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【JICA民間連携事業パートナーの想い】“地球を耕す”という挑戦。 スガノ農機の海外展開とこれから

#7 エネルギーをみんなに。
そしてクリーンに
SDGs
#8 働きがいも経済成長も
SDGs
#13 気候変動に具体的な対策を
SDGs

2025.12.23

スガノ農機株式会社

土づくりに特化した農業機械を開発・提供し、国内外で持続可能な農業の実現に貢献する日本の農機メーカー。

#土づくり #地球を耕す #ともにつくる農業

JICA 中小企業海外展開支援事業に採択され、タイでの「東北部における「土づくり」
を通じたサトウキビ、キャッサバの単収増加の為の案件化調査 」を実施した「スガノ
農機」にインタビューしました。持続可能な農業の実現に向けて、現地と真摯に向き合う企業姿勢が強く印象に残りました。

――本日はお時間ありがとうございます。まずは、スガノ農機さんの国際事業部について教えていただけますか?

 はい。海外との協働が増加したことを受け、今年(2025年度)より国際事業部を立ち上げました。JICA との連携事業実施当時は1名だったメンバーも、現在は4 名体制で海外案件に取り組んでいます。

国際事業部長の下田さん

国際事業部長の下田さん

――タイで実施した JICA 中小企業海外展開支援事業では、具体的に どのような取り組みをされていたのですか?

 タイではキャッサバ(※)とサトウキビを対象とした農業支援を行いました。私たちが取り組んでいた地域では、肥沃度の低下や、土を深く耕さないことによる硬盤形成に伴う根張り不足や、水はけ・通気性の悪さなどが課題となっていました。これに対して、弊社の「土づくり」に特化した機械と作業体系を導入いただいた結果、どちらの作物でも収量・品質の改善が確認できました。

※キャッサバ:熱帯地域で栽培されるイモの一種。タピオカの原料。

 現地農家の方々が抱える課題には、価格変動や気象条件など、自分たちでコントロールできない要因も少なくありません。例えば、今年訪問したキャッサバ畑では、連日の雨で畑に水が溜まってしまい、キャッサバの腐敗や、モザイク病の拡大などの問題が深刻でした。これらの外的要因に対しても、根本的には「水が溜まりにくい土壌をつくる」という土づくりの改善が、気象・病害に強い基盤づくりにつながります。

 タイでの事業は、私たちの「外部環境変化に強い土をつくるソリューション」が、収量や品質、ひいては農家の方々の収入向上にもつながる事例となり、とてもうれしく思っています。

――過去にも海外展開はされていたのですか?

 はい。40年以上前にイランやモンゴルでの活動実績があります。現地に滞在しながら機械の組み立て・整備を行ったこともあったと聞いています。

――海外展開には JICA との連携もあったそうですね。

 はい。JICAさんの支援がなければ、海外展開は非常に難しかったと思います。文化、考え方、気候、言語――すべてが異なる環境下で活動するには、企業単独では限界があります。
 ODAにつながる商談も増えてきており、JICAさんの支援事業を活用したタイでの実証結果を示せることが、説得力につながっています。

――現地との協働で、特に大変なことは?

 土の種類や状態、作業体系、栽培作物、設備などが地域ごとに大きく異なる点です。良い土づくりというと「深く耕せばよい」と考えてしまいがちですが、必ずしもそうとは限りません。場合によっては、深耕によって養分が乏しい下層土や砂利・石、時には岩塩に由来する塩分を作土層まで上げてしまい、かえって作物に悪影響を及ぼすこともあります。そのため、農家の方々が栽培している作物、その土地の土質や、気候、作業体制など、様々な要素を現場で確認したうえで、農家の方々と一緒に最適な対応を検討することが不可欠です。
実際に足を運ばなければ、土の状態はもちろん、人々の考え方、暮らしぶりは分かりません。私たちが課題だと考えていても、現地の方は課題と捉えていない場合もあり、そのような状況では当社にソリューションがあってもニーズが存在しないため、事業として展開することは難しくなります。
とはいえ、当社のソリューションに対するニーズは確実に高まってきていると感じています。世界的に化学肥料価格が高騰し、多くの農家にとってコスト削減が喫緊の課題となっています。また、持続可能な農業を推進する政策の後押しもあり、化学肥料の削減や不使用に取り組む農業が注目されています。当社は有機物を循環させ、土本来の力を引き出すための製品と作業体系を提案しており、こうした理由から、海外から連絡を頂く機会が増えたのではと考えています。

 だから私たちは「もの売りではなく、こと売り」を大切にしています。単に機械を売るのではなく、「どのように使うか」までを現地でご提案させていただき、活用していただいています。
ただ機械を届けるのではなく、一緒に作業し、一緒に考え、一緒に成果をつくる。この姿勢が、大切なのではないかと考えています。

――今後の展望についても教えてください。

 最近は中国、マレーシア、パプアニューギニアを含むアジア諸国などからの問い合わせが増えています。多くの地域において、肥料・燃料価格の高騰や食料安全保障の向上といった共通課題があります。
農業は、短期的な利益ではなく、長く作物をつくり続けることが本質です。だからこそ、私たちは機械だけでなく作業体系をもって、「土中環境の改善」に貢献していきたいと考えています。
 「世界の農業のためにできることをする」
 この想いを胸に、これからも地道に取り組んでまいります。

インタビュー後記
海外からの依頼を受け、現場に足を運び、土を見て、人と話し、試行錯誤しながら農業を支えるスガノ農機さん。その姿勢からは、単なる“農機メーカー”の枠を超えた、「未来の農業」への情熱を感じました。(JICA 筑波インターン生・小俣ゆうか)

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