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- 感染症対策 日本の技術が命を守る mundi 2018年12月号
- JICA海外協力隊がゆく Vol.2 スリランカ
インド洋に浮かぶ島国スリランカ。
そこで体育協力に取り組んでいるJICA海外協力隊員から声が届きました。
髙里さんの動きに合わせて一緒にダンス。子どもたちの動きがだんだんよくなってきた。
子どもたちに運動の楽しさを伝えています
中学校での10年間の保健体育教諭としての経験を活かしたい-その思いを胸に2017年7月、スリランカのトリンコマリーにやってきました。スリランカの体育は座学が中心で、子どもたちは運動に親しむ機会が少なく、運動不足が深刻です。現地の教員と協力しながら、運動の楽しさを伝えることが私の活動の目的です。
当初は、授業での体育実技指導を目指しましたが、体育の知識をつけることのほうが重要視され、実技の授業は理解を得られませんでした。そこで、学校にすでにあるクラブ(サッカー、バレーボール、陸上、卓球)の技術力向上、地方の学校ではクラブ新設による競技の普及、運動習慣の定着や体力増進に取り組むことにしました。
ある卓球クラブでは、子どもたちは全員ボールもラケットも触れたことがなく、ラケットでボールを打つだけで楽しい様子。私が訪れると満面の笑顔で迎えてくれます。サーブの練習には苦労していましたが、練習を繰り返してコツを掴みどんどん上達。最後のひとりができるようになったとき、その子はもちろん、周りの子どもたちみんなで成功を喜びました。
ただ、言葉の壁には苦労しました。民族混在地域なので、語学研修を受けなかったシンハラ語で先生たちにダンスの振り付けを説明しなければならないことがありました。はじめはホワイトボードで説明し、英語のできる保護者に通訳してもらっても半分も伝わりませんでしたが、不思議なことに2週間もするとおたがいになんとなく意思の疎通ができるようになりました。「子どもたちに元気いっぱいダンスを踊ってほしい」という共通の目標があったから、言語を超えたコミュニケーションが図れたのだと思っています。
2018年5月から砲丸投げを始めた女生徒が、2018年10月に行われた全国大会で7位に入賞しました。一所懸命に練習に取り組む姿はカッコよく、入賞は私自身にも大きな喜びでした。2019年2月には、新設したサッカーなどのクラブ初の公式戦となる地区大会があります。これまでの練習の成果を発揮し、目標を達成する喜びや仲間と協力することの大切さを学んでほしいと思います。
インド、スリランカ
競技普及のために立ち上げたバレーボールクラブ。ルールや練習方法、運動の基礎知識を伝えている。
最後まであきらめずに練習し、サーブができるようになった女の子(右)。
JICA海外協力隊プロフィール
髙里 樹(たかざと・いつき)38歳
出身地:沖縄県
職種:体育(現職教員特別参加制度)
髙里 樹さん
企画調査員(ボランティア事業)(注1)からひとこと
JICAスリランカ事務所 片山典子
内戦や自然災害で、赴任地の子どもたちはスポーツをする余裕がなかったのですが、彼の活動で身体を動かすことの楽しさを知り、心身ともによい影響があると感じています。
(注1)隊員の活動全般を支援する「ボランティア事業支援のプロ」。また相手国の要望を調査し要請開拓を行うなど、隊員活動全体の運営を行う。
片山典子さん
+one information バスの中の小さなスリランカ
北海道を一回り小さくしたくらいの大きさのスリランカ。飛行機や列車もあるが、国内の移動はもっぱらバスになる。バスはカラフルなデザインが多く、車内に大きなスピーカーがあり、音楽が大音量で流れている。明るくにぎやかな性格の人が多いスリランカらしい。「えっ」と思うかもしれないが、どのバスもドアを開けたまま走る。なぜか!?いちばんの理由は、「閉めないほうが便利だから」だろうか…。
運転席付近には、仏陀、ガネーシャ(ヒンドゥー教の神様)、キリストなどが仲良く並び、お供え物が置かれ、線香が焚かれる。旅の安全を願い、たくさんの神様に祈る姿に、世界四大宗教(仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教)が集まっているスリランカの宗教に対する寛容さを感じる。車内では、お坊さんが乗ってきたらいちばん前の席を譲る、座っている人は立っている人の荷物を持ってあげるなど暗黙のルールがあって面白い。
イラスト:さかがわ成美
長時間の移動に疲れてきたら、ワデー(注2)を食べて一息。日本のバスに比べるとけっして快適とは言えないが、スリランカの文化や習慣が凝縮されているこの空間が大好きだ。(髙里 樹)
(注2)水で戻したヒヨコ豆を挽き、きざみ玉ネギ、青トウガラシなどと混ぜて丸めた揚げ物。手軽なスナックとしてスリランカではポピュラーな料理。
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