【授業実践紹介】「日本食とSDGsのつながりを英語で考える」(広島県府中町立府中中学校)

2021年1月12日

府中町立府中中学校で英語を教える沓木里栄先生は、今年JICA地球ひろばが主催する「国際理解教育/開発教育指導者研修」に参加されました。
全国の先生方と授業づくりについての意見交換やディスカッションを重ね、その研修での学びを活かして、12月から同校の1年生を対象に、SDGsへの理解を深める授業を展開されています。

カードで学ぶ日本食と世界の問題

府中町立府中中学校 沓木里栄先生

沓木先生が作成したゲームカード

2020年12月22日、同校1年生の英語の授業テーマは「日本食とSDGsとのつながりについて発見しよう」でした。
生徒は6月に総合的な学習の時間でSDGsの背景や概要を学んでおり、17のゴールがあることやそれぞれの内容についてはすでに知っています。沓木先生は、そこからさらに理解を深め、ゴール達成に向けて自分がどう行動したら良いかを考えてもらいたいと授業を検討したそうです。
生徒が使う英語の教科書に、海外の食べものについて触れた単元がありました。炒飯に似たインドのビリアニや巻き寿司に似た韓国のキンパなど、国が違っても同じような食文化があることを知った生徒に、最も身近な食を通じて、SDGsの前提となる世界の課題と自分達の日常がどうつながっているかを理解してほしい、そう考えた沓木先生はオリジナルのゲームカードを作成しました。

前回までの授業の中で、生徒はフィリピンのバナナの話を聞きました。自分達が当たり前のように食べているバナナの背景にある問題、現地の農家の貧困や収入の不平等など、フィリピン出身のALTにも協力してもらい、食とSDGsのつながりを学びました。
今日の授業では、より身近な日本食からSDGsを考えます。
沓木先生は英語で、カードゲームのやり方を説明しました。4色のカードにはそれぞれ、料理名、食材、外国の国旗、課題・問題が英語で書かれています。国旗はその食材を多く日本に輸出している国のもの、そして課題・問題はその食材を生産することで、現地で起こっている事象が示してあります。中には、生産することでのメリットを示しているものもあります。
それらを5枚目の白いSDGsのカードと結び付けていきます。5枚1セットで1つのつながりが見えてくる沓木先生オリジナルのカードを、生徒は頭を悩ませながら、机一面に並べていきました。

英語の授業でSDGsをどう扱うか

「どの組み合わせが正しい?」

沓木先生は日頃から生徒に「辞書は『友達』」と伝えてきたそうです。授業当日も、カードの中に分からない単語が出てくると、生徒は「ここは『友達』に聞いてみよう」と、英和辞典を広げて新しい単語を吸収していました。
そして沓木先生も授業をほぼ英語で進めていました。カードゲームのルール説明も、みそ汁の材料の大豆のことも、パラグアイでゴマ栽培という新しい雇用が生まれていることも。沓木先生の英語での解説を、生徒は自分達が並べたカードを見ながら必死に聞き取ろうとしていました。

最後のふり返りで、生徒からは「僕たちが当たり前のように食べているものが外国にいろいろな影響を与えていると知った。でも食べないわけにはいかない。どうしたら良いのか分からない...」という素直な感想があがりました。
このような場面で、きれいなコメントを言うのは実は簡単です。
「感謝して食べ物を残さない」「なるべく国産の食材を選ぶ」...
しかしそれらは本当に現実的と言えるでしょうか。
自分達の食生活と外国とのつながり、そこで起こっている問題を知り、自分の日常が外国に影響を与えていると真剣に受け止めたからこそ、「本当にできることは何か」と頭を悩ませたのではないでしょうか。
この授業で学んだこと、モヤモヤした想いを持ち続け、同校1年生のSDGsの学習はこれからも続きます。