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- NGO 世界をつなげる市民のちから mundi 2019年9月号
- 出会いが芽をはぐくむ 愛媛県
途上国の原料や製品を適正な価格で購入し、生産者の生活を支援するフェアトレード。
今、四国のNGO、企業、学校の生徒らが手を取り合い、フェアトレード商品の開発を進めるとともに、販売網も広げようとしている。
文・写真:光石達哉
・特定非営利活動法人 えひめグローバルネットワーク:
1998年設立、2005年にNPO法人化。2004年に四国NGOネットワークを設立し、外務省のNGO相談員も受託。モザンビーク内戦で市民が使っていた武器を回収する「銃を鍬へ」プロジェクトや、松山市の放置自転車をモザンビークなどに送る活動などに取り組む。「持続可能な開発のための教育(ESD)」の普及啓発と実践にも取り組み、学校などでの講演活動も行う。
・案件名:
NGO×企業等 四国フェアトレード商品開発研修(2018年2月~2019年5月)
えひめグローバルネットワーク 竹内よし子さん(写真右から3人目)「研修では商品開発まで予定していませんでしたが、回を重ねるうちに実際にできたことを喜ばしく思っています。NGOとしての力もつけられたと感じています」
NGOの強み 仲間づくりの経験を生かす
若者の声から生まれたネットワークづくり
フェアトレードとは、途上国で作られる商品や原材料を適正な価格で購入することによって生産者をサポートし、貧困をなくすことにつなげることをいう。誰でも簡単に参加できる国際協力の一つとしても注目を集めている。
そしていま四国では、フェアトレード商品作りのネットワークが広がり始めている。その中心となって奮闘しているのが、「えひめグローバルネットワーク(EGN)」の竹内よし子さんだ。
EGNはモザンビークで、過去20年にわたって武器回収による平和な社会づくりなどさまざまな活動を行ってきた。活動の一環として、JICA四国とともに四国の大学で国際協力論の講義を開き、中学・高校でも授業を行っていたところ、あるとき学生や生徒たちから「私たちにも何かできることはないか?」「フェアトレードをやってみたい」という声が上がった。相談を受けた竹内さんは、「若い人たちができることを探して動いているのなら、私たち大人やNGOも一緒に動いていきたい」と、背中を押されるようにしてフェアトレードの活動を決めたと話す。
最初、EGNではモザンビークのヘアゴムなどの雑貨を販売していた。しかし、四国を拠点にするもっと多くの企業やNGOを巻き込んでフェアトレード商品開発を行いたいとの思いが高まり、「四国フェアトレード商品開発研修」を立案。JICAの「NGO等提案型プログラム」に採用されたことで取り組みに弾みがついた。研修は2018年2月から2019年5月までの間に四国4県で計8回開催され、講師はフェアトレード商品を取り扱う企業やNGOの関係者が務め、のべ215人が参加した。
四国に根ざしたフェアトレード
この研修でできたネットワークを通じて、新たなNGOである「四国フェアトレードネットワーク(4FT)」が誕生。今年2月には徳島県の製菓会社や衣料メーカーと協力して、アフリカ産のカカオと徳島県産の藍などを組み合わせたチョコレート「藍ショコラ」が生まれ、バレンタイン限定で販売したところほぼ完売するほどの人気となった。この商品には「フェアトレードと地産地消の両方をかなえるものを作りたい」という願いも込められている。
また、研修には愛媛県今治市の今治西高校の生徒たちも参加していて、その声を商品の開発に生かすほか、同市をフェアトレードタウン(注)にする取り組みにも力を入れている。
「ポツンポツンと点在しているNGOが単体で活動しても、なかなか大きな成果は出ません。それをつなげるのが“ネットワーク”です。キーワードをフェアトレードにしたことで、高校生や大学生にも身近なものになりました」と竹内さんは話す。現在、JICAと協働した研修は終わっているものの、四国でのフェアトレードのネットワークづくり、商品作りは引き続き精力的に行われている。4FTは、2019年の10月に今治市の商店街の空き店舗を利用して15日間限定のショップのオープンを計画し、四国中のNGOから集めたフェアトレード商品の販売や、インターネットを活用した通販を予定している。
(注)市民、行政、企業、小売店、学校など街全体でフェアトレードを応援する自治体。日本ではこれまで熊本市など五つの自治体が認定されている。フェアトレード商品の取り扱い店舗数が人口1万人当たり1店舗以上などの基準がある。
今治西高校の生徒たちはテスト期間などを除いてほぼすべての研修に参加。
エクアドル産のローストカカオ豆と今治産のはちみつ、レモンをブレンドした「ハニーれもんカカオ」など、地産地消とフェアトレードを組み合わせた商品も開発している。
フェアトレード商品の開発
研修から生まれた「藍ショコラ」
フェアトレード研修で生まれた第1号商品。サントメ・プリンシペ産のカカオと徳島産の海部藍(あまべあい)などを使用。染料である藍を食品化する技術を用い、ポリフェノールも豊富に摂れる。菓子製造販売の「ハレルヤ」が企画。
平和への思いを表現
モザンビーク内戦後に市民の手に残された武器を回収し、同国のアーティストが切断・溶接してアート作品にした「武器アート」。作品は日本などで展示され、絵はがきやキーホルダーを販売する。
村の女性が手作り
カプラナと呼ばれるモザンビーク伝統のカラフルな布を使ったくるみボタンは、モザンビークの村の女性が手作りしたもの。「ワンポイントゴム」という商品で、ヘアゴムをはじめアイデア次第で使い方はいろいろ。
子どもたちの思いをつなぐ
モザンビークの人が作った刺繍を日本の生徒・学生の間で順に手渡しして、刺繍とメッセージを追加する「リレー刺繍」。ESD(持続可能な開発のための教育)の教材として販売することを目指している。
モザンビーク選手団を応援!
東京五輪でモザンビーク代表選手団の合宿地となる愛媛県。今治タオルのメーカーの中でもフェアトレードのオーガニックコットンを原料として使う「IKEUCHI ORGANIC」とのコラボで、選手団向けにタオルやハンカチを製作する。応援グッズとしても発売し、収益金で同国にスポーツ用品を贈るほか、サイクロンの被災者支援に使われる。ESD普及啓発にもつながる限定品。
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