ブラジル「医療アクセス改善事業」に対する出資契約の調印(海外投融資): AIを活用した効率的なオペレーションにより、低中所得者向けプライマリケアを提供するヘルステック企業へのインパクト投資

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2023.08.14

国際協力機構(JICA)は、8月7日、ブラジルの医療保険会社ドトル・コンスルタ社に対する出資契約に調印しました。JICAの出資金は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注1)に貢献する当社の取り組みを一層拡大させるための医療機器や設備投資費用等として活用されます。

ブラジルでは国民皆保険制度(SUS)が存在しますが、同国の恒常的な財政赤字による予算不足等により、SUSが適用可能な公的・民間医療機関(SUS適用病院)の受入れ能力は限られています。SUS適用病院での平均待機時間は、コロナ禍で延期されていた医療処置も含め、300-400日程度に達します。このため、一定の所得を有する層は、民間の医療保険に自らまたは雇用主を通じて加入し、SUSを介さずに民間医療を受けています。他方で、民間の医療保険を負担する余裕がなく、SUSのみでは十分な医療を受けられていない低中所得者層が1億人以上存在すると言われています。

クリニック概観

診察前相談カウンター

ドトル・コンスルタ社は、このような公的・民間医療保険制度の間に零れ落ちている低中所得者層にプライマリケアを提供しています。当社は、医師の家系に生まれ投資銀行等で経験を積んだThomaz Srougi氏が2011年にブラジル・サンパウロ州の貧困街ファベーラで医療クリニックを開設して創業されました。低中所得者層が物理的・価格的にアクセスできるプライマリケアの実現を目指し、疫学・人口動態・リソース共有等の観点から綿密に計画された28か所のクリニック及びオンラインにおいて、計250万人分の患者データから自社開発したAIアルゴリズムを用いて効率的な医療オペレーションを築いています。また、国際基準に基づいて医師と作成した300以上の診療ガイドラインをデジタル化して運用し、ガイドライン遵守を医師の報酬と紐づけるとともに、日本製の医療機器も多く活用し、高い医療の質を保っています。患者が一定の料金を払えば周囲の友人・家族4人まで割引価格の医療を受けられるサブスクリプションサービスや一定の保険料を支払えば無制限に医療を受けられる低価格帯の医療保険を開始する等、患者の多様なニーズに応えるメニューを充実させ、年間70万人の患者に60以上の専門診療と検査を提供しています。このような工夫により、医療費を下げ、待機時間を即日アポイントメントも可能な程短縮することに成功し、患者満足度は公的病院の約2倍に達します。

本出資は、ドトル・コンスルタ社によるシリーズD(注2)資金調達ラウンドに参画するものです。本ラウンドは、中南米最大の地場投資会社でありブラジルのヘルスセクターでIPO・M&A経験が豊富なPatria Investments Ltd.傘下のグロース・エクイティ・ファンドであるKMP Holdings Cayman, LLCによるリードの下、中南米の地域開発金融機関であるIDB InvestとJICAが協調投資を行うものです。IDB InvestとJICAの協調投融資枠組み(CORE:下記リンク参照)に基づく案件であり、JICAにとって、中南米初の直接出資案件になります。これからもJICAは現地に根差すパートナーとともに、ドトル・コンスルタ社のような革新的なビジネスモデルでUHCを目指す企業を支援し、SDGsゴール3(全ての人に健康と福祉を)及びゴール17(パートナーシップで目標を達成しよう)に貢献していきます。また、日本製の医療機器を積極的に導入し、拡大していく当社と日本の医療機器やサービス提供企業とのビジネスマッチングにも寄与していきます。

(注1)UHC:すべての人が適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを支払い可能な費用で受けられる状態を目指すもの。

(注2)シリーズD:スタートアップによる資金調達を段階的に表すSeed、シリーズA、B、C、D、Eといったラウンドのうち、比較的成熟したレイター(グロース)ステージにあるスタートアップの資金調達の段階を表す。

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