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- JICAの仕事 プロジェクトはこうして動く mundi 2019年10月号
- プロジェクトを評価 成果と教訓を求めて
C(チェック=事後段階)
JICAの事業は途上国でどんな成果を上げていて、その効果は持続しているのか。
あるいはどんな課題があったのか-
それを検証するのがプロジェクトの事後評価だ。
調査結果について相手国側とディスカッションを行う(ウガンダ事務所)。
プロジェクトを評価
評価という仕事
JICAの事業では、プロジェクトが目指した効果が上がっているかなどを終了後に検証する「事後評価」を行っている。この事後評価をおもに担うのが評価部だ。
「当たり前ですが、プロジェクトは実施して終わりではなく、本当に効果が発現しているのかを確認して、他の事業の改善に活かすとともに、評価結果を国民の皆さんにわかりやすくお伝えしていく必要があります」と、評価部の田中優子さんは言う。評価は国際的な開発援助の評価指針に基づいていて、日本語と英語による評価結果は、JICAのウェブサイト(注1)で公開されている。
事後評価は協力金額が2億円以上のすべての事業で実施され、10億円以上の事業については、客観性を高めるため外部の第三者が評価を行っている。10億円未満の事業については、内部の学びを重視して内部事後評価として在外事務所が行っている。ここでは、内部事後評価に携わったJICAスタッフの話を紹介しよう。
継続的なフォローが大事
2018年、ウガンダ事務所のジュディス・ズング・ムタバジさんが行ったのは、「中等理数科強化プロジェクト」の内部事後評価だ。初めての経験で、ウガンダ側実施機関の事業実施当時の担当者が退職しているなど懸念事項も多く、的確な評価ができるのかと最初は心配だったとジュディスさんは言う。しかし「ウガンダ事務所と実施機関の間で、プロジェクトの終了時から月例会議を開催し、終了時の課題にどう対応しているかなどを細く長くフォローしていたので、効率的で円滑に内部事後評価ができました」。スケジュールに大きく遅れることなく評価を終えることができ、評価を担当しているほかのスタッフとも教訓を共有した。
プロジェクトで導入した教員養成システムが地方にも広がりつつあり、来年は改定された教員養成カリキュラムが試験運用される予定だという。プロジェクト終了後も自国で事業の成果を発展させていることがこの評価で見えてきた。
ウガンダ
・ウガンダ事務所
「中等理数科強化プロジェクト」の内部事後評価を実施。
ウガンダ事務所 ジュディス・ズング・ムタバジさん
今回の評価を通じて、組織の能力強化や長期的視点の重要性、そして支援機関としてのJICAの責任をあらためて認識しました。
ジュディス・ズング・ムタバジさん(写真中央)
成果の持続を実感
中米の国、グアテマラのJICA事務所で内部事後評価を行ったのは、ロウルデス・アフシップさんとシンディ・モラレスさん。ふだんの業務をこなしながら保健案件2件の評価を行った。「乳児の受診者数が増え、乳児の呼吸器感染症と下痢症の治療に対する母親の理解度が上がったことがわかりました」と、ふたりはプロジェクトの成果が続いていることを実感した。
また技術協力事業で供与した超音波診断装置がうまく活用されていないときには助産師として派遣されたJICA海外協力隊員が同僚に使い方を教えたというように、技術協力事業とボランティア事業との連携が機能していることも評価の過程で確認できた。
現地の保健施設にとっても評価は励みとなった。グアテマラ保健省の担当者も「母子保健サービスの重要性が医療従事者や住民に理解され、行動に変化が生まれたことが明確になりました。これからも人材育成を重視し、プロジェクト対象地域での取り組みを全国の保健施設に広げていきたい」と語る。評価がカウンターパートの意欲向上につながっている。
グアテマラ
国内各地を回り、1週間にわたって現地調査を行った。
・グアテマラ事務所
「ケツァルテナンゴ県、トトニカパン県、ソロラ県母とこどもの健康プロジェクト」と「ケツァルテナンゴ県こどもの健康プロジェクト」の内部事後評価を実施。
グアテマラ事務所 ロウルデス・アフシップさん、シンディ・モラレスさん
評価を知識として蓄積し、事務所内で共有するため内部評価勉強会を開きました。評価プロセスの一連の流れや留意点・教訓を参加者に伝えたので、次年度に内部評価を行う職員もイメージがつかめました。
ロウルデス・アフシップさん(写真左)、シンディ・モラレスさん(写真右)
OJTで評価と向き合う-in Viet Nam(ベトナム)-
プロジェクトの全貌が見える評価という仕事
評価部に配属され、海外OJT(注2)先のベトナムで、無償資金協力で高速道路への管制システムを整備した案件の内部事後評価を担当しました。すでに評価方針や質問票はベトナム事務所が作成していたので、準備万端と意気込んで調査に臨みましたが、高速道路の拡張工事などの影響で一部の機材が破損し、使われていないことが判明!評価調査で明らかになった課題ですが、実施機関や所管省庁と協議を行い、現在は機材の復旧・稼働が始まっています。
思いがけない展開でしたが、得た学びも大きかったです。JICAの内部の人材が行う内部評価だからこそ、評価実施段階より、実施機関や相手国政府とインタラクティブに協議を行い、事業を改善できること、また現地スタッフと二人三脚の仕事は、国際協力が多様な人材で成り立っていることを再認識させてくれました。とくに、ベトナム事務所の現地スタッフは、現地事情に疎い私と、明るく、根気強く一緒に取り組んでくれました。実施機関とのつながりは日本人所員以上に強く、今回経験した相手国政府との迅速な協議など、さまざまな仕事が成り立つのは現地スタッフのおかげだと再認識しました。評価の過程では、本部の評価部や事務所内からも多くのコメントをもらい、プロジェクトに対する理解が深まりました。
JICAのなかで、事業の効果が上がっているのか、相手国や現地の人びとの役に立っているのかを客観的に見定めるのが評価という仕事です。新人のうちに評価を通して"事業のその後"を見ることは、必ずより良い事業の形成にもつながるはず。あらためて評価という仕事の意義を実感できた研修でした。
ベトナム
高速道路での現地調査。
(注2)オン・ザ・ジョブトレーニング。職場で実務をしながら行う職業教育のこと。
評価部 植田 茜(うえだ・あかね)さん
今回紹介した二つの事務所は、内部評価活用の好事例として、JICA内で表彰されました。評価から得られた教訓の浸透や、フィードバックによる相手国側の意欲向上などの取り組みがその理由です。評価を活用し、プロジェクトによる成果を高めていきたいと思います。
植田 茜さん
評価部 氏家慶介(うじけ・けいすけ)さん
関心のある国、分野があれば、ぜひJICAウェブサイトの「ODA見える化サイト」(注3)でJICA事業の"その後"をご覧ください。
氏家慶介さん
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