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【JICA草の根技術協力事業パートナーの想い】
突然死を救いたい。ラオスの命を守る仕組みづくりを目指して
筑波大学医学医療系 救急・集中治療医学 客員研究員
鈴木貴明さん

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs
#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs

2026.01.16

集合写真

JICA草の根技術協力事業として、ラオス・ビエンチャンで救命救急体制の強化に取り組んだ「SAFER」プロジェクトのリーダーを務めた鈴木貴明さんを取材しました。住民主体の仕組みづくりを目指し、医療従事者や救急隊と丁寧に対話を重ねる姿勢が印象的でした。今回は、鈴木さんの歩みと国際協力に込めた想いを伺います。

#救急医療 #いのちをつなぐ #ラオス #草の根

国立大学法人 筑波大学

2017年からラオス・ビエンチャンで救命救急支援を実施。JICA草の根技術協力事業「交通事故から住民の命を守る救命救急活動支援プロジェクト(協力期間:2021年6月~2024年7月)」の実施団体。病院前救護や外傷診療の指導、救急車の動態管理システムといったICT支援などの協力を実施し、国立病院とも連携した取組を展開。今後も救急隊の支援などを通じて、救急医療の高度化と交通事故削減を目指す。

鈴木 貴明さん

本プロジェクト(略称:SAFER「Project for S topping the A ccident F atality rise by E MS development and R oad safety」)のプロジェクトマネージャーを務めた。
筑波大学医学医療系 救急・集中治療医学 客員研究員
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター附属久高診療所 所長

鈴木さん写真

─ 学生時代にどのようなことをされていましたか?

学生時代は硬式テニス一筋でした。勉強は「ほどほど」という感じでしたが、大学5年生の冬休みに、国際医療NGOジャパンハートの学生部会を通じて、ミャンマーを訪問しました。これが海外医療・国際協力と初めて関わる体験でした。

─ 国際協力に興味を持ち始めたきっかけを覚えていますか?

家族の影響が大きかったです。父は途上国の開発に関わり、姉はアフリカで教育支援をしていました。日常の会話で国際協力の話題が出ることもあり、大学では医師を目指しながら、「医療 × 国際協力」の可能性を探すようになりました。

─医療分野を選ばれた理由を教えてください。

中学生の時、テニス仲間が練習直後に突然亡くなったことが衝撃でした。当時、日本ではAEDの一般使用が認められておらず、「突然死を救う仕組みが弱い」と感じました。そこから「命をつなぐ救急医療」に強い関心を持ち、「大切な人が突然目の前からいなくなる」という事象に最もアプローチできる救急医療を、最終的に選びました。

─ ラオスでの活動を始められたきっかけは何ですか?

大学卒業後は、国立国際医療研究センター(現:国立健康危機管理機構)で働きました。5年ほどたった2015年に、「国際医療協力レジデント研修」でラオスを訪れたことが直接のきっかけです。現地で、医師・看護師対象の病院前(プレホスピタル)医療教育をしていた際、ボランティアで構成された「救急隊」の存在を知りました。日本にはない仕組みで驚きましたし、救急隊の抱える障壁や病院との連携の課題に触れたことで、活動を拡げる決意をしました。

─ JICAとの共同事業について教えてください。

「草の根技術協力事業」に応募し、約3年間ラオスの首都ビエンチャンで、救急隊や病院と一緒に活動しました。具体的には、救急車の動態管理システム患者データの収集を通じ、効率的で連携の取れた救急医療体制の構築を目指す事業です。複数の救急隊・病院を巻き込み、地域に根ざした住民主体のモデルづくりを目指しました。

JICAとの連携によって得られた一番の成果は、プロジェクトの信頼性が高まったことです。JICAが築いてきた現地での信頼関係により、行政や医療機関との調整がスムーズになりました。また、予算や進行管理の体制が整い、病院、救急隊、保健省など、複数のアクターを巻き込む協力体制を築けました。

(日本専門家と救急隊の打ち合わせの様子)

(日本専門家と救急隊の打ち合わせの様子)

─ 事業の中で発生した困難はありますか?

事業を進める中で、ラオスの制度面の壁や病院との連携不足、ボランティアに依存した運営体制など多くの課題が見えてきました。関係者との対話を重ねてルールを整備し、位置情報システムの導入でコスト削減にも取り組みました。特に困難だったのはコロナ禍の時期でしたが、JICAとの連携があったことで現地に入れない中でも計画を維持することができました。オンラインでのフォローアップや現地スタッフとの信頼関係が機能し、継続的な取り組みにつながりました。

─ 今後どのようなことを行っていきたいと考えていますか?

現在、トヨタ財団の支援を受け、住民主体の救急搬送体制をモデル化し、他地域でも展開できる仕組みづくりを目指しています。データ活用による政策提言や、地元人材育成にも注力し、最終的にはラオス政府の制度に組み込む形で、持続可能な体制を構築したいと考えています。

ビエンチャン救急隊のメンバーとの写真(2025年2月)

ビエンチャン救急隊のメンバーとの写真(2025年2月)

─ 国際協力に関わる若者に向けて伝えたいことはありますか?

完璧な環境が整っていなくても、まずは現場に身を置いて学んでほしいと思います。ないものを嘆くより、あるものを見つけて活かす姿勢が大切です。日本・途上国、都市部・離島などの過疎地域、どこにいても共通する課題はあります。自分の立場やリソースでできることから始めてください。

(インタビューの様子。画面下部が鈴木先生。右上がJICA筑波担当者の波多野職員。左上がインタビュアー小俣。 )

(インタビューの様子。画面下部が鈴木先生。右上がJICA筑波担当者の波多野職員。左上がインタビュアー小俣。 )

インタビュー後記:
鈴木先生の言葉「ないものを嘆くより、あるものを見つけて活用する」が心に残りました。開発途上国への支援と聞くと、新しいものを持ち込むことに目が向きがちですが、現地の資源や人材をどう活かすかという視点こそ、持続可能な支援の鍵だと実感しました。
(JICA筑波インターン生小俣ゆうか / 筑波大学国際総合学類2年)

関連情報
SAFERプロジェクトSAFER Project | SAFER Project | 交通事故から住民の命を守る 救命救急活動支援プロジェクト
草の根技術協力事業 | 事業について - JICA

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