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JICA海外協力隊60周年にたどる、フィリピン・ベンゲット州と高知県の半世紀

2026.03.16

2025年11月、高知県知事を団長とする訪問団がフィリピン・ベンゲット州を訪れました。高知県とベンゲット州の姉妹交流協定提携が50周年を迎えた記念の訪問です。国際協力の60年の歩みと地域交流の50年。この地で続いてきた高知県とベンゲット州との姉妹交流の原点には、1967年に青年海外協力隊(現JICA海外協力隊)の初期隊員として同州で活動した吉川浩史氏の存在があります。現地での協力隊活動を通じて築かれた関係がその後の交流へとつながり、高知県とベンゲット州の姉妹交流は半世紀にわたり続いてきました。

ベンゲット州庁舎前の記念碑とはりまや橋レプリカ

吉川浩史氏

山道を超えた先に広がる「サラダボウル」

ベンゲット州は、首都マニラから北へ約250キロ、バスで5~6時間を要する標高1,000〜2,000メートルの高地に位置しています。訪問した11月下旬はちょうど田植えの時期で、マニラ郊外の高速道路からは水を張った田んぼの風景が見られました。

高速道路は途中から険しく、くねくねとした山道になります。訪問時期直前に襲った台風の影響でしょうか、山肌には土砂崩れのあとや落石が多く見られました。山道を登り続けベンゲット州に入るとあたりは霧に包まれ、霧の中には急な斜面に家々が立ち並ぶ風景が見えました。ベンゲット州は朝夕に霧が立ちこめることも多く、冷涼な気候のもと国内有数の野菜生産地として農業が盛んに行われ「フィリピンのサラダボウル」とも呼ばれています。州都の市街地から少し足を延ばすと、山地には美しい段々畑が広がっていました。

マニラからベンゲットへ向かう高速道路から見える水田

山道では土砂崩れや落石が見られた

霧が立ちこめるベンゲット州の街並み

斜面に立つカラフルな家

新鮮な野菜が並ぶベンゲット州の物流拠点

ベンゲットの段々畑の風景

記念行事と50年のあゆみ

2025年11月21日、ベンゲット州に到着したその日、ベンゲット州庁舎にて姉妹交流協定提携50周年記念式典が行われました。高知県の訪問団が到着すると、庁舎前でベンゲット州の知事をはじめ議員や州職員が総出で出迎え、民族衣装や伝統の踊りでの大歓迎を受けました。式典の中ではこれまでの50年の歩みを振り返るとともに、次の新たな50年に向けて交流を継続していくことを確認し、分野横断で共に発展を、と姉妹交流協定提携を再宣言。高知県知事とベンゲット州知事が協定に署名を行いました。

ベンゲット州庁舎前での州職員による歓迎

記念式典で姉妹交流再宣言の署名に臨む両知事(左:メルチョル ディクラス ベンゲット州知事 右:濵田省司高知県知事)

記念行事の一環として、「高知県・ベンゲット州姉妹交流公園(通称:さくらパーク)」での植樹も行われました。この公園は今から10年前、交流40周年記念でベンゲット州に桜を植える取り組みが始まって以来、大切に守られてきた場所です。桜は高知県から贈られたものですが、現地の気候への対応が難しく開花時期も安定しないとのことでした。しかし公園は非常にきれいに整備されており、地元の皆さんが長年に渡りこの場所を大切に思い、手をかけ続けてこられたことがうかがえました。今回新たに植えられた桜もまた今後の交流の歩みとともに成長し次の世代へと受け継がれていくことが期待されます。

桜パークで行われた記念植樹(中央左:吉川浩史氏)

公園はきれいに整備されている

州最大の祭り「アディバイ」とサプライズ表彰

ベンゲット州最大の祭り「アディバイ」にも参加しました。「アディバイ」は「集まり」という意味で、州内13の地域の住民が一堂に会する重要な祭りです。各地域から大勢の住民が集まって地域ごとにパレードをしたり、特産品の展示、屋内会場で伝統の踊りが披露されたりしていました。祭りのハイライトでは、13頭の豚がささげられる神聖な伝統の儀式が行われました。豚はその後、会場内で地域ごとに分けて様々な郷土料理に調理され、参加者に振る舞われていました。

ベンゲット州最大の祭り「アディバイ」での豚をささげる儀式

高知県の訪問団は、このアディバイに特別ゲストとして招かれ、式典の場で長年にわたって交流に尽力してきた吉川氏や高知県に対するサプライズ表彰が行われました。多くの関係者が見守る中で贈られたこの表彰は、今も吉川氏の歩みが現地で広く共有され、評価されてきたことを示していました。

アディバイ会場で、長年の功績に対し贈られた表彰

滞在中は、ほかにも様々な行事に参加し、50年の長きにわたって築かれてきた関係をあらためて確認する時間でもありました。

行く先々で、交流のきっかけとなった人物であり、現在は高知県ベンゲット州姉妹交流推進会議会長を務める吉川氏と言葉を交わそうと多くの地元の人が訪れ、思い出話に花を咲かせています。

マニラからベンゲットへの移動の途中には、吉川氏が車窓に広がる風景に目を向け、道沿いの建物や分岐点を指し示しながら過去の出来事に触れる場面もありました。地名や人の名前、60年近く前の協力隊時代のエピソードが自然に口にのぼる様子から、この土地と長い時間にわたって深い関係が続いてきたことが伝わってきました。

吉川氏協力隊時代の思い出の場所のハーフトンネル

地元の人と談笑する吉川氏

草の根の交流が支える絆

この50年の間、高知県は、主に農業分野において、ベンゲット州から研修員や実習生を受け入れてきました。今回の記念訪問では、そうした州政府職員の研修員OBや実習生として高知県で経験を積んだ人々を招いた交流会も開かれました。OBたちはそれぞれ高知県での学びや経験をベンゲット州に持ち帰り、現在は現地の農業や地域社会の中で活かしています。立場や世代、関わり方は異なりますが、こうした人と人との多層的な関わりが姉妹交流を単なる制度や記念行事にとどめることなく、実感を伴った関係として50年にわたって支え続けてきました。そしてこの人の交流はこれまでの50年を支えてきただけでなく、これから先も両地域をつなぎ続けていく基盤となっていきます。 

研修員OBや元技能実習生が集まった交流会

新たな50年へ

高知県とベンゲット州の姉妹交流を支えてきた「高知県ベンゲット州姉妹交流推進会議」は、50年という大きな節目を経て新たな体制へと移行します。これまでに築かれてきた歴史の積み重ねに敬意を払いながら、姉妹交流は次の段階へと歩みを進めていきます。

JICA海外協力隊60周年と高知県・ベンゲット州姉妹交流協定提携50周年という二つの節目が重なったこの年、ベンゲット州で目にしたのは「人の関わりによって受け継がれてきたものがたり」でした。一人の協力隊員が派遣されたことから始まった関係は、多くの人の手を経て形を変えながら続いてきました。そしてその流れは、次の50年へ、新たなものがたりの始まりとして引き継がれていきます

文責:中原和枝(高知県国際協力推進員)

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