協力隊経験を、地域と世界をつなぐ力に ― 環境分野で歩み続ける常川さんのキャリア ―
2026.03.13
四国からはこれまで1,810名の協力隊員を派遣しています(2026年3月現在)。 そして、途上国からの帰国後も、協力隊の経験を活かして、四国で活躍している素敵な隊員経験者が多くいらっしゃいます。
四国で活発に活動を行っているNGOの一つ、四国グローバルネットワーク(四国グローバルネットワーク -
)(SGN)代表理事及び環境省とSGNによる「協同」運営拠点の環境省四国パートナーシップオフィス(四国EPO(環境省四国環境パートナーシップオフィス)
)所長の常川真由美さんもそのおひとりです。
青年海外協力隊としての経験を原点に、環境分野で一貫した活動を続けてきた常川真由美さん。現在は四国グローバルネットワーク(SGN)の代表理事として、地域と人、そして世界をつなぐ役割を担っています。協力隊時代から現在に至るまでの歩みと、その想いをご紹介します。
■ 環境問題への関心が、キャリアの出発点
常川さんは高知県出身。子どものころ、とあるテレビ番組に憧れ、世界の出来事に触れることの大切さを感じて育ちました。高校時代には、海洋汚染や生物濃縮、森林破壊など、当時新たに注目され始めた環境問題に強い関心を抱き、「将来は環境問題に関わる仕事がしたい」と考えるようになります。
愛媛大学農学部森林資源学科で森林生態に関する研究をした後、1995年、青年海外協力隊(平成7年度2次隊)としてタイに派遣。東北タイでの植林プロジェクトに携わり、高知県出身100人目の隊員として新聞でも紹介されました。JICA事業の一環として林野庁出向者らとも協働し、官民連携の現場を身近に感じながら、約2年10か月にわたり活動しました。
■ 二度の協力隊経験が培った「協働」の視点
任期終了後も、短期派遣として再びタイへ。ターク県では協力隊員のみで構成されるチームの一員として、村落開発や市場開発を担当しました。
「自分だけが動くのではなく、現地の人たちが続けられる形をつくること」。この時に意識していた“他者を巻き込む姿勢”は、その後の活動の原点となっています。
2000年に高知へ戻った後は、コンサルタント企業等で10年間勤務した後に起業し、事業承継を経て、現在は四国グローバルネットワーク(SGN)(前、えひめグローバルネットワーク)の代表理事を務めています。
■ 人と人をつなぐ、現在の仕事
SGNの代表理事とともに、四国環境パートナーシップオフィス(四国EPO)の所長としても活躍する常川さん。四国各県の環境団体やNPO、企業、行政などをつなぐネットワークづくりに取り組んでいます。
「四国では、担い手不足や人口減少で、地域での環境保全等の活動を続けることが難しい状況を目の当たりにします。課題解決につなげるためには、ネットワークの力が必要」と、実践者をつなぎ、活動を継続できる仕組みづくりを目指しています。
最近、四国でも、その経験や視点を地域活動に活かして、環境分野やNPOで活躍する協力隊経験者(OV)と出会うことが増えました。全国の帰国隊員とのつながりも仕事の励みになっているといいます。協力隊やOVとのネットワークも持続可能な未来を担う地域の力になりうると抱負を語っています。
■ モザンビークと歩み続けるSGNの活動
SGNは1998年からモザンビークでの支援活動を継続してきました。2005年に法人化して以降、モアンバ郡内にある村のコミュニティ・ラーニングセンターの建設・運営を通じた職業訓練や収入向上支援、若者同士の交流促進等、さまざまな分野の協力を行っています。昨年末から今年にかけて、現地は深刻な洪水被害を受けたのですが、日本ではほとんど報道がされていません。現在、有志を募りながら、復旧・復興支援に向けた取り組みを進められています。
また、愛媛県の高校生が「トビタテ!留学JAPAN」を活用してモザンビークを訪れるなど、次世代との交流も生まれています。移動や費用の壁はあるものの、「活動を途切れさせないこと」を大切に、現地との関係を築き続けています。
■ 協力隊経験を、次の世代へ
常川氏は、協力隊で得た視点として、「対等な立場で協働する姿勢」「相手の目線に立つこと」を挙げます。また、協力隊員は柔軟で行動力があり、現場でも評価されていると感じているそうです。
一方で、日本国内でJICA協力隊が十分に知られていない現状にも課題意識を持っています。「小中学生の頃に“知るきっかけ”があるかどうか」。学校での体験談や、年齢の近い先輩からの話、リアルな交流の機会を通して、もっと若い人たちに将来の選択肢を広げていってほしいと語っています。
■ 経験を未来につなぐために
大学在学中の派遣や、大学連携ボランティア、インターンシップなど、若い世代が段階的に関われる仕組みの重要性も提案しています。
「リアルな体験こそが、心に残る」。コロナ禍で失われた体験の機会を、これからどう補っていくか――協力隊OVや地域、教育現場が連携しながら、次の世代へとバトンをつないでいくことが期待されています。
常川真由美さん(右)と三村嘉彦JICA海外協力隊相談役(左)