「水島フィールドワーク」(地域理解プログラム「瀬戸内海で学ぶ、産業と暮らしと環境」)を実施

2022年8月29日

8月7日(日)照りつける日差しの下、岡山県は倉敷市水島にてフィールドワークを実施しました!このプログラムは岡山大学環境生命科学研究科に所属しているJICA長期研修員を対象に2020年から始まり、今年で3回目の実施(受⼊れは、みずしま滞在型環境学習コンソーシアム)。今年もアフガニスタン、マラウイ、ネパール等、研修員13名の参加があり、多国籍なメンバーでの実施となりました。環境に関する研究を行っている研修員が、今回のフィールドワークを通して何を学ぶのか。熱中症対策、感染対策を万全に、さあ出発です!

本当の豊かさって何?

水島展望台から水島コンビナートを見渡す研修員たち

岡山駅を出発し、まず向かった先は水島展望台。バスから降りて見渡す風景は、「真っ青な空」の下に広がる水島コンビナート。数々の煙突と工場に研修員も圧倒されていました。少し目線を横に移すと、人々が暮らす住宅地。こんなに工場地帯と密接していて大丈夫なのだろうか・・と、「今も人が住んでいるけど大丈夫?」等、研修員から率直な質問がありました。今回のプログラムを企画、同行してくださったみずしま滞在型環境学習コンソーシアム事務局の(公財)水島地域環境再生財団(みずしま財団)理事・研究員 塩飽敏史氏より、戦後からの高度経済成長に伴う水島地域の歴史について説明があり、かつてはこの地域は「真っ黒な煙」が広がっていたとのこと。工業化による県民の豊かな暮らしを目指して、水島地域の開発・工場誘致を進めた結果、多くの人々の公害被害が発生。漁業や農作物が豊かだった地域が、公害によって暮らす人々や生業に多くの被害をもたらしたとのことでした。塩飽氏より研修員に「本当の豊かさって何でしょうか」という問いかけに、研修員一人ひとりが真剣に考えている様子でした。

工場からガスのような異臭が・・

松江地区に設置してある大気汚染測定所

続いて向かった先は、工業地帯に隣接している松江地区。町中を歩いていると少しだけガスのような異臭が・・。工業地帯から流れてくる異臭を感じ不安そうな研修員でしたが、塩飽氏に案内されて向かった先は大気汚染測定所。測定したデータはネットを通じて倉敷市の環境監視センターに送られるとのこと。人々の暮らしを守る行政の対策について学ぶと共に、実際に住んでいる人たちの苦労を少し感じた研修員でした。

日本遺産指定史跡の水門を見学!

日本遺産指定史跡になっている水門

引き続き松江地区を徒歩で回り、江戸時代以降の干拓によって農業用地が造成された場所を見学。干拓用の水門(水島地域で唯一の日本遺産指定史跡)や、堤防跡を実際に目で見て、かつては海だった場所から干拓地が出来た歴史を学びました。更に、歴史民俗資料館にも訪問。展示されている道具や写真を見て、江戸時代に開墾をしていった人々の生活を垣間見ることが出来ました。展示されていた道具はプラスチックが全く使われておらず自然の資源を活かしたものばかり。町中を散策中、川沿いで見た大量のプラスチックごみを思い出し、便利なプラスチックで物を作りすぎた現状を考えさせられました。

海から見る水島コンビナート

初めてのクルーズ体験に大興奮の研修員たち!

山から、地上から、そして最後は海から水島コンビナートを見学しました!
研修員13名クルーズ船に乗り込み、水島港を出発。クルーズ体験が初めてな研修員もおり、終始携帯を片手に写真を撮って大はしゃぎ!
船上からは、迫力のある大きな原材料受⼊れ・払い出し⽤の機材が動く姿や、⽬前に広がる様々な製造設備を経て、人々の生活に欠かせない製造品が造られている様子を見ることが出来ました。みずしま滞在型環境学習コンソーシアム副会長の古川氏より、各企業が敷地内に30%の緑地をもたなければいけないと、企業の説明とあわせて環境保全への取り組みについても説明がありました。

参加した研修員からの感想

汗だくになりながらのフィールドワーク。皆さんお疲れ様でした!

今回のフィールドワークでは、工業化により人々の暮らしを豊かにした経済発展の一面と、それに伴って公害被害が発生し、人々の健康に影響をもたらした一面の「光と影」を学ぶことが出来ました。
今回参加した研修員から以下のようなコメントがありました!今回学んだ事、感じた事を自国に戻ってからも活かしてくれることを期待しています。
●アフガニスタン研修員:「公害に対する日本の取り組みを実際に目で見て、学ぶことが出来て大変興味深かった。今回学んだことを、自国に戻ったら共有したい」
●ネパール研修員「船上からみたクルーズツアーはとても印象的だった」