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ボツワナ観光の可能性を探る

#9 産業と技術革新の基盤を作ろう
SDGs
#15 陸の豊かさも守ろう
SDGs

2026.06.26

サムネイル
ボツワナ支所、正木 幹生

有名観光地に囲まれたボツワナ

みなさんは、「ボツワナ」と聞いて、どのような場所を思い浮かべますか?世界陸上の金メダルやダイヤモンド産出国として知っている人もいるかもしれませんが、観光地が思い浮かぶ人は少ないでしょう。ボツワナの周辺国には、例えばナミビアのナミブ砂漠、南アフリカのテーブルマウンテン、ザンビアとジンバブエにまたがるビクトリアの滝など、日本人にもよく知られた観光地があり、ボツワナにも知られざる観光地があるはずです。

私は2023年4月にボツワナへ赴任し3年にわたり観光案件を担当しており、ボツワナ国内外のさまざまな観光地を訪れました。改めて、ボツワナの観光業の魅力や戦略を考えてみたいと思います。

ダイヤモンド博物館視察中の筆者

野生動物と自然資源に立脚したボツワナ観光

ボツワナ政府は、天然ダイヤモンドに依存しない経済づくりを掲げており、観光はその中核分野の一つと位置づけられています。観光業の基盤となっているのは豊かな自然環境と野生動物です。特に北部のチョベ国立公園は、ライオンやゾウ、ヒョウなどに出会える可能性のあるサファリツアーが人気で、周辺国とつながる観光ルートの一部となっています。公園周辺ではキリンやシマウマなどに遭遇することも珍しくなく、陸上と水上のサファリを短時間かつ安価に気軽に楽しめる点は大きな魅力です。しかし、こうした観光は「見る」ことに重点が置かれ、ボツワナ独自の地域社会や文化に触れる機会は限られており、改善の余地があるものです。

サファリツアーで見たライオン

チョベ国立公園の象

チョベ国立公園に向かう途中で見かけたキリン

チョベ国立公園の外で見かけたシマウマの群れ

エコツーリズム

そこで、JICAは、観光ルートであるチョベ国立公園の周辺地域に暮らす住民の伝統的な食文化やバスケット作り、民族舞踊といった文化に触れられる体験型のエコツーリズム開発に取り組み、地域住民とともに、案内板の設置や写真映えするランドマークの整備を行いました。プロジェクト終了から1年以上が経過した今日、徐々にではありますが訪問者も増え、サファリ体験にとどまらないチョベでの「体験する」観光の可能性が見え始めています。

プロジェクトで設置したランドマークと筆者

プロジェクトで設置したサインボード

伝統的なダンス

観光地としてのカズングラ橋

サファリツアー以外の新たな観光資源として、2021年、チョベ国立公園周辺に完成したカズングラ橋もあります。この橋はJICAとアフリカ開発銀行の協力によって整備したもので、ボツワナとザンビアを結ぶ橋です。この周辺地域はナミビアやジンバブエとも国境を接する特殊な地理条件にあり、両国の国境が150~300メートルという極めて短い区間で接する珍しい場所です。国境は目に見えませんが、橋自体が美しい曲線を描いていて、写真スポットとしてお薦めです。

橋完成まで利用していたフェリーとカズングラ橋

毎年2月にはカズングラ橋マラソン大会が開催されており、「国境を走って渡れる」というユニークな体験ができます。こうした取り組みは従来のサファリツアーのような「見る」観光資源とは異なるものであり、「カズングラ橋の建設に日本も関わっている」という点を日本人向けに広報すれば、国際協力の側面も感じられる観光資源となります。

観光分野の協力

JICAは2024年9月から観光アドバイザーを派遣し、観光統計の整備や観光コンテンツの開発に取り組んでいます。観光コンテンツの開発では、チョベ国立公園ほどには観光ルート化されていないマカディカディ塩湖・ナタ地域を対象に、新たな観光の魅力づくりを支援しています。マカディカディ塩湖は世界最大の塩湖として知られていますが、現時点では訪問者数は限定的です。こうした中、塩湖でのガイドによる星空観察体験など、地域の特性を活かした体験プログラムの開発を進め、より魅力的な観光地となることを目指しています。

ボツワナの食文化

一方で、ボツワナには独自の食文化が根付いています。伝統料理の代表であるセスワ(塩だけでシンプルに煮込んだ肉料理)は、素材の味を活かした素朴な味わいが特徴で、家庭や行事の場で親しまれています。また、地域の屋台では、日常の食文化に触れることができる点も魅力の一つです。さらに、ボツワナ牛のステーキや地ビールなど、地元の食材を活かした飲食も楽しむことができます。

土産品としては、マルーラを使ったジュースやジャム、オイルなどの加工品のほか、オカバンゴ地域のビールやジンなどもあり、地域の特色を感じられる品がそろっています。

マルーラの実

マルーラの実で作ったジャム・ソース

マルーラオイル

観光の多様化に向けた視点

このように、ボツワナの観光は野生動物など「見る」資源に強みがある一方で、「体験する」「食べる」といった要素については、その魅力を十分に発信しきれていない側面もあります。エコツーリズムや国境を歩いて渡るという珍しい体験、ボツワナ牛のステーキや地ビール、地域に根差した食文化といったボツナワならではの観光資源をどのように観光コンテンツとして磨き上げ、発信していくかが今後の課題といえます。
また、観光の魅力を高めるうえでは、コンテンツの開発に加え、それを支える人材の育成や運営体制の強化も重要です。ボツワナではエコツーリズムや地域主体の取り組みが進められており、こうした分野における人材育成や能力強化は、国際協力の重要な役割の一つとなっています。

アクセス面での制約といった課題はあるものの、既存の観光資源を活かしながら、多様な体験を提供できる観光のあり方を検討していく余地があります。

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