JICAの細井国際協力専門員(資源分野)が令和5年度外務大臣表彰を受賞

2023.08.31

JICAの細井義孝国際協力専門員(資源分野)が令和5年度の外務大臣表彰を受賞しました。

外務大臣表彰は、国際関係の様々な分野で活躍し、日本と諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をした個人および団体について、その功績を称えるものです。1984年度から実施され、今年度は国内外で活動する187の個人と63団体が対象となりました。

細井専門員は大学を2年間休学してアフリカのコンゴ(旧ザイール)で銅鉱床の探査・鉱山開発に従事、卒業後に金属鉱業事業団(現エネルギー・金属鉱物資源機構)に入団し、同マニラ事務所長や国際機関の南太平洋応用地球科学技術委員会 (SOPAC)専門家などを歴任しました。開発途上国の鉱業開発に携わった経験をさらに生かすべく、2011年からJICAの資源分野の国際協力専門員として、長きにわたり開発途上国の鉱業開発に貢献してきました。

とりわけ、2014年に開始した長期研修「資源分野の人材育成プログラム」(資源の絆プログラム)(※)の創設期から現在に至るまで中心的に活動し、日本の資源確保戦略も念頭に置いた資源国の人材育成とネットワーク強化に努めてきました。これまでに累計28か国178名が本プログラムに在籍し、帰国した研修員の中には、マダガスカル鉱山・戦略資源省の鉱山局長など、要職に就いた人もいます。
(※)鉱業ポテンシャルを有する国の行政官・研究者を対象とした長期研修プログラム。日本の大学で学位を取得しつつ、政策・実務面での研修をJICAで実施し、鉱業開発に関する総合的な能力開発と日本の関係者とのネットワーク強化を企図。2023年10月の受け入れで累計200名に達する見込み。

細井専門員はまた、開発途上国の資源政策や学術面にも様々な貢献をしてきました。例えば、「モンゴル国鉱物資源セクター人材育成プロジェクト」(2013~2021年)ではモンゴルの資源分野における政策立案機能の向上に取り組み、客観的かつ定量的にデータを整理・分析し、政権交代に左右されない政府向けシンクタンク機能の強化に寄与しました。この成果は書籍『Ecnomic Dependence of Mongolia on Minerals』(Springer Nature)として出版されています。また、「ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康・経済リスク評価手法および予防・修復技術の開発」(2015~2022年)では、案件形成時から議論を主導し、科学技術協力事業として学術面からも高い成果を上げるに至りました。その他、『Mining and Development』(Lambert Academic Publishing)を出版し、鉱山開発が国家の経済並びに環境に及ぼすインパクトを学術的に分析し、国家の鉱山開発政策への指針を示しました。

さらに秋田大学、北海道大学及び九州大学で非常勤講師を務め、自身の経験を広く次世代へ還元しています。また、一般向けの鉱業分野の日本語の書籍が限られる中、細井専門員の著書『陸上から海底まで広がる 鉱物資源フロンティア』『成長する資源大陸  アフリカを掘り起こせ』(日刊工業新聞社)は、鉱業やアフリカへの関心を高める貴重な情報源となっています。

今回の表彰は、細井専門員の鉱物資源分野における日本の国際的なプレゼンス向上への長年の貢献が認められたものです。

8月22日に東京都内で表彰式が行われ、細井専門員は「一般には知られにくい鉱業分野の活動が認められたことは、資源分野の方々全員への朗報となり励みになる。今後も人材育成を中心に世界の鉱業分野に貢献していきたい」と喜びと感謝のコメントを寄せています。

カーボンニュートラル社会の実現にむけて希少鉱物資源確保の重要性がますます高まっている中、JICAは、世界的に安定した資源供給の実現のために、開発途上国において、環境に優しく、効率的で透明性の高い鉱物資源の開発・管理の実現を目指しています。それが、特定国や企業によるサプライチェーンの独占や鉱物資源市場の寡占化を防ぎ、世界のひいては日本の経済安全保障に資することになります。今後もJICAは、日本の大学や企業とも連携しながら、開発途上国の鉱物資源開発協力に取り組んでいきます。

「資源の絆」夏の短期プログラムで講義を行う細井専門員

カザフスタン金鉱山坑内における現場

エクアドルのエル・コラソン金鉱山坑内における現場

アフリカのナミビア露天掘り鉱山現場

表彰式典で細井専門員(左)と林外務大臣

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