【イベント報告】国際フェスタ ペシャワール会講演会

2020年12月23日

【イベント報告】国際フェスタ ペシャワール会講演会

講演中の村上優さん(医師)

中四国最大級の国際交流イベント「国際フェスタ」、2020年度は、コロナウイルス感染拡大防止のため、規模を縮小して、11月15日(日)、広島国際会議場/オンラインにて開催されました。
今年は、例年大人気の「地球ひろば」も「SDGsスタンプラリー」も、バザーも屋台も中止で、実施された7事業すべてが要事前予約。
お祭り色がない、いつもと違う雰囲気となりました。

例年ならば通りすがりに立ち寄られる方もいる、フェスタのメイン企画である講演会も、事前申込をして来場される人向けとなる中、お亡くなりになってまもなく1年となる中村哲さんをサポートされてきたペシャワール会の活動について、中村哲さんの大学の1年後輩で、ペシャワール会の現会長、PMS総院長である村上優さんにお話し頂けることとなりました。
コロナ禍下で来場者数制限を行いましたが、満員御礼となる申込・来場を頂きました。

注)PMS:アフガニスタン現地で活動する団体Peace Japan Medical Servicesの略称。

ペシャワール会・PMSの活動の軌跡のDVD上映

世界がコロナウイルスに振り回される1年となった2020年、広島は原爆投下から75年を迎えました。
また、昨年12月に中村哲医師がお亡くなりになってまもなく1年を迎える時期であったことから、中村哲さん・PMS・ペシャワール会のこれまでの活動、その後の活動についてお話し頂きました。

はじめに、ペシャワール会の活動を紹介する映像「アフガニスタン用水路が運ぶ恵みと平和」が上映されました。
医師である中村哲さん率いるPMSがどうしてアフガニスタンで用水路建設をするに至ったか、その背景には、中村哲さんの「命」への一貫した強い想いがありました。
干ばつに苦しむアフガニスタンの一般市民に更に降りかかった9.11後の欧米軍等による空爆、世界の目が対テロとなる中での一般市民への緊急支援・・・
当時のニュースであまり報じられていなかった、一般市民の状況と中村哲さんらの活動の危険さ、重要性を知り、難民となってしまった多くの市民が、緑を、日々の暮らしを、PMSの活動により取り戻していく様を、参加者の皆さんは改めて食い入るように見つめました。

命を繋ぐ。生きておれ。

会場の様子

映像上映の後には、中村哲さんをペシャワール会設立の頃からサポートしてこられた村上優さんの講演です。
近しい村上さんによって、中村哲さんがパキスタンのペシャワールに行き、そこでハンセン病患者たちの治療をし、やがて国境を越えたアフガニスタンで人々の治療にあたり、農業、水路建設へと活動を広げられた、ペシャワール会、PMSの活動の歴史が語られました。

中村哲さんの活動の中で共通すること、村上さん曰くそれは中村哲さんの言葉の中でも「命を繋ぐ。生きておれ。あとはどうにかするから。」ということで、命を繋いでいくことを第一に考えて医療を行い、病気のもとを探っていく中で農業・水へと活動が広がったそうです。
また、中村哲さんは、イスラム教徒ではないにもかかわらずモスクの建設もされていますが、これは用水路建設で一人一人の命を繋ぐだけではなく、人々のよりどころ、人々がまとまる場が必要である、という考えによるものでした。
そんな中村哲さんが遺した言葉、「自分にとって見慣れないもの、自分が一般的と思わないものを目にすると、単に「違う」というだけであるものを、善悪とか優劣とかという範疇で見てしまいがちです。」には、「違い」に優劣はなく、単に違うだけだと、改めて心に強く残ったという声も聞かれました。

現在、中村哲さんが行っていた事業・夢は全てペシャワール会・PMSが継続して引き継がれるとのことでした。
中村哲さんの大きな視野と、ペシャワール会・PMSの活動を通して、中村哲さんが人々を惹きつけ、信頼を集め、活動して来られたその一端を、改めて実感しました。そして、DVDや写真でみた、用水路建設後の緑が、人々の笑顔が、これからも広がっていく様が目に浮かぶような講演となりました。
講演の後の質疑応答では予定時間を超えて質問が続き、講演に参加された方々の関心・満足度も高い講演となりました。

活動紹介のパネル展も同時開催

展示パネル・冊子をみる来場者

今回の講演会では、ペシャワール会のこれまでとこれからを、来場/ご参加頂いた方により理解して頂けるよう、DVD上映の他、パネル展示も同時に開催しました。
来場されたほぼすべての方が、展示パネル一つ一つをじっくりとご覧になっていました。
DVDの中で、また、村上さんのお話の中で出てきたエピソードに関連するパネル等を通して、ペシャワール会・中村哲さんの活動への理解がより深まったのではないかと思います。

来場者のアンケートにも、「国際協力の大切さを改めて感じた」「今までの歩みをあらためて知るとともに、現在および今後についてもお話を伺うことが出来てとても良かった」といったコメントを多数いただきました。

これからもJICA中国では市民の皆様に世界を身近に感じて頂けるイベントを実施していきます。