健康と命のための手洗い運動プラットフォーム「手洗い運動進捗状況と会員団体様ご紹介セミナー」を開催しました!

掲載日:2021.02.19

イベント |

概要

2021年2月19日、健康と命のための手洗い運動プラットフォームの第1回目となる、「手洗い運動進捗状況と会員団体様ご紹介セミナー」をオンラインで開催しました。参加人数は、プラットフォームの個人・団体会員、関係機関、大学、コンサルタント企業、JICA等から約100名に及びました。

大阪大学大学院人間科学研究科 杉田映理准教授から基調講演をいただき、プラットフォームの団体会員の皆様からも手洗いに関する活動状況をご発表いただきました。また、JICAからも本運動の活動状況についてご説明しました。質疑応答の時間では、本運動の今後の展開に関するご意見、ご要望が活発に出されました。

背景・目的

新型コロナウイルスを含む感染症予防には水供給、手洗い設備等の整備と適切な方法による手洗いを主とした衛生行動が重要であると言われています。JICAではこれまでコロナ禍における水衛生分野の緊急支援として途上国水道事業体への資機材供与等を行う一方で、事業関係者が率先して手洗い等の衛生行動を実践し啓発活動を行うこと、及び事業への手洗い等のコンポーネントの組み込みを行うことを目的として、2020年9月に「JICA健康と命のための手洗い運動」を開始しました。

また、民間企業、大学、NGO等外部の組織の皆様とも協働を進めるため、「JICA健康と命のための手洗い運動プラットフォーム」を設立し、個人・団体ともに会員を募集してきました。そこで、本セミナーは、本手洗い運動のこれまでの進捗を報告するとともに、会員団体による取り組みの紹介を行っていただくことを目的として開催されました。

内容

1.基調講演

大阪大学大学院人間科学研究科 杉田映理准教授から『たかが手洗い、されど手洗い?』のタイトルで基調講演をいただきました。

現在、新型コロナウイルス等の感染症予防のためには手洗いが重要だと分かっています。しかし、わずか160年前の西洋医学では、伝染病の原因はミアズマ(瘴気)であるという説が信じられていたため、手に付着したものから感染することを突き止めて手洗いの重要性を訴えた医師ゼンメルワイスは病院を追放されたという、今では驚きのエピソードの紹介から講義は始まりました。そして、世界的に「石けんによる手洗い」に取り組み始めたのは2000年代前半頃からで、2008年に「世界手洗いの日(10月15日)」が制定され、2016年のSDGsに「hygiene」、「handwashing facility」が盛り込まれたといった、「石けんによる手洗い」の国際アジェンダ化の歴史を説明していただきました。

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杉田准教授による基調講演

学校に手洗い設備へのアクセスがない子どもたちは全世界に9億人いると報告されており(WHO&UNICEF 2020)、手洗いへのハードルは高く、「たかが手洗い」とは言えない状況だといいます。

手洗いの推進は、「1.衛生行動を行うための持続可能な手洗い設備の提供(環境整備)」、「2.手洗い行動の変容を促進・定着させること」の2つに分けて考えられますが、どちらも複雑に様々な事象を含んでおり、一筋縄に進めていけるものではありません。だからこそ、プラットフォームの場を通じてトライアルアンドエラーを共有することは重要であるといいます。

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手洗いの促進

また、日本の手洗いの経験について、小学校での手洗い施設整備の工夫や行動変容への働きかけが長年行われてきたこと、コミュニティでの生活改善運動の中で手洗いの励行指導が行われたことを紹介し、この経験は日本固有のものであるとともに強みでもあると述べられました。

最後には、次の3つのことを伝えていただきました。

2.会員団体からの報告

本プラットフォームの会員となっている下記6団体より、各団体の概要及び手洗いに関する活動について発表していただきました。JICA事業における途上国での手洗い普及等の取り組みや手洗い関連の製品、ソリューションのご紹介など、様々な方面から手洗い活動への取り組み紹介があり、今後の更なる手洗い推進や協働なども期待されました。

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株式会社LIXIL

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株式会社TECインターナショナル

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特定非営利活動法人ウォーターエイドジャパン

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日本テクノ株式会社

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株式会社カワイチ・テック

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株式会社アースアンドヒューマンコーポレーション

3.JICAからの報告

JICAでは、新型コロナウイルス感染症による健康危機に効果的に対処するため、「JICA世界保健医療イニシアティブ」を推進しています。本イニシアティブにおいては、人間の安全保障と強じんなユニバーサルヘルスカバレッジ達成を目標にしており、「予防」「警戒」「治療」の強化に取り組んでいます。水・衛生施設へのアクセスや手洗いは、感染症予防の強化に貢献するものとして位置づけられ、さらに拡充していきます。

新型コロナウイルスをはじめとする感染症を予防するため、JICAでは水・衛生分野での緊急支援として、1.安全な水の供給を絶やさない、2.手洗いを励行する、の2点に力を入れています。手洗いに関しては、自宅で水と石けんを利用できない人が約30億人、約43%の学校に給水・手洗い設備が整備されておらず、その影響を受けている子どもは約9億人にものぼると言われています。さらに、手洗い設備はあっても、適切なタイミングと方法で手洗いを行うという行動が習慣化されていないという課題もあります。このためJICAは「健康と命のための手洗い運動」を推進し、途上国の健康増進や公衆衛生の向上に取り組んでいます。

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「正しい手洗い漫画」(井上きみどりさん)の活用

JICAにおける手洗い啓発活動は、多様なセクターや事業において横断的に展開され、2020年9月の手洗い運動開始から約3か月間に35か国で110件以上の活動が報告されました。「正しい手洗い漫画」(井上きみどりさん)やソーシャルメディアを使った啓発活動、石けんやアルコールジェルの配布に加え、民間企業やNGOなどと連携した活動も行われています。今後は、本プラットフォームを活用し、会員同士の情報共有や協働も進めることで、手洗い運動の輪をさらに広げていきたいと考えています。

また、JICAは、衛生に関するプロジェクト研究の実施を通じ、手洗いの行動変容の促進、持続性の確保、効果的なメッセージの伝え方などについても調査・研究を進め、手洗い活動の有効性を高めるための教訓も発信していきます。

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プロジェクト研究(実施中)からの教訓

4.意見交換

今後のプラットフォームやJICAへの期待・要望をはじめとし、アルコール消毒剤の活用、効果の測定、大学などアカデミックな分野との連携などについて意見交換がありました。

今後の取組み

JICA健康と命のための手洗い運動では、今後も手洗いに関する情報や活動を発信し、手洗い活動を促進していきます。

また、プラットフォームを活性化し、よりインタラクティブなものとするため、今後も定期的にセミナーを開催し、会員同士の連携も進めていきたいと考えます。皆様からの情報や要望がとても大切ですので、ぜひ事務局までお寄せください。

メールアドレス:Handwashing@jica.go.jp