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- JICA地球ひろば開発教育メルマガ 2016年8月号
Q&A「途上国について学習すると『途上国に物をあげる』という結論に… これでも良いのでしょうか?」
現場の先生からよく聞く「授業」「参加型学習」「学校の中」等に関する悩みや疑問をQ&A形式でご紹介いたします。悩み・疑問解決の一例としてヒントにしていただけたら幸いです。今回のQ&Aは、「支援」に対する学習者の意識についてです。
Q:質問
途上国が抱える課題などについて学習した後、いざ自分たちができる行動を考える段階になると、学習者が「途上国に物をあげる」という結論に… これでも良いのでしょうか?
A:回答
途上国の人々に「物をあげる」という行為は、一見すると良いことのように思ってしまいますが、果たしてどうでしょう。今回は、そのことを考えていきたいと思います。
「〜してあげる」の罠
開発教育や国際理解教育の実践の結果として、途上国に物資を送る際、学習者や指導者が「良いことだ」と考えることもあるかと思います。その理由として、以下のような声を聞きます。
- とにかく行動することが大事
- 自分たちにも何かできたと実感できた、自信につながった、達成感を味わえた
- 支援者同士や被支援者とのつながりができる
- 目に見える形なので良い
- 興味関心や学習のきっかけとなる
ここで考えて頂きたいのは、上記の理由が一体誰の視点で考えられているか、ということです。いずれも、学習者の立場に立った意見になってはいないでしょうか。つまり、支援を受ける人の立場が十分に加味されているとは言えません。もしかしたら、一方的に送った物が、受ける人にとって嬉しくない物かもしれません。その失敗は学習者にとっては学びや教訓になるかもしれませんが、支援を受ける側の人たちは私たちの学習素材ではないですよね。
この「途上国に物をあげる」ことについての質問を受けて、東日本大震災の時の出来事を思い出します。震災のニュースを聞き、「何か支援してあげたい」と思った人たちが、衣料品から食料まで様々な物資を送りました。喜ばれると思って送った物資。しかし、被災地では一方的に送られた物資による問題が起きていました。
例えば、必要以上に同じ物が送られ保管場所もなく困った、必要のない物が沢山送られ必要な物が送られなかった、などの問題を聞いたことのある方も多いと思います。果たして、物資を送る前に被災者の話を聞いたり情報を集めたりした方は、どのくらいいたのでしょうか。
本当に必要な物を必要な人に届けることは難しいことです。送った物資を被災者のために仕分けやマッチングも大変です。物を送る前に、知るべきこと、考えることがたくさんあるにも関わらず、そこが十分でないままに「物をあげる」という行動をしてしまう。
ここに、「〜してあげる」の罠があります。「〜してあげる」という気持ちが自分本位になった時に、相手の立場が見えにくくなってしまうのです。「〜してあげる」という気持ちは善意であるが故に、その罠に気がつくのも難しいことです。
この罠に陥らないためには、相手の立場や状況にも立って考えさせることが重要なことの1つです。
事前学習の例
相手の立場や状況に立って途上国への行動を考えるには、どうすればよいでしょうか。1つには、事前学習で何を扱うかがポイントになるかと思います。例えば、以下のような内容で事前学習をした上で、行動について考える実践を行っている指導者もいるようです。
- 多様な支援の形や様々な支援団体について知らせる
- 支援が必要な状況に陥った構造について学習させる
- 支援が与える影響の事例を知らせたり、考えさせたりする
- 様々な関係者(途上国の村人や政府、援助機関等)を扱ったワークショップを行う
- 現地の文化の様々な面を理解させ、体験型で伝える
- 手紙での交流を通して、現地の人々に触れておく
- 実際に現地に行ったことのある人から、現地の人々の話を聞く
- 学習対象国の人で日本に来ている人から、現地の話を聞く
奥の深いテーマですが、支援について考え・取り組む際の参考にしていただけたら幸いです。
実践例「援助した『後』にも考えて、理解を深める!」授業実践をご紹介!
私立浜松学院中学校 教諭 中澤 純一
中澤先生はネパールの中学校と過去2年間に渡り継続的に交流・学習する授業を展開していました。ネパール大地震を受け、生徒は自発的に、どのような援助が出来るか考え行動に移します。その後の生徒の様子を受け、先生は「援助」について、さらに考える授業を実践します。
実体験に基づき、援助とは何か、援助が現地に与える影響について理解を深める授業の実践例として是非ご参照ください。
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