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【JICA海外協力隊インタビュー】吉川浩史さん(フィリピン/きのこ栽培/1966年3次隊)高知県とフィリピン・ベンゲット州を結ぶ人生の物語~後編~

2026.03.30

本記事は、二部構成でお届けします。今回は後編となります。前編に続き吉川浩史さん(フィリピン/きのこ栽培/1966年3次隊)にお話を伺います。

高知県・ベンゲット州姉妹県州交流のはじまり

青年海外協力隊(現在のJICA海外協力隊)の任期を終えて日本に帰国し、1969年に海外技術協力事業団(現在のJICA)青年海外協力隊事務局に就職した。国内課に配属され、応募者相談、募集、選考を担当。当時の上司である青年海外協力隊事務局長から協力隊事業をより一層浸透させるよう指示を受け、出身地である高知県に出張し、高知県の担当者と面談した。高知県の協力隊担当者はフィリピンにも寄港する「高知県青年の船」の担当者でもあったことから事業について助言を行った。その縁で「第4回高知県青年の船」に乗船講師として参加した。この際、協力隊時代のカウンターパートである山岳州開発議会議長から「両地域の姉妹交流協定を結んではどうか」との提案を受けた。高知県側に伝えたところ、進めたいとの意向が示され、姉妹交流協定の締結の締結に繋がった。

1975年、「第5回高知県青年の船」がベンゲット州を訪問した時に、同船に乗船していた参加者、ベンゲット州民、多くの関係者に見守られる中で、ベンゲット州知事と高知県知事が協定書に署名し、高知県・ベンゲット州姉妹県州協定 が締結された。以降は、県知事・州知事を含む訪問団による相互訪問や、ベンゲット州からの自治体職員の受け入れ、高知県から農業分野の専門家派遣、ベンゲット州の青年農業者を高知県の先進農家に900名近く受け入れるなど人的交流が長年にわたり続けられてきた。こうした継続的な往来により、両地域の交流は途切れることなく深まり続け、2025年には姉妹交流50周年という大きな節目を迎えた。

2025年11月に高知県の訪問団がベンゲット州に訪問した時の様子

市民の声から始まった高知とベンゲットを結ぶ農業研修

1994年、吉川さんは自分の手で地域開発に取り組みたいという思いから、国際協力事業団(現在のJICA)を退職し、故郷へ戻った。地域に根ざしたまちづくりこそが、自身のめざす「地域開発」であるとの考えのもと、帰郷から1年後、高知県須崎市長選に立候補・当選した。その際、市民からの声で農業現場が人手不足に直面していることを知り、1997年、農業研修員の受け入れに関心を持つJA職員や農家ら16名とともにベンゲット州を訪問した。同年11月には、JA土佐くろしお農業協同組合において農業研修員の受け入れが開始された。

2003年、JA土佐くろしお農業協同組合が農業研修員の受け入れを中止したことを受け、くろしお農業振興協同組合を設立した。これまでに延べ896名(2026年1月16日時点)の農業研修員を受け入れており、現在も受け入れ事業を継続している。

現在の受け入れ農家は約50戸で、主にハウス園芸を営んでいる。栽培作物はミョウガ、ししとう、きゅうり、いんげん、なす、ニラなど多岐にわたる。

人と人とのつながり、その先の未来へ

2015年の姉妹交流40周年を迎える前に、ベンゲット州に姉妹交流公園をつくる計画が始まった。2012年には、高知県から「センダイヤ」と「雪割桜」という桜をベンゲット州に寄贈し、2015年、2016年にも桜の植樹を行った。桜は気候への適応が必要で開花時期こそ日本とずれるが、いまや観光客も訪れるようになった。「桜の花だけじゃなくて、涼しい気候を楽しみに来る観光客の方もいます。日本の“花見文化”とは異なる楽しみ方があるのだと思うと興味深いですよね」と吉川さんは語る。

ベンゲット州・高知県姉妹交流公園を訪問した際の様子

青年海外協力隊としてフィリピン・ベンゲット州に派遣されてから58年。高知県とベンゲット州との姉妹県州協定は、2025年に締結50周年を迎えた。半世紀続いた交流。その中心に、吉川さんがいた。

「高知県とベンゲット州の交流を支えてきたのは、何よりも“人”です。この人と人とのつながりが、これからも途切れることなく続いていくことを願っています。そして、互いに訪れ合う中で得られた知見や経験を活かして、両地域がさらに発展していくことを期待しています。」と吉川さんは語る。

物の往来でも、経済的な利益でもない。人と人がつながること。そのシンプルでありながら力強い価値を、吉川さんの歩みは私たちに教えてくれる。高知県から世界を夢見た一人の少年は、やがて海を越え、フィリピン・ベンゲットの地で活動に打ち込んだ。そこで生まれた交流は、時を経たいまもなお、高知県とベンゲット州を結び続けている。

「人と人とのつながり」を象徴するJICA海外協力隊は、帰国後も途上国と日本の架け橋として活躍し、その経験を活かして社会のさまざまな場面で力を発揮している。吉川さんが築いた交流の礎は、現在も両地域を結ぶ架け橋となり、次の世代へ、そして未来へと受け継がれていく。


吉川さんご本人による自叙伝はこちら
midory|note

関連リンク
フィリピン・ベンゲット州 – 公益財団法人 高知県国際交流協会

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