【実施報告】2020年度JICA中国 開発教育教員研修アドバンスコース フィールドワーク(広島県東広島市)

2020年12月11日

官民連携で取り組む多文化共生

日本語教室の生徒に勉強を教える先生方

11月21日(土)、22日(日)の2日間、2020年度JICA中国 開発教育教員研修アドバンスコースの4回目の研修を実施しました。
今回は広島県から5名、山口県から1名の先生が参加され、JICA中国がある広島県東広島市でフィールドワークを行いました。

最初に訪問したのは日本語教室「にほんごわいわい八本松」。
東広島市が公的に行うこの事業は、2010年から始まり、市内4ヵ所6教室で続けられています。
会場によって参加者の年齢や国籍、目的も様々ですが、この日の教室には小中学生や高校進学を目指す10代男性から社会人まで、またルーツを持つ国も中国、ブラジル、ベトナムと幅広い方が参加されていました。
日本語教室の終了後、2013年から運営に携わっている奥村玲子さんに、東広島市の多文化共生事業についてお聞きしました。
東広島市は全国でも早い時期から外国人支援に力を入れており、「学生や外国人が定着し、活躍するまち」を目標にかかげ、今年7月には内閣府が実施する「SDGs未来都市」にも選定されました。
「地域日本語教室コーディネーター」として長年外国人支援に関わり、官と民、そして外国人の架け橋となって活躍されている奥村さんは、日本語教室がスタートしたきっかけや背景、行政が民間と連携することのメリットや課題などを、分かりやすく解説して下さいました。

地域に根差した「広島イスラーム文化センター」

広島イスラーム文化センターの入口で

午後は、JICA中国のすぐ近くに位置する「広島イスラーム文化センター」を訪問しました。
センターは男女別の礼拝部屋や誰でも利用できる資料室、居室などから成っています。
館内を見学したあと、設立者であるアブドゥーラ・バセムさんからイスラム教や広島に暮らすイスラム教徒の生活について教えて頂きました。
シリア出身のバセムさんが来日されたのは27年前。
バスの停留所、駅の表示は英語どころかローマ字表記も無く、困ることも多かったと言います。
言葉だけでなく食事や礼拝など、イスラム文化に馴染みの薄かった当時の日本でどのように対応したか、バセムさんはユーモアを交えて体験談を語ってくれました。
参加した先生方からは「イスラム教のイメージが変わった」「バセムさんの解説から、イスラム教が持つ他者への寛容さ、受容性を感じた」「異なる価値観を持つ人との共生社会という点で、とても勉強になった」などの感想が聞かれました。

中国地方での多様な学びを、広く伝えるために

教材や問いについて改めて学びます

教材作成のためのワークショップ

研修の2日目は、これまでのフィールドワークや講義のふり返りを行い、学んだことを教材化するためのディスカッションを行いました。
すべてのフィールドワークにご同行下さった川崎医療福祉大学の山中信幸教授からは、「開発教育の教材とはなにか」「『問い』をたてるということ」「教材開発の手順」などを改めて解説して頂きました。
このアドバンスコースに参加している先生方は全員、JICA中国の教師海外研修に参加歴があり、海外研修での学びを活かした授業実践を行っています。
多様な実践経験を持つ先生方ですが、今回のゴールは、このコースで学んだことを活かし、参加していない教員の方も「使ってみたい!授業で実践してみたい!」と思える教材を、全員で作成することです。
校種や経験年数、そして感じ方や考え方も異なるメンバーでより良いものを作るにはどうしたら良いか、これからの進め方や教材のねらい・趣旨など、様々な意見が飛び交い、白熱した協議が展開されました。
   
JICA中国の開発教育教員研修アドバンスコースは、今年度初めて実施した研修です。
誰も予測しなかった新型コロナウイルスの感染拡大により海外渡航が難しくなっていく中、外国に行かないと世界の課題は学べないのだろうか、地域で考える国際教育ってなんだろう、という素朴な疑問からスタートした研修でした。
すべての講義やフィールドワークを終え、6名の先生方は自身が学んだことを、中国地方の先生方、そして子どもたちに還元すべく、楽しみながらも頭を悩ませて教材を作成中です。
6名の先生、そしてフィールドワークに協力して下さったすべての方の熱い想いが詰まった教材は、完成後にJICA中国HPで公開予定です。ご期待下さい!