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太平洋を越えてつながる日本とペルーのBOSAI

#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#13 気候変動に具体的な対策を
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2026.06.18

サムネイル
ペルー事務所 佐谷 孝行

太平洋を越えた日本とペルーの意外な共通点

南米ペルーと聞いてみなさんはどんなイメージを思い浮かべますか?
マチュピチュなどの世界遺産やセビーチェをはじめとした美食の国をイメージする方も多いかもしれません。その一方で、日本との意外な共通点として挙げられるのが地震大国であるということ。特に人口の約3分の1を占める首都リマでは、今後大規模地震の発生が懸念されており、都市における地震被害の削減や事前の備えが重要な課題となっています。こうした課題に取り組むべく、JICAペルーでは防災を重点分野の一つとして、さまざまなプロジェクトを実施してきました。私は現在、この防災分野の案件をJICAペルー事務所で担当しています。昨年10月に着任して半年ほどですが、すでに震度2~3の地震を何度か体感し、日本と同様に日頃からの備えや防災教育の重要性を改めて実感しています。

写真上:急な斜面に無許可で建てられたレンガ造りの家々、写真左下:リマ沿岸部にある津波危険区域を示す標識、写真右下:リマ沿岸部の風景

日本の協力がきっかけで誕生したペルー初の地震研究機関

ペルーには、日本との防災協力の象徴といえる研究機関があります。1986年に誕生し、今年で創立40周年を迎える「日本・ペルー地震防災センター(通称CISMID)」です。誕生の背景には、1970年にペルー北部のアンカシュ州で発生した大規模地震があります。この災害により甚大な被害が生じ、地震に強い建物づくりや都市防災の必要性が強く認識されました。これを受けて1984年にペルー政府から日本政府に協力要請が出され、JICAは専門家の派遣や研究機材の供与を通じたCISMID設立を支援。それから現在に至るまで、CISMIDは日本の協力と共に発展を遂げてきました。

ゲートを通ると迎え入れてくれるCISMIDモニュメントとセンター正面

地震で建物にかかる力や耐震性能を調べる構造実験棟

日系人と共に歩んできたCISMID

CISMIDの初代所長を務めたのは、日系2世のフリオ・クロイワ博士です。ペルーで生まれ育った博士は、後にCISMIDが設立されるペルー国立工科大学を卒業後、日本の地震工学を学ぶため、茨城県にある国立研究開発法人・建築研究所の研修に参加しました。その後はCISMIDを拠点に、半世紀以上に渡ってペルーの地震・津波被害軽減の研究に尽力しました。

クロイワ博士は2019年に逝去し、私は直接お会いすることはできませんでした。しかし、CISMIDの先生方と関わる中で感じる日本への信頼や友情からは、地震研究の第一人者として歩み続けたクロイワ博士の存在の大きさを、今も強く感じます。

CISMID初代所長を務められた フリオ・クロイワ博士

CISMIDが紡いできた知見と人材

設立から40年にわたり、CISMIDは研究だけでなく人材育成でも重要な役割を果たしてきました。クロイワ博士をはじめ、多くの研究者が日本での研修や大学院留学を経験し、その学びをCISMIDでの研究や次世代育成に活かしてきました。こうして蓄積されたCISMIDの知見は、ペルーのみならず、他の中南米各国にも広がりを見せています。同じように地震などの災害リスクを抱える中南米諸国から行政官や技術者を招き、「地震や災害にどう備えるか」を学ぶ研修プログラムが、1989年からJICAの協力のもと続けられています。

CISMIDが培ってきた日本の地震防災技術や経験は、この研修を通じて周辺国にも広がり、中南米地域全体の防災力向上にも大きく貢献しています。

中南米各国から参加者が集うCISMIDの地震工学研修

日本とペルー、ともに歩み続ける次の10年へ

現在、ペルーは急速な都市化に加え、エルニーニョ現象による豪雨や洪水など、新たな災害リスクへの対応も課題となっています。災害のリスクが複雑化する中、防災に求められる役割もさらに広がっています。こうした中、CISMIDはこれまで培ってきた防災・耐震工学の研究成果を活かしながら、被害をより迅速に把握し、実際の防災対策につなげる研究にも力を入れています。

2021年からは、JICAの科学技術協力(SATREPS)の一環として、日本の研究機関とともに新たな取り組みを進めています。それが、災害発生直後に学校や駅などの被害状況を速やかに収集・分析し、行政機関へ共有する「リアルタイム災害情報統合システム」の開発です。

地震発生直後から被災者の救助や支援を迅速に開始すること、そして将来の被害軽減につなげることを目指し、CISMIDと日本の知恵や技術を組み合わせた協力が今も続いています。

CISMIDの40周年は、これまでの歩みを振り返る節目であると同時に、次世代とともに新たな課題へ挑む出発点でもあります。同じ災害リスクを抱える日本とペルーを結んできた防災協力は、これからも時代の変化に向き合いながら、人々の命と暮らしを守る力として進化し続けていくでしょう。

現在CISMIDで実施中のSATREPSプロジェクト関係者達(右から2番目はCISMID教授で同プロジェクトリーダーを務めるカルロス・サバラ教授)

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