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- 企業連携×SDGs 2030へ行動で挑む mundi 2020年8月号
- エネルギー 小さな発電機が暮らしを変える ネパール
貢献するSDGs 4:質の高い教育をみんなに、7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに、12:つくる責任つかう責任
茨城県日立市で74年間、大型モーターや発電機を製造してきた茨城製作所が、自社で開発した簡単に設置できる小型の水力発電機をネパールに普及させる事業に取り組んでいる。
・案件名:
ヒマラヤ農村貧困地域における軽水力発電機導入プロジェクト案件化調査(2015年6月~2016年5月)
ヒマラヤ農村地域の生活水準向上に向けた軽水力発電普及・実証事業(2017年5月~2019年5月)
大人二人で運搬できる軽水力発電機「Cappa」。構造はシンプルでメンテナンスは容易だが、ごみが入らないようこまめに掃除をする必要がある。村の人たちが研修を受け、責任をもって維持管理にあたっている。
明かりが灯る喜びを実感
茨城製作所社長の菊池伯夫(のりお)さんは、物理学者として研究所で働いていたインドで経験した頻発する停電や東日本大震災から、電気のありがたさと必要性を実感していた。「自社の技術を生かし、必要としている人たちに電気を届けたい」という思いで、小型の水力発電機の開発を進めた。4か月にわたりアジアの電気事情を調査し、ネパールの山岳地域に届けようと考えた。同社の渡辺あしなさんは、「無電化の小さな集落が点在している同地域は、ヒマラヤの雪どけ水が豊富。水力発電が力を発揮します」と事業の有効性を説明する。
事業を検討するにあたり海外展開の経験がなかった茨城製作所は、JICA民間連携事業に応募。採択された案件化調査(注1)や普及・実証事業(注2)を通じてヒマラヤの農村に軽水力発電機を設置し、電気は学校や集会所などに利用された。「冬は氷点下になる寒さの中、学校は木の窓しかなく、閉めると昼間でも教室が真っ暗になっていました。教室の電球に明かりが灯ったときには、子どもたちから拍手が起こりました」とふり返る渡辺さん。
電気が使えることで、子どもたちは学校で充電したランタンを持ち帰って家庭学習ができるようになり、安全な水を提供する浄水器も動かすことができた。夜間学校を開校し女性の識字率を上げるといった広がりも期待されている。
首都:カトマンズ
「日本から軽水力発電機を輸入すると価格が高くなるので、現地に適したモデルを現地で生産し、価格を下げることを考えています」と、ネパールでの今後のビジネス展開を語る渡辺さん。村全体で利用できる電力量に合わせた発電機のスケールアップや設置も考えている。「電気が使えるということは、明かりが灯る以上に大きな影響があります。電気を何に使っていきたいか、どんな製品やサービスなら手に取ってもらえるかをネパールの人たちと一緒に考えてきました。この経験をもとに、他のアジア・アフリカの国々にも小型発電機を届けたいと考えています」と渡辺さんは力強く語る。
電気を使えるようになった小学校。
子どもたちと一緒にランプシェード作りを行う渡辺さん。
茨城製作所 渡辺あしな(わたなべ・あしな)さん
茨城製作所で海外事業を担当。「明かりが灯ったときの子どもたちの笑顔が忘れられません」。
渡辺あしなさん
JICA担当者 赤堀友希(あかほり・ゆき)さん
いまだ無電化のコミュニティが多いネパールに、茨城製作所の小型発電機がクリーンなエネルギーを届けることを期待しています。
赤堀友希さん
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