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【インターン生によるインタビュー!】写真で感じるモンゴル、つながる世界――写真家・鈴木革さんに聞く

2025.10.03

2025年8月13日から30日まで、JICA市ヶ谷(地球ひろば2階)でモンゴル写真展「果てしない空の下でつながるモンゴル」が開催されました。写真家・鈴木革さんによる作品やJICA事業の現場写真など、モンゴルの今を伝える全24点が展示されました。
また展示期間中、JICA市ヶ谷の食堂J’s Caféでは、大使館お墨付きメニューとして、モンゴル料理「ムーグテイ・ホーラグ(モンゴル料理の牛肉と茸の炒めもの)」と「ゴリヤシ(モンゴルの牛肉煮込み)」が提供されました。
ご来館いただいたみなさま、ありがとうございました!

写真展の様子

ゴリヤシ
ハンガリーのグヤーシュに由来する、モンゴルの家庭料理。優しい酸味と甘味がご飯によく合う。

今回は、この写真展で作品を多く使わせていただいた鈴木革さんに、これまでの歩みやモンゴルでの経験、そして今後の展望についてお聞きしました。

Profile:写真家 鈴木革
1956年秋田県生まれ。1985年にチベットを取材して以来、開発途上国や秘境を中心に50カ国以上、200件近くの世界遺産を訪れる。

関連リンク:suzuki kaku official - world travel photos

学生時代の旅が原点、写真家としての道

鈴木さんが写真の道を志したきっかけは、大学時代の南米旅行にあります。ガイドブックもなく、治安も不安定な中で訪れた当時のマチュピチュは、静寂と神秘に包まれた「秘境」そのものだったと、鈴木さんは振り返ります。卒業後はコンピュータ会社に就職しましたが、この旅の記憶が忘れられず、5年で退職。1985年に新たな秘境を目指しチベット行きを決意します。中国語を学んでいたときの先生が写真家で、「君も写真を撮るなら販売してみたら?」との言葉をきっかけに、職業としての写真家を意識するようになったといいます。過酷な移動を経て到達したチベットでは、多彩な民族衣装や豪華絢爛な寺院、壮大な自然に触れ、まさに「写真天国」だったそうです。その後ネパールに抜けて出会ったJICA海外協力隊員との縁から、その後のJICAとの長い関係につながりました。鈴木さんは、「振り返れば、自らの意思というより人との出会いや偶然に導かれて今がある」と語られています。

モンゴルで出会った人と風景

展示の中で、鈴木さんにとって特に心に残っている作品の一つに「ツァータンの少年とトナカイ」があります。ロシア国境近くの秘境で出会った少年は、父から受け継いだ伝統を学び、誇らしげにトナカイにまたがる姿が印象的です。その姿は鈴木さんにとって「私のモンゴル」を象徴する一枚だといいます。
また、旅の中で出会ったシャマンも強い印象を残しました。シャマンは一般的に霊媒師と訳されますが、世界中には偽物も少なくないと感じる中で、シャマンの原郷とされるツングース系民族が暮らす地域に隣接するモンゴルで出会ったシャマンは、まさに「本物」だったと感じられたそうです。

「ツァータンの少年とトナカイ」
撮影:鈴木革/JICA
※ツァータン トバ系の少数民族で、トナカイと共に移動しながら暮らす遊牧民。

「伝統のシャマニズム」撮影:鈴木革/JICA
ツングース語由来の「シャマン」に通じる地で出会った、シャマニズムの伝統。

さらに、首都ウランバートルでは、日本人抑留者の記録に触れ、平和な時代に訪れることのありがたさ、そして異国で命を落とした人々への想いを深く感じたといいます。加えて、モンゴルの広大な草原には古代の浮彫石碑や未解明の遺跡が数多く点在しており、そうした遺産に出会う中で文化遺産の保護の重要性を強く実感したとも語っています。

ウランバートルの日本人慰霊碑
撮影:鈴木革/JICA
異国に取り残された同胞に感謝と哀悼を。悲劇を繰り返さぬ誓いと共に。

オーシギーン・ウブル遺跡にある鹿石
撮影:鈴木革/JICA
モンゴル各地に点在する意図も年代も不明な謎の古代列石遺跡。

「歴史と文化をつなぐ」写真の力

現在、鈴木さんが取り組んでいるテーマは「アレクサンドロス大王の東征」です。ギリシアからインドへと続く長大なルートには、多くの遺構が今も残り、東西交流の歴史を物語っています。
「真面目な歴史研究は専門家に任せて、自分は写真や面白いエピソードを通じて、子どもたちが外国の歴史や文化に興味を持つきっかけを作りたい」と鈴木さんは語ります。
写真は単なる記録ではなく、未来への橋渡しの役割も持っているのです。

ウデグラム城砦 (パキスタン・スワート)撮影:鈴木革
鈴木さんの「アレクサンドロス大王の東征」の旅の原点の遺跡。
城砦はイスラム期のものだが、アレクサンドロスの伝説が息づく。

おわりに-写真で感じる世界とのつながり

モンゴルの大地と人々の暮らしを写した鈴木さんの作品を通じて、文化や歴史の奥深さをあらためて感じることができました。過酷な旅路を経てたどり着いた絶景や、現地での出会いの数々は、言葉では語り尽くせないほど心に刻まれます。
今回の写真展を通じて、作品がモンゴルの今を鮮明に映し出し、写真の持つ力が国境や言葉の壁を越え、人々の心をつなぐ架け橋となっていることを改めて感じました。今後も、鈴木さんの写真を通じて、世界とのつながりを感じられる瞬間に出会えることを、心より楽しみにしております。

(執筆:JICA東・中央アジア部計画課インターン 中嶋未来)

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