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- 海洋保全 豊かな海を未来へ mundi 2017年11月号
- JICA STAFF 加納 篤 農村開発部 農業・農村開発第一グループ 第二チーム
日本と世界の水産業の発展を支えたい
富山県氷見市で魚の仲卸業を営む祖父母を持ち、水産業の活気を身近に感じながら育った加納篤さん。水産行政官としての経験を生かし、現在は開発途上国の水産業を盛り上げるべく奮闘中だ。
水産業振興の舞台が国内から世界へ
私は水産庁からの出向で、昨年4月からJICA農村開発部で働いています。それまでは水産庁の他、同じく出向として北海道庁で勤務したこともあり、行政の立場から国内の水産業の振興に携わってきました。
私の祖父母は、定置網漁や寒ブリなどで有名な富山県氷見市で魚の仲卸業を営んでおり、私は小さいころから港町の暮らしに親しんで育ってきました。生き物としての魚の魅力にも引かれ、大学では海洋や水産、魚類の生命科学など、海と魚に関わる分野を広く学びました。
日本では1980年代後半から漁業生産量が減少しており、残念ながら今では、水産業は斜陽産業と言われてしまうこともあります。子どものころから盛んな漁業と港町の活気を肌で感じてきた私は、この衰退しつつある国内水産業を何とかしたい、活性化に貢献したいと思うようになり、水産庁に就職しました。
コートジボワールの内水面養殖場の視察にて。現地では養鶏や農業などの事業経営者が養殖事業に取り組む例が多いという
水産庁職員として7年目を終えようとしていたとき、JICAに出向することになりました。正直に言えば、実はこのときJICAの活動や仕事はほとんど知りませんでした。でも、"知らない世界だからこそ学べることが多くあるはずだ"という気持ちで、国際協力という新しい分野に飛び込みました。
互いの知見の共有が水産業活性化の鍵
JICAでは主に、東南アジアや西アフリカの水産プロジェクトを担当しており、関係各国へも出張させていただきました。
中でも、自身にとって初めてのアフリカ訪問となったコートジボワール出張は印象に残っています。同国では現在、湖や池などの"内水面"を活用したティラピアやナマズ類の養殖の振興を図る「内水面養殖再興計画策定プロジェクト」を実施しているのですが、その現場を視察したり、先方の関係者や日本人専門家の皆さんと話し合ったりする中で、アフリカ水産業の現状や人々の暮らし、また、彼らが抱えている課題に触れることができました。百聞は一見にしかず、まさにこの言葉を痛感した出張でした。
インドネシアの海洋水産省職員らと現地の水産市場を視察した加納さん(右から3人目)
多くの途上国では港や浜にたくさんの漁民・商人が集い、協力しながら資源を確保し、分け合い、売買して生計を立てています。日本の漁村も同じような歴史背景を持っていますので、国際協力では日本の知見を大いに生かすことができます。他方で、途上国から学ぶべきことも多くあると気が付きました。例えば、技術協力を行う際には、よくパイロットプロジェクトと呼ばれる試験的な取り組みを実施しますが、その試行錯誤の過程や生じた結果の中には、もちろん環境の違いを考える必要はあるものの、日本にも適用できるヒントが多くあります。また、研修の場に同席すると、研修員の意見を通して、改めて日本の水産業の良いところと悪いところが見えてきます。
島国である日本の暮らしは、海と共にあり、その恩恵にあずかりながら栄えてきました。私は今後、これまでの日本での経験に加えて、JICAの仕事を通じて得た途上国の経験を携え、日本と世界双方の水産業発展に寄与する、そんな仕事をしていきたいと考えています。
プロフィール
加納 篤(かのう あつし)
農村開発部 農業・農村開発第一グループ 第二チーム
2009年に東京大学農学部水産専攻を卒業し、水産庁に入庁。2011年4月より2年間北海道庁出向。その後、水産庁で3年間の勤務を経て、2016年4月よりJICA出向。農村開発部にて主に水産分野の案件を担当。
加納 篤さん
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