【JICA民間連携事業の事例紹介】
2026.04.02
安全で安心して飲める水を、誰もが利用できることの重要性に着目し、JICA中小企業海外展開支援事業を活用して、 バングラデシュの水問題の解決に向けて挑戦する企業の取り組みを紹介します。
現在、日本では「きれいな水」が水道をひねれば誰でも使え、飲める環境にありますが、バングラデシュの地方エリアではそもそも水道もなく、きれいな水は井戸からしか供給されていないことが多いです。そのような中、茨城県つくば市に事業所を構える日本国土開発株式会社(JDC)は「その井戸の水でもヒ素が混入している」ことを住民に認識してもらい、安心安全でおいしい飲み水を提供できるよう、日本の民間技術の普及をバングラデシュ政府、地方自治体と共に進めています。
バングラデシュには、安全な水が不足する村落がまだあります。「バングラデシュ国「JaPani」システムによる安心安全な飲料水を提供可能にする分散型地方給水事業のビジネス化実証事業」では、JDCが開発したヒ素その他を取り除くことができる浄水資材機能性吸着剤「JaPani(ジャパニ)」を活用し、処理した安全な飲料水を安定的に供給する仕組み作りに取り組んでいます。1拠点あたり 1 日 8,000L の安全な飲料水を安定的に供給し、段階的に広く行き渡ることを目指しています。
【JaPani実証プラントの現地調査の様子】
【JaPaniを用いたヒ素除去システムのフロー図】
一方で、現地で水道行政を担当する公衆衛生工学局は、水処理施設の運営・維持管理の問題を抱えていることから、施設が壊れても維持管理に必要な資金がなく、放置されることがあります。このため、現地の事業者を含めた飲料水供給の仕組みを構築することが、運営・維持管理の負担を減らすことにつながり、それは新たな価値にもなります。
バングラデシュにおける安全な飲料水への需要の背景
バングラデシュではヒ素汚染が広まっており、全国の井戸の約 10%から基準のヒ素濃度を上回る汚染が確認され、とりわけファリドプール県、ゴパルゴンズ県、ジョソール県、マダリプール県、シャトキラ県の 5 県で高い汚染が確認されました。これらの地域の総人口は約 56 万人です。
【トラック配送による販売】
【プラント直営による販売】
【ブースによる販売】
5県のうち、貧困度が比較的低く、お金を払って水を買うことができる住民が一定数存在し、JaPaniの適性の高い塩分濃度の低い水のある地域としてファリドプール県とマダリプール県を特定し、JaPani処理水への購買意欲も確認できました。ヒアリングを行った住民の20%は、20リットルあたり30~ 40バングラデシュタカ(39円~51円相当) の販売価格で買いたいと希望しています。伝統的な処理方法のヒ素・鉄除去プラントが、鉄とヒ素の両方が高い水の処理に適しているのに比べ、JaPaniはヒ素のみが高く検出される水にも適しています。
安全な井戸がある地域や雨水をためて使える時期には、住民のJaPani処理水の購買意欲は低くなることも分かりました。ヒ素に汚染された地域でも、「低濃度で安全な井戸」と「高濃度で危険な井戸」があり、雨季には雨水をためた水も飲んでいるのです。
ヒ素は無味無臭であるため、鉄の味がしないヒ素汚染水を生活用水や飲料水として使用することに対して、住民の多くは抵抗を感じない傾向があります。このためヒ素の健康へのリスクについての普及はかつてほどには行われていません。
【水の安全性と製品の効果を普及するリーフレット】
「きれいな水」が当たり前でない場所に、「きれいな水」を届け、「きれいな水」の重要性をバングラデシュの方々に理解いただく。
日本と国旗が似ている隠れた親日国で日本企業ができることを模索しながらバングラデシュの皆様と一緒にバングラデシュの生活の質の改善に努めていきたいとJDCは考えています。
今後、政府の許認可や資金の確保に加え、現地の住民のヒ素に対する理解を深めていくことがこの取り組みを持続的に進めていくための重要なポイントとなります。 JDCは同社の技術を用いて、他の開発途上国への展開も視野に入れ、引き続き水・環境問題の解決に取り組んでいきます。
JICAの中小企業・SDGs支援事業(JICA Biz)では、途上国ビジネスに精通したJICAコンサルタントが伴走し、採択企業の挑戦をサポートしています。海外展開や国際協力に関心のある企業の皆さま、自社の技術やサービスで途上国の社会課題解決に貢献されたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
関連リンク
民間連携事業
https://www.jica.go.jp/activities/schemes/priv_partner/index.html
日本国土開発株式会社が実施したビジネス化実証事業 調査完了報告書
Bz231-035_report.pdf