エジプト日本科学技術大学(E-JUST)にてJICAチェア・オープニングイベントを開催-アフリカ大陸でのJICAチェア初の「講義」に-

掲載日:2021.04.06

イベント |

概要

2021年4月6日、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)において、JICAチェアのオープニングイベントが開催されました。エジプトの高等教育大臣、国際協力大臣(ビデオメッセージ)、国家研修アカデミー長、在エジプト日本大使、JICA中東・欧州部長、エジプト事務所長を始めとする約300名の聴衆が大学構内及びオンラインにて同イベントに参加。北岡理事長によるビデオメッセージの上映や伊丹国際大学長による特別講義などが行われました。当イベントの様子は現地報道でも複数取り上げられ、E-JUSTが拠点として「日本の近代化を知る」を今後の活用していく旨を学内外に周知するとともに、エジプト政府高官にも認知・理解を得たことで、エジプト国内におけるJICAチェアのより一層の進展が期待されます。

背景・目的

JICAは、開発途上国の各分野で将来のリーダーとなる人材を育成すべく、本邦の大学と連携し、2018年から「JICA開発大学院連携プログラム」を実施しています。この一環として、海外のトップクラスの大学等を対象に、日本の開発経験を学ぶ機会を国外にも広げることを目的とした「日本研究」の講座設立支援を行うプログラム「JICAチェア」を新たに開始しました。

エジプトと日本の二国間協定に基づき2010年に設立・開校し、中東・アフリカの高等教育拠点の一つとなったE-JUSTのゴハリ学長から、二国間のパートナーシップ強化のための取り組みとしてE-JUSTをJICAチェアの導入の拠点にしたいという希望が示され今回のイベント開催に至りました。

内容

本イベントでは、ゴハリE-JUST学長の開会挨拶の後、JICA北岡理事長によるビデオメッセージがあり、講義シリーズの背景として、日本の開発経験・開発協力の特徴とそれらの経験・教訓を学ぶ機会を国外にも広げるためのJICAの取組みについて説明がなされるとともに、本講座が日本への理解促進につながることへの期待が述べられました。また、能化在エジプト日本大使からは、日本とエジプトの歴史的関係、E-JUSTの教育・研究活動の成果、日本の近代化の経験を共有することの意義について言及がありました。エジプト側からは、ガッファール高等教育大臣、ラニア国際協力大臣から、E-JUSTの教育・研究の成果と本イベント開催について関係者の尽力に謝意が述べられるとともに、エジプト・日本教育パートナーシップの下で特に教育・人材育成の分野で日本の知見から学び、日本とエジプトの協力関係が一層強固なものになることへの期待が表明されました。続いて、「日本の近代化を知る7章」の第4章「経済成長と日本的経営」(講師:伊丹国際大学学長)が上映され、日本の経済成長の基盤となった「人本主義」の日本的経営について講義と説明が行われました。

パネリストのセラゲルディン氏(アレキサンドリア図書館創設者)は、日本とエジプトの近代化の歩みには類似性が見られた一方で、日本がいち早く近代化を成し遂げ世界をけん引する国となった要因としてテクノロジーの重要性、すなわち新たな技術を開発・適用し続ける仕組みを指摘しました。松永部長はこれに応じ、人材や資本、生産性・テクノロジーに加え、信頼やコミュニティといった目に見えない要素が日本の発展に大きく寄与したことを指摘し、変動する世の中にあって社会的な資本を育むためにはエジプト日本学校(EJS)やEJUSTのような教育協力がより一層重要になる点に言及しました。

質疑応答のセッションでは、E-JUSTの教員や学生から、経済発展にかかる科学技術教育の役割と国際化の時代における「人本主義」の変容について質問がなされ、伊丹学長からは、科学技術それ自体のみならず、それをいかに具体的に有効利用するかが重要で、環境が異なり、変化する状況の中で日本を含むそれぞれの国において「人本主義」の原則をどのように実践していくかが重要な課題になるとのコメントがありました。最後にJICA大村エジプト事務所長からE-JUSTによるJICAチェアの今後の活用について期待が述べられ、イベントは終了しました。

今回のイベントは、E-JUSTの教員・学生に加え、他大学、産業界からの参加など多方面から多くの関心を得ました。「経済成長と日本的経営」のテーマはエジプトの社会経済的な状況に示唆を与えるものとして参加者の関心を集め、活発な意見交換がなされました。このテーマは産業界にも関心が得られやすく、産学連携を推進するための効果的な活用が期待されます。

E-JUSTは、2010年の開学後、これまでに計115名の工学修士、218名の工学博士を輩出しており、今年度は初の学部卒業生を輩出します。また、TICAD7にて「横浜行動計画」に明記されたアフリカ留学生の受入も開始し、既に9か国31名の留学生が入学しています。今回のイベントは、E-JUSTが今後リベラルアーツカルチャーセンターを中心に「日本の近代化を知る」を多面的に活用していくための契機となりました。JICAはE-JUST内及びエジプト国内における展開について必要な支援を行っていく方針です。

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北岡理事長のビデオメッセージを視聴するメイン会場の様子

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ガッファール高等教育大臣のスピーチ

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ラニア国際協力大臣のビデオメッセージ

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伊丹国際大学学長による講義ビデオの解説及びライブディスカッション

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サテライト会場で、ソーシャルディスタンスを保ち参加する教員・学生の様子

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メイン会場でのディスカッションの様子。左から、セラゲルディン氏、ゴハリ学長、能化大使、JICA松永中東・欧州部長