【実施報告】「新聞から読みとくSDGs-知る、深める、伝える-」

2021年1月6日

・日時:2020年12月12日(土曜日)10時15分から13時15分 
・会場:合人社ウェンディひと・まちプラザ(広島市まちづくり市民交流プラザ)ギャラリーAB
・参加者:28名
・主催:JICA中国・中国地方ESD活動支援センター・環境省中国環境パートナーシップオフィス
・後援:朝日新聞社、新日本海新聞社、山陰中央新報社、山陽新聞社、中国新聞社

なぜ今、新聞で学習するのか

有馬進一先生

12月12日、中国地方ESD活動支援センター、環境省中国環境パートナーシップオフィスとともに新聞を活用したセミナーを開催しました。
最も身近なニュースソースである新聞を用いた教育活動は「NIE」(Newspaper in Education;教育に新聞を)と呼ばれ、1930年代にアメリカで始まりました。当日は日本NIE学会理事である有馬進一先生をお迎えし、NIEの歴史や特長、新聞を使った参加型学習の方法を学びました。

新聞は、近所の出来事から日本全国のニュース、そして世界の問題までを1つの媒体で扱った情報源です。好むと好まざるとにかかわらず、自分の専門外の事柄や興味関心の低い分野の動向も目にせざるを得ません。
一方、インターネットは同じ趣味嗜好の仲間と即座につながり、深掘りすることができる画期的な手段ですが、自分から検索しないかぎり、異なる意見や立場に触れる機会が少ない媒体でもあります。自分とは違う発想に自然と触れることで刺激を受け、多様な価値観を認識して、共感したりモヤモヤ悩んだりすることができるのが新聞の大きな強みと言えます。

同じものを見ても視点が異なることに気づく

記事とSDGsのつながりを考えました

さらに有馬先生は、SDGsを知り、深く理解する上で新聞が効果的な教材になることも教えてくれました。
SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)は「誰ひとり取り残さない」社会を目指して国連で定められた目標です。格差解消や食料問題、教育、ジェンダー、環境など17のゴールから成りますが、すべてのゴールは切り離せず、密接なつながりを持っています。だからこそSDGsへの理解を深めるには、専門分野ごとに検索したのでは見えづらい、横断的で広い視点が必要といえます。
その視点を育むのに最適なのが、いつでも誰でも手軽に入手できる新聞、というわけです。

有馬先生の講義に続き、参加の先生方はテーブルの上に置かれた新聞を広げ、各々気になる記事を探していきました。
手元にはSDGsの17のゴールのロゴがついた付箋もあります。着目した記事はSDGsのどのゴールと、どんな理由でつながっていると思うか、新聞紙と付箋を手に考えていきました。

各自で考えた後に、自分がどんな記事にどんな付箋をつけたかを全員で共有していきました。エネルギー問題を扱った記事に多くの参加者が注目したかと思えば、ユニークな理由で高級ブランドの広告に着目した人もいました。
そして、たくさんの人が同じゴールの付箋をつけていても、その理由は様々であることにも気づきました。
同じ情報を見ても、前向きにとらえる人もいればネガティブなイメージを持つ人もいる。
各自の考えを共有することでその多様性を再認識することができました。

新聞社が行う教育活動

新聞社のNIE取組み事例紹介

当日は、岡山県を中心に購読されている山陽新聞の山本直樹さん、広島県を中心に購読されている中國新聞の伊藤一亘さんにもお越し頂きました。NIE活動に取り組むのは教員の方だけではありません。新聞社が地域の学校に出向き、新聞を使った授業を実践されています。
また、子どもたちが作る新聞のコンクールも長年続けられている活動のひとつです。

山陽新聞社では新聞の工場見学というプログラムがあり、岡山県内の多くの学校から訪問があるそうです。
また中國新聞には「中国新聞ジュニアライター」というプログラムがあります。中学1年生から高校3年生までの生徒が、原爆や平和をテーマに自身で取材し、記事を書くことを通して、社会問題を深く考え、広く発信する機会を得ることができるそうです。
人々の暮らしに密着し、現場を大切にする新聞という媒体だからこそ、その教育活動は教室の外にも広がりを見せているようです。

当日は広島県内のコロナ感染拡大防止集中対策期間となり、残念ながら時間を短縮して実施しましたが、ご参加下さった皆さんは、短い時間の中でも多くの気づきを持ち帰って下さったようです。

JICA中国では、様々な機関と連携をはかり、楽しみながらも学びの多いセミナーをこれからも開催していきます。
どうぞご期待ください!