水島フィールドワーク 瀬戸内海で学ぶ、産業と暮らしと環境

2020年9月25日

9時15分 JR岡山駅中央改札口集合

 9月20日(日)岡山大学大学院環境生命科学研究科で研修中の研修員3名が、倉敷市水島でフィールドワークを行いました。

 今回は「世界一の環境学習のまち“みずしま”の創造」をめざす「みずしま滞在型環境学習コンソーシアム」のアレンジによる、同地区での産業・暮らし・環境保護及び地域振興政策について、講義や見学を通じて学ぶプログラムです。

 参加研修員は全員、来日後1年以上が過ぎているため、既に各々が大学の学生寮やアパートで暮らしています。そのため、JR岡山駅改札口での集合となりました。時間通りに集合した研修員は、最初に検温。マスクをして、バスの中では、なるべく離れた座席に着席。最初の目的地である「水島展望台」に向け出発です。

 展望台では当日の全行程ご同行いただいた(公財)水島地域環境再生財団(みずしま財団)理事・研究員 塩飽敏史氏から、江戸時代から続く水島の干拓、埋め立ての歴史と共に、コンビナートと住宅地、農耕地が隣接している水島の特徴、また、北と東側を山に囲まれ、南西側が海に面しているため、海側からの風により、工場からの有害物質を含む排煙が滞留しやすい地形的特徴を踏まえ、地域開発と公害の歴史についてレクチャーを受けました。

「木村式自然栽培によるお米作り」を学ぶ

 次に一行は、「ミズシマ・パークマネジメント・ラボ」にて、NPO法人岡山県木村式自然栽培実行委員会事務局長 田辺綾子氏から、水島地区で行われている木村式自然栽培による米作りについて、ご説明いただきました。

 水島地区では、戦後のコンビナートの成立以降、兼業農家による肥料や農薬を使用した効率的なコメ作りが進んできた背景があります。
しかしながら、農家の高齢化などにより、農業のあり方が見直される中で、木村式自然栽培実行委員会では、安心安全なコメ作りとして自然栽培の普及に取り組んでいるとのことです。

 木村式自然栽培は外部から化学肥料、合成農薬、除草剤などの資材を投入せず、自然が持っている力を最大限引き出して栽培を行う農業です。
自然に任せて放置するだけではなく、土中の微生物も含め田畑を豊かな自然環境の状態に近づけて「作物が生育しやすいように人間がお手伝いをする」栽培方法であるとのことでした。

 研修員は3人全員が農業を学んでいることもあり、「米以外の作物での適用方法」や「比較的乾燥した土地での適用方法」等、質問が相次ぎました。

児島観光港から、瀬戸内海周遊

 その後、昼食をはさんで、児島観光港から瀬戸大橋周遊観光船に乗りました。瀬戸大橋の下を通り抜け、与島の手前まで行き、児島観光港に戻る約45分間のクルーズです。

 船上では瀬戸内海の大小の島々や工業地帯を眺めながら、塩飽敏史氏から過去の開発による水質悪化の問題、政府の規制強化により水質が改善した経緯、また、水質改善後も続く水産業の衰退について、ご説明いただきました。

 ちなみに、この海域は有名なタコの漁場でもあり、遊覧船乗り場の売店では大きな干しタコも売られていましたが、タコを食べる習慣がない研修員にとっては、不思議な商品なようで、「タコを食べる日本人はすごい!」と日本語でつぶやいていました。

「むかし下津井回船問屋」でタイムスリップ

 児島半島の先端に開かれた下津井は古くから風待ち・潮待ちの港として発展して来た地域です。
特に明治時代には、北前船による綿花、ニシン粕、昆布の中継取引港として大いに繁栄したとのこと。
「むかし下津井回船問屋」は、当時の回船問屋の建物を復元した資料館です。

 資料館内は江戸から明治時代にかけての商家の店の間、茶の間、台所等が当時の家具と共に復元されており、研修員達は海とともに生きた人々の生活を学びながら、昔の日本への束の間のタイムスリップ楽しみました。

フィールドワークを終えて

 「水島の経験を活かしてください。SDGs(「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の達成のためには、誰一人取り残される人がいないことが大切です。」塩飽敏史氏の言葉です。

 工業化が急速に進展した当時、水島では気象条件、地理的条件によって、公害の発生も予測可能だったとのことです。
しかしながら、経済発展優先の当時の考え方の中では、人々の健康への配慮は顧みられず、多くの公害患者が発生して人々が苦しい思いをすることになりました。
また同時に、企業も裁判や補償費の負担など、きちんと対策をしていれば払わなくて済んだ負担を負うことになりました。

 今回のフィールドワークでは経済発展が人々の生活を豊かにし、社会を支えてきた側面と、大気汚染公害を発生させ、健康に影響を与えたという負の側面の両方を学ぶことが出来ました。
参加した研修員は全員農業行政に携わっています。
今回のフィールドワークは帰国後の研修員各々の業務に新たな大きなヒントを与えたものと考えます。
最後になりましたが、ご指導いただいた皆様にあらためて御礼申し上げます。