お話の最後に「課題は解決させるものではなく、互いが寄り添い解決するもの」である、と話され、参加者からは「私たちが『外国人』とひとくくりにして考えること自体が問題で、そこから見直す必要があるのではないか」といった感想も上がりました。

 後半は「中国地方から考える、多文化共生を活かしたまちづくり」と題し、2つの町の事例を発表頂きました。広島大学やJICA中国がある広島県東広島市には、従来から多くの外国人が暮らしています。そして今年、国が定める「SDGs未来都市」に認定されました。東広島市政策企画部の方からは、SDGsの理念である「誰ひとり取り残さない」ことを軸としたSDGs未来都市としての新たな町づくり計画をお話頂きました。
 また、島根県雲南市の芝由紀子さんからは、雲南市に暮らす外国人の課題と特徴を解説頂き、市と地域、そして芝さんが立ち上げた「一般社団法人 ダイバーシティうんなんtoiro」のような市民団体の3者が共同でチャレンジする、誰もが活躍できる町づくりについて、たくさんの事例を交えてご紹介頂きました。外国人の集住地域である東広島市と山間部で集散地域の雲南市、地理的環境も直面する問題も異なる2つの町の事例から、多文化共生の多様さや、外国人住民の存在は地域の強みであること、彼らが町づくりの大きな担い手になっていることを知ることが出来ました。
 
 終了後のアンケートでは、「『外国人』という枠にはめるのではなく、ひとりひとりが尊重され、生き生きと暮らせる社会を共に目指さなければと改めて思った」「現場で仕事をしていると忘れがちな、高い視点の話を聞くことができ貴重な時間だった」「日本国内の多文化共生に限らず、途上国を含む国内外の様々な活動に応用できるお話だと感じた」「今日のようなセミナーはオンラインで実施するメリットが非常に大きいなと感じた。様々な地域の方の意見を聞けるのも興味深かった」といった感想が上がりました。
 JICA中国はこれからも、開発途上国での長年の活動経験を活かし、地域の国際化にも貢献していきます。