【実施報告】岡山未来デザイン~「食」にまつわるSDGs~

2021年12月17日

東京栄養サミット開催にあわせて、「食」について考える

岡山県国際交流協会やJICA中国等が共催し、岡山の中から、外から、SDGsを知って、考えるイベント「岡山未来デザイン」。東京栄養サミット2021が行われた今年は、「食」にまつわるSDGsをテーマに、栄養サミット直前の12/4(土)に開催。京都大学人文科学研究所准教授の藤原辰史先生とJICA中国市民参加協力課長の澁谷のイントロ対談に始まり、大紀産業株式会社の安原社長によるご講演、(一社)子どもソーシャルワークセンターつばさの紀代表に、食を通じたこどもの居場所づくりを通した、身近な地域の食にまつわる事例をお話し頂きました。

藤原先生とJICA職員が語る「食と人間」

京都大学の藤原先生

京都大学人文科学研究所准教授の藤原辰史さんとJICA中国市民参加協力課課長、澁谷のイントロ対談では、「食」を歴史的な観点から考察している藤原先生が、「食と人間」「動物としての人間」「社会的存在としての人間」「環境全体の中の人間」についての澁谷からの質問に、様々な視点でお話されました。

「食べる」ことはただ「食べ物を口に入れる」ことだけではなく、「人との関係を含めたストーリーも一緒に」食べている、ということからお話が始まりました。つまり、食べることは人生そのものであり、人は本来、「食べる為に働いて」きたにもかかわらず、現代社会では「働く為に食べる」逆転現象が起き、ガソリンスタンドモデルのように、速く「片付ける」ようになってしまっているという指摘に、ドキッとして思わず自分の食生活を振り返りました。

また、SDGs(持続可能な開発目標)の議論では、何をsustain(持続)させるのかが間違って捉えられていないだろうかと、穏やかながらも鋭い切り口で問題提起がありました。私たちの世界、経済システム、現在のように大量のフードロスを生み出している仕組みを持続するのではなく、食べて出すという行為により食物連鎖の一部を構成する人間が、環境の分解力を超えないように、地力を落とさずに物質を循環できるようにすることが、SDGsの”sustain”の本質ではないか、というお言葉にもハッとさせられました。

最後に、若者に向けて、「自分だけが動いても何も変わらず意味がないと考えて、無力感を覚える人もいるが、そもそも一人で何とか出来るなら、それはスーパーマン。スーパーマン症候群にならず、一人一人が少しのこと、それ自体はとても小さい、砂粒の集まりのような取り組みを実践していくことがまず大事」だと、小さくても自ら動くことを励ますメッセージを頂きました。

乾燥玉ねぎでスーダンを救う

乾燥玉ねぎ作りに取り組むスーダンの人たち

藤原先生のお話から得た「食」への新しい気づきを胸に、続いては岡山県の大紀産業株式会社の安原社長から、大紀産業のご紹介、続いてJICA民間連携事業を活用した、スーダンへの玉ねぎ乾燥機の導入についてお話し頂きました。
この日はちょうど、おかやまSDGsアワードの授賞式の日。大紀産業さんは「特に優良な取り組み」受賞団体に選出されたとのことで、参加者の皆さんも一同お祝いムードです。
大紀産業さんの乾燥機の歴史、そして乾燥機がどのように役立っているのかというご説明に、「規格外農産物の廃棄削減に繋がってるんだ!」「え?コオロギ?昆虫食?」「薬も?!」と参加者もビックリ。使用されている電気式乾燥機は力仕事不要のシンプルな作りであること、また、乾燥玉ねぎを販売するまでには、乾燥の前後にも、皮むきからラッピングまで様々な作業があり、地方で職の機会が乏しい現地の女性の雇用創出にもつながるそうです。
でも、天日乾燥が出来るはずなのにどうしてわざわざ機械乾燥なのでしょうか?乾燥地域では、砂ぼこりがひどい為、屋内乾燥の方が異物混入を防げる、といったメリットや、気候変動の影響で、日本でも、例えば秋に干し柿を作ってもカビが発生しやすくなったこと、原発事故やPM2.5、自然噴火等を背景に、屋外で天日乾燥することが難しくなり、これまでの常識が通用しなくなっている現実を示され、食の為にも地球環境を守ることについて、改めて考えさせられました。

「こども食堂」を超えて

つばさ代表の紀さん

続いて、(一社)子どもソーシャルワークセンターつばさの紀代表に、食を通じたこどもの居場所づくりを通した、身近な地域の食にまつわる事例をお話し頂きました。
1人1人の子供の背景が異なるにもかかわらず、無料で食べられる「こども食堂」というと、そこにきている子供たちは一括りに「貧困家庭」という目で見られてしまうことから、つばさの「こども食堂」は場所も非公開なのだそうです。
また、そもそも「すいている」のはおなかだけではない、と食事だけではない子供の居場所づくりに取り組んでおられ、「こども食堂」とは名乗っておられない理由などを、活動の紹介をしながら説明され、参加者たちは皆、紀さんの言葉に深く聞き入っていました。

最後は大学生の司会進行でトークセッション

大学生の質問に思わず笑顔の安原さん

紀さんの事例紹介の後は、岡山の大学生2名が司会進行をつとめ、「食」について、自分たち自身の質問、参加者の質問を、講師の安原さん、紀さんに投げかけます。
途上国の電力事情や、大工場ではなく地域に根付いた規模での展開理由、こども達(家庭)への物資共有の需要と供給のバランスの状況や対応法など、講師の皆さんのお話への熱心な質問がありました。
つづいて司会進行の大学生2名から質問が出されました。「ご自身の活動について最も意識しているSDGsゴールは何でしょうか」という質問に、安原さんは「フードロスの課題解決を通して1番目のゴールの貧困をなくすこと」、「どういった志をもって、働くという事に向き合っていますか」という質問に、紀さんは「やりたいことをとことんやっている」と回答されました。
大学生たちのフレッシュな質問と進行に、参加者達も和やかに、あっという間に終わりの時間となりました。参加してくださった皆様、ありがとうございました。