jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

デジタル×イノベーションで新しいモンゴルを共創する

2023.10.25

サムネイル
モンゴル事務所 所長 田中 伸一

モンゴル。チンギス・ハーンが築いた史上最大の帝国として、また最近では某TVドラマを撮影した国として、その名を知る方は多いと思います。
広大な国土(日本の約4倍の面積)、豊かな自然に恵まれた内陸国で、日本からは約5時間のフライトで行くことができます。
東欧諸国と同様、1990年代初頭に民主化、市場経済化へ舵を切り、JICAはその時期から積極的な協力を行ってきました。
人口は約340万人と少ないのですが、日本への留学経験者や日本語が堪能な人が多く、親日的な国です。

デジタル化の推進

モンゴルは、石炭、銅等の天然資源が豊富な国ですが、それらに大きく依存した経済構造となっているため、マクロ経済は不安定です。強靭な経済構造に転換するため、鉱業以外の産業の育成が重要な課題となっています。
モンゴルでは現在、重点産業として、農牧業、観光業等に加えて、デジタル産業の振興に取り組んでいます。モンゴルは、内陸国である上、市場規模が小さいため、東南アジアで見られたような、自動車メーカー等先進国企業のサプライチェーンの展開を通じた製造業の育成は容易ではありません。従って、モノの輸出入が不要で、海外市場への展開も容易であり、ビジネスの立上げ時に多額の資金を必要としないデジタル産業が、有望な産業として注目されています。
モンゴルには、デジタル産業を支える人材が豊富です。モンゴル人は、数学が得意で、起業家精神も旺盛です。また、首都ウランバートルには、3つの日本式の高等専門学校が設立され、日本語教育も実施されており、近年多くの卒業生がエンジニアとして日本で就職しています。
こういった背景を踏まえて、JICAはモンゴルのデジタル分野で以下のような取組みを行っています。
まず、起業家支援プログラムであるMONJAの実施です。モンゴルのデジタル産業のけん引役であり、社会的ビジネスを展開するスタートアップを育成するアクセラレーションプログラムを、モンゴル通信大手MOBICOM社及びモンゴル日本人材開発センターとともに実施しています。
次に、DXCUPの開催です。日本で開催されている、高等専門学校の学生を対象としたディープラーニングコンテストを参考に、モンゴルでも、学生向けのデジタル技術を活用したビジネスプランコンテストを実施しています。
また、デジタル分野における人材の就職セミナーや、日本とモンゴルの企業間のビジネスマッチング(日本モンゴルそれぞれで開催)、モンゴルの電子政府化の取組みの基盤であるE-Mongoliaを通じて得られるビッグデータの官民での活用促進等も実施しています。
こうした取組みを通じて、デジタル産業がモンゴルにおける主要産業となること、デジタル技術の活用がモンゴル全体に普及することに期待しています。

イノベーション、共創、協働が起きる仕掛けづくり

モンゴルの若者と話をすると、国のため、将来の世代のために何か貢献したいという強い思いを感じます。また、モンゴル人は起業家精神が旺盛で、数多くのスタートアップやNGOが誕生しています。
モンゴルの抱える社会課題の解決に向けて、モンゴル人同士の連携や協働が強く期待されるところですが、あいにくそれらについて十分に行われているとは言い難い状況です。
こうした状況を踏まえ、モンゴルにおける社会課題を抜本的に解決するためには、スタートアップを含む企業、NGO、教育研究機関等が、お互いの技術、アイディア、ネットワーク、更には資金も含めて、リソースを持ち寄って、イノベーティブな解決策を共創し、協働して取り組むことが重要と考えました。そのための具体的なプログラムとして、Mongolia Open Innovation and Co-creation for SDGs(MICS)2023を実施しています。日本・モンゴル両国の幅広い関係者の参加を得て、8月に開催したイベントを通じて、社会課題をイノベーティブに解決する10の協働プロジェクトが誕生しました。今後、これらの実施促進を通じて、多様な関係者によるイノベーション、共創、協働の成果と意義を広く共有しつつ、モンゴルのSDGsの達成を目指していきます。

新しい協力のあり方

デジタル技術は、分野横断的な技術であるため、多くの分野において活用可能であり、開発途上国においてリープフロッグ的な発展を実現する可能性を秘めています。また、社会課題が複雑化し、開発のための公的な資金も限られる中、MICSのように、多様な関係者が技術、資金等のリソースを提供し合い、イノベーティブな解決策を共創し、協働で取り組むことの必要性は確実に高まってきていると思います。このMICSのような取組みを推進しつつ、その中でデジタル技術のポテンシャルを引き出して活用できれば、社会課題の抜本的な解決、SDGsの達成に大きく近づけるのではないか、と考えているところです。
最後になりますが、12月7~9日に、JETRO主催、モンゴル日本人材開発センターとJICA共催で、日本のデジタル企業のモンゴルITミッションが開催されます。この期間に、上記のMICSの中間報告会(10の協働プロジェクトによるピッチ)、第3回MONJAの最終報告会(アクセラレーションプログラムを受けた3つのスタートアップによるピッチ)、第3回DXCUP(約10の学生チームによるピッチ)の集中開催も予定されています。ご関心のある方は、同ミッションにぜひご参加ください(詳しくは上記リンクをご覧ください)。

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn