Webセミナー「With/Afterコロナの視点から考えるアフリカ・スタートアップの現状と今後の展望」を開催

掲載日:2020.06.24

イベント |

新しい視点でアフリカ・スタートアップをとらえる機会

イノベーションによる社会変革の潜在性を秘めたアフリカ。スタートアップは、その社会変革の重要な役割を担ってきました。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、アフリカ・スタートアップにどのような影響を与えているのか、起業家、投資家、民間企業、行政から登壇者を招き、参加者との対話を交えて討論しました。起業家・投資家の視点からは業績が悪化する企業とピンチをチャンスに変えて伸びる企業の二極化が指摘されました。モデレーターを担当した日本経済新聞社の下田氏は、アフリカ・スタートアップの特徴は社会課題解決に根差していることであり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により「距離の概念」が変化する中で、今までの延長線上でアフリカ・スタートアップをとらえるのではなく、サスティナビリティや社会的インパクト等新しい視点から注目する必要があるのではないかと指摘しました。

【画像】

(上左から)下田氏、米山氏、永井氏
(下左から)林田氏、片井

概要

会議名:「With/Afterコロナの視点から考えるアフリカ・スタートアップの現状と今後の展望」
開催日:2020年6月24日(水)13:00~15:00
共催:(株)サムライインキュベート、(独)国際協力機構(JICA)
運営協力:(株)日本経済新聞社Webinar事務局
場所:Zoom
目的:With/Afterコロナ時代におけるアフリカ・スタートアップの社会的重要性を日本企業の方々にお伝えすること
参加人数:約700名

登壇者

  • 下田敏 (株)日本経済新聞社 メディアビジネス企画開発室シニアプロデューサー
  • 永井健太郎 (株)アフリカインキュベータ- 代表取締役
  • 米山怜奈 (株)サムライインキュベートアフリカ マネージングパートナー
  • 林田宏一 PwCコンサルティング合同会社 公共事業部 マネージャー
  • 片井啓司 国際協力機構(JICA) 経済開発部民間セクター開発グループ課長

プログラム

  • 開会のご挨拶:登壇者のご紹介・ご挨拶
  • 講演1(永井氏):現地スタートアップからみた新型コロナによるビジネスの変容
    新型コロナの影響下でのケニア・ナイジェリア企業の変化とITスタートアップの成長戦略
  • 講演2(米山氏):新型コロナ影響下での投資先企業のサバイバル状況や新たな事業展開の動き
  • 講演3(林田氏):スタートアップ環境の比較、新型コロナの影響を踏まえた変化
    アフリカ7カ国を対象としたスタートアップエコシステムプレイヤーの特徴と国別比較、新型コロナの影響を踏まえたエコシステムの動きや変化
    (注)7カ国:南ア、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、ナイジェリア、ガーナ、エチオピア
  • 講演4(片井):コロナ×アフリカ・スタートアップ支援×JICA
    アフリカでの新型コロナの状況とスタートアップ支援でJICAが目指すもの
  • 参加者からの投票に基づくパネル討論
  • 質疑応答
  • 終了/アンケート回答

内容

  • アフリカ・スタートアップの役割・特徴:「社会問題の解決」(下田氏)
    2019年秋に東アフリカ視察団を企画・主催した際に、アフリカにおける公的サービス・インフラの整備は限定的であり、スタートアップがそれらを補い、社会問題を解決する役割を担っているという話を印象深く聞いた。また、アフリカ・スタートアップの中には、途上国ならではのユニークな発想からリープフロッグ型発展を遂げ、世界的な先行事例を作る企業も出てきており、そのような視点からもスタートアップを取り上げたい。
  • 新型コロナによるアフリカビジネスの変容:「デジタル化の加速」(永井氏)
    コロナ禍におけるアフリカでは、決裁を含む商取引のデジタル化が加速している。これまで、伝統的に安価な労働力でFace-to-Faceの商取引が行われていたが、ソーシャルディスタンスが奨励され始めたことで急速な変化が生じている。短期的には、製造・卸業の約7割の企業で売上が減少したが、長期的には、商取引のデジタル化の加速により新しいビジネス機会が創出される可能性が高く、自身の企業も新しい事業に取り組んでいる。
  • アフリカ・スタートアップの今後の動向:「進む二極化」(永井氏、米山氏)
    成長企業と業績悪化企業の二極化が進むことが予想される。業績が悪化している企業もあるが、(株)サムライインキュベートの投資先含め現状をチャンスと捉え伸びている企業もある。コロナ禍において投資家は現地渡航が難しくなり、現地の信頼できるネットワークからの紹介や情報で投資判断をするケースも増えてくるので、各国のネットワーク内にいるか、インナーサークルにアクセスできるか否かで、資金調達できる企業とできない企業の二極化が進む可能性が高い。
  • JICAのスタートアップ支援策:「イノベーション・プラットフォーム」(片井)
    JICAではProject NINJA(Next Innovation with Japan)を立上げた。アフリカ等でのスタートアップ支援に多面的に取り組みつつ、日本の投資家や事業会社ともつなげ、アフリカ・日本でイノベーションを推進するプラットフォームとしていきたい。2020年7月から、コロナ禍におけるアフリカ・スタートアップ支援として、アフリカ19カ国でビジネスプランコンテストを行い、各国の優秀スタートアップに実証事業を委託予定。本ビジネスコンテストの実施を通じて、優秀なアフリカ・スタートアップに対する投資促進および日本企業とのマッチング機会の提供を目指していく。
  • パネル討論では参加者からのアンケート結果をもとに、参加者の関心の高い「医療ヘルスケア」および「農業」、「金融決済」分野のスタートアップの動向について、それぞれの登壇者の視点から議論がなされた。
  • 参加者からは「新型コロナによるアフリカ・スタートアップへの影響」および「スタートアップとサスティナビリティ」に関する質問が寄せられ、「ピッチイベントがオンライン化し、起業家と投資家との付き合い方が変ってくる。また、投資の方向性もインパクト型へ変わりつつある」(林田氏)、「アフリカでもヴィジョンや貧困層へのインパクト等を最優先の基準として投資を行う投資家がいるが、現地のスタートアップエコシステムに寄与するかは疑問。原則として、投資家にとって魅力的(財務的リターンが確保できる)な市場だと認識されない限り、長期的に見た場合にスタートアップへの投資資金は増えていかないのではないか。」(米山氏)などの議論がなされた。
  • 最後に、下田氏はAfterコロナを考えるうえでの2つの大きな流れを指摘。1つは利益や効率性を追求してきた経済社会が、よりサスティナビリティを重視する方向に変わってきていること、もう1つがデジタルトランスフォーメーション(DX)加速で「距離」の概念が様変わりしつつあるということ。これらの変化から、「今までの延長線上でアフリカ・スタートアップをとらえるのではなく、新しい視点から注目する必要がある」と総括がなされた。

今後JICAは、Project NINJAを中心に、With/Afterコロナの環境において、新たなテクノロジーの開発や既存のテクノロジーを活用したソリューションの提供を目指すアフリカ・スタートアップの成長支援を推進していきます。