COP28を終えて:サステナビリティ推進による新しい価値

#13 気候変動に具体的な対策を
SDGs
#7 エネルギーをみんなに。
そしてクリーンに
SDGs

2024.02.08

サムネイル
企画部 サステナビリティ推進室 調査役 髙橋 良輔

 昨年末、初めてドバイに出張しました。2023年11月30日から12月13日までアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイにおいて国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が開催されたためです。このブログでは、同会議の結果を振り返り、気候変動を軸にJICAのサステナビリティ推進の柱の一つである「新しい価値」の創出について考えをまとめたいと思います。

COP28会場

COP28の振り返り

 COP28においては、日本でも報道された通り、損失と損害(ロス&ダメージ)に対応するための基金を含む新たな資金措置の制度の大枠の決定やエネルギーシステムにおける化石燃料からの移行を含む合意がなされた他、「世界全体での再生可能エネルギー3倍・エネルギー効率改善率2倍宣言」、「原子力3倍宣言」といったイニシアティブの発表がありました。日本政府からは岸田総理も出席され、12月9日にはJICAによる貢献策も含む「世界全体でパリ協定の目標に取り組むための日本政府の投資促進支援パッケージ」が公表されています。
 JICAからは武藤Chief Sustainability Officer(CSO)を筆頭に多くの職員が参加し、サイドイベントの開催や登壇に加え、バングラデシュ向けの気候変動対策に係る資金動員を促進するプラットフォーム設立等の国別の取り組みの打ち出しも行いました。また、COP28に先立つ10月末には、JICAは全新規事業をパリ協定に整合する形で実施することを目指す等、具体的な目標や方向性を含むサステナビリティ方針を公表しています。

 COPについては、成果文書採択に向けた国家間交渉にメディア等からの注目が集まりますが、会場内外で行われる様々なアクター(サステナビリティ領域の議論を牽引する民間企業やフィランソロピー1等)の活発な交流も重要な要素です。例えば、会場内の公式イベントやシンガポールパビリオンでは、官民の関係者がカーボン・クレジットやブレンデッド・ファイナンス2を活用した石炭火力発電所の早期退役に向けた議論等が展開された他、会場外でも官民が集うラウンドテーブルなどが開催されました。私自身もそうした会場内外でのイベントや会議に参加し、様々なアクターが気候変動対応を目指すダイナミズムを肌で感じました。

  • ※ 1公共的な利益のために寄附・助成・投資等を自発的に行うこと、また、そうしたことを行う財団等のこと。
  • ※ 2公的資金と民間資金を組み合わせた新しい金融手法のこと。

サステナビリティと「新しい価値」

 気候変動への対応などを通じてサステナブルな社会を目指していくことは世界のメガトレンドである一方、現状の技術やスピード感、規模感でそれを実現することは容易ではありません。この困難に立ち向かうことが、開発協力が「新しい価値」を生み出す機会になり得ると考えています。米国のインフレ抑制法や日本のGX推進法に代表されるように、各国が再生可能エネルギー、蓄電池、炭素回収等の幅広い分野に大規模な支援が行っていますが、開発協力を通じて、民間企業を含む様々なアクターと協力し、気候テック、イノベーション、ブレンデッド・ファイナンスといったバズワードの世界での実装に貢献し、国内外に活力を生み出すことが出来れば、「新しい価値」になるのではないかと考えています。資金協力や技術協力等の幅広いスキームを有し、民間資金動員に寄与することが出来るJICAであれば、その価値を生み出すことは可能なはずです。また、カーボンニュートラルに向けた移行(トランジション)においては、様々な課題に対処することも重要です。例えば、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の更なる実装に際しては、地政学的リスクも踏まえた鉱物資源の安定的確保のためのサプライチェーン強靭化や影響を受ける産業の労働者を含む公正性という観点での対応が課題として挙げられます。こうした観点を踏まえ、複合的な課題に取り組むことは日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」にも貢献するものであり、外交的な価値にも繋がると考えています。

UNITE. ACT. DELIVER.

COP28会場に出展された植物工場(民間企業のもの)

 最後に、教条的な気候変動対応に関する議論は「やらされ感」に繋がるため、人の心を動かす取り組みに目を向けることも重要である点をお伝えしたいと思います。例えば、COP28では、気候変動の影響を受けにくい植物工場が会場でも展示された他、気候変動にテクノロジーで取り組む多くのスタートアップ企業が参加しました。私自身もCOP28の会場で様々な低炭素テクノロジーを見聞きしましたが、気候テックや低炭素テクノロジーのように人々が関心を強くするストーリーを見つけ、多くの人に知ってもらうこともサステナビリティ推進の更なる機運醸成に繋がる重要な取り組みだと考えています。

 COP28のスローガンは気候変動の危機に対して団結して行動し、実行可能な解決策を提供するという「UNITE. ACT. DELIVER.」でした。様々なパートナーと、それぞれのリソースを持ち寄り、共創を進めていくことで、サステナビリティ推進による「新しい価値」の創出が進むと考えています。開発途上国のトランジションへの貢献に向け、これからも尽力していきます。

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