【実施報告】JICA中国 高校生国際協力体験プログラム

2021年8月19日

【実施概要】
・日時/参加者:2021年7月24日(土)24名、7月25日(日)19名
        いずれも10時00分から17時20分
        ※ 両日同じ内容で実施
・実施方法:Zoomによるオンライン開催
・プログラム:
 10時00分から10時50分 スタッフ紹介、参加者間自己紹介・アイスブレイク
 10時50分から12時00分 講義「JICA事業概要・青年海外協力隊体験談」
 12時00分から12時45分 昼食休憩
             「JICA国際協力推進員によるJICAボランティア フリートーク」
 12時45分から13時45分 ワークショップ「言葉、文字がわからない体験」
 13時45分から14時30分 ゲストによる講義「ニカラグアから来日して感じること」
 (休憩/ちょっと一息体操)
 14時45分から17時00分 ワークショップ「少数派の立場になって考える
                     -青年海外協力隊のガーナでの活動事例から-」
 17時00分から17時20分 全体ふり返り
(17時20分から17時50分 希望者のみフリートークセッション)

今年のテーマは「インクルーシブな世界から見た多文化共生」

【画像】JICA中国の夏のイベントと言えば…「高校生国際協力体験プログラム」です。
海外に興味がある、JICA海外協力隊について聞いてみたい、JICA中国に行ってみたい、国際協力に関心のある人と友だちになりたい、進路に迷っている、などいろいろな気持ちを持った中国5県の高校生たちが自ら応募、参加してくれるこのプログラム。
例年ならば1泊2日でJICA中国に宿泊し、初めて会う高校生同士で様々な課題に頭を悩ませ、気持ちと心に寄り添い、葛藤し、意見を出し合い、考える企画で、いつも定員を超える応募がある大人気プログラムです。
今年はコロナ感染拡大のため、オンライン開催としましたが、「オンラインでも対面に負けない充実した内容を提供したい」と、中国5県の国際協力推進員を中心に準備を進めてきました。

心の壁、緊張のiceをこわして、まずは打ち解けよう!

初めて会う他校の高校生。しかもオンライン。
なるべくなら、生徒はもちろん、スタッフも対等に話せる関係になりたい。そして、本音で意見を出し合える1日にしたい。そのためには最初のアイスブレイクはとても大切な時間です。
ブレイクアウトルームで小グループに分かれたら、参加者同士でつながりを見つける自己紹介を行いました。その後、個々に思いついた単語をグループ内で並べて1つの文章をみんなで完成させる、というゲームを行いました。自分は1文節しか言えず、次の人に続きの文節を考えてもらいます。
すべてのグループ共通で「あるところに…」から始まり、現実にはありえないファンタジーでクスッと笑える文章が各グループで仕上がり、参加者の気持ちもほぐれた様に見えました。

オンラインでの疑似体験から考えるマイノリティの気持ち

疑似体験アクティビティ
「みんなでマンボ!」

オンラインではなかなか難しい、疑似体験を含むアクティビティも実施しました。
参加者には事前に指示カードを送付しています。それらを手元に準備してもらい、画面越しの進行役の指示通りに動きます。
指示カードには自分ひとりが他の参加者と異なる動作を行う仕掛けがあり、「あれ?私、間違えてる?」といった違和感や緊張感を抱いてもらう時間でした。
また、読めない言葉で書かれた「求人カード」をもとに、グループで最も良い仕事を探すというアクティビティにも参加してもらいました。グループで想像力を働かせ、「さっぱり、分からん!」「たぶん、この数字が時給なんじゃない?」など、読めない文字から情報を探って考えてもらいました。

自分だけが異なる動きをし、違う言葉を発しているときの驚きや違和感、文字や言葉が分からないという困惑を少し体験してもらうことで、少数派の人々が普段感じていることを想像し、自分に何ができるかを考えたい。次の時間に続く、大事なモヤモヤを共有する時間になりました。

ジョアンナさんの話から異文化理解を考える

ニカラグア出身のジョアンナさん

今回のゲスト講師はニカラグア出身のジョアンナさん。
母国では女性の青年海外協力隊員と一緒に働き、また協力隊員だった男性と結婚し来日、現在は広島で暮らしている女性です。
彼女が体験した言葉の壁、現地と日本の文化の違いをきれいな日本語で話してくれました。高校生からも質問をぶつけてもらいましたが、ジョアンナさんの、日本語では伝えたい事が100%伝わらない…といった困惑もうかがえました。

ジョアンナさんとのやり取りの中から、海外の人が日本で感じている気持ちに想いを馳せ、どう接する事を相手は望んでいるのか、自分だったらどうしてほしいだろう?と気持ちを近づけることができたのではないでしょうか。
「今も、毎日、日本語を勉強しています。もっともっと話せる様になりたいです」と話してくれたジョアンナさん。
日本語理解だけでなく、日本の中に自ら溶け込もうとしてくれている様子が印象的でした。

異文化の中でハンディキャップを持つ人と活動する

ガーナの体験談から考える少数派の想い

広島県JICAデスクの羽立大介さんはガーナの盲学校で活動したJICA海外協力隊経験者です。
自身が協力隊に行くまでの経験や活動先での悩み、言葉の壁、目が見えない人とのコミュニケーションの取り方と伝え方、そして現地で少数派となった日本人としての自分、アジア人として受けたコロナ差別などリアルな体験を話してくれました。

今回の参加者には事前に宿題が出されていました。
「少数派だからこそ困ること・困りそうだなと感じること」を考えてくる、というものです。
羽立さんの話を聞いた後、それをグループ内で発表し、そこからさらに具体的な課題、問題を掘り下げていきました。ハンディキャップには車椅子や白杖など周りに状況が理解されやすいものもあれば、知的障害など見えづらいものもあること、障害の程度の違いや男女差別・LGBTQといったジェンダー問題、また身近なところでは左利きの人の不便さや食品アレルギーなど多くの課題があります。それらの中からグループで1つを選び、どうしたら困っている人の悩みが解決に近づけるか深掘りしていきました。
「『障害』や『LGBTQ』といった言葉自体なくなる事が理想」、「あるがままに相手を受け入れることができる優しい自分や世の中にしていきたい」、「まずは今の現実を知るための教育が大事」など、普段話し合う機会のないテーマを、率直に言葉として共有する貴重な時間になりました。

笑顔でバイバイ!

コロナ禍で他県への移動や他の学校の友達と接する機会も少ない今、中国地方の高校生同士が社会に存在する課題や多様な社会について意見を出し合い、一緒に考えた時間は、たとえオンラインでも貴重なものだったのではないでしょうか。
プログラムの最後には、参加者同士で今後の進路や将来について語り合ったり、2年生が3年生に勉強方法を相談するといったシーンも見られました。

貴重な夏休みの1日、JICA中国の高校生国際協力体験プログラムにご参加下さった皆さん、参加を勧めて下さった先生、保護者の皆さん、ありがとうございました!
次は是非、JICA中国でお会いしましょう!