インドネシアにおけるJICAチェア「日本開発研究講座」(全16回)大盛況の中、成功裡に終了

掲載日:2021.12.16

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概要

インドネシア国内最古の高等教育機関であるインドネシア大学(Universitas Indonesia, UI)をパートナー大学とし、同大学人文学部の正規講義として単位認定を受けるJICAチェア長期連続講義「Japanese Modernization」コースを2021年9月2日(木)から12月16日(木)の期間で開講しました。本コースでは、DVD教材「日本の近代化を知る7章」を活用し、同大学講師による事前学習講義と日本人の特別講師による講義との組み合わせにより、全16回の講義が実施されました。

講義名 登壇講師
1 オリエンテーション
DVD視聴(プロローグ)
インドネシア大学 講師
2 DVD視聴(第1章) インドネシア大学 講師
3 明治維新:日本近代化の原点 JICA 北岡 伸一 理事長
4 DVD視聴(第2章) インドネシア大学 講師
5 政党政治の盛衰 東京大学 五百旗頭 薫 教授
6 DVD視聴(第3章) インドネシア大学 講師
7 戦後日本の政治外交 慶應義塾大学 田所 昌幸 教授
8 DVD視聴(第4章) インドネシア大学 講師
9 経済成長と日本的経営 国際大学 伊丹 敬之 学長
10 DVD視聴(第5章) インドネシア大学 講師
11 日本の近代化と教育 JICA 萱島 信子緒方貞子平和開発研究所 顧問 
12 DVD視聴(第6章) インドネシア大学 講師
13 「アジアと日本」から
「アジアの中の日本」へ
熊本県立大学 白石 隆 理事長
14 DVD視聴(第7章) インドネシア大学 講師
15 日本の国際協力 国際大学 加藤 宏 副学長
16 受講生による論文執筆 インドネシア大学 講師

日本人講師による特別講義

第3回講義:「明治維新:日本近代化の原点」(JICA 北岡 伸一 理事長)

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北岡理事長から、JICAチェア事業の背景およびインドネシアと日本の歴史的な友好関係について説明がなされた後、学生と活発な質疑応答がなされました。また、北岡理事長からは今後インドネシアと日本の架け橋となる存在になってほしいと学生への期待が述べられました。

第5回講義:「政党政治の盛衰」(東京大学 五百旗頭 薫 教授)

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五百旗頭教授から、戦後の日本国憲法制定までの歴史的変遷について図や写真を用いて補足講義がなされた後、学生からは日本の若者の政治への関心や憲法におけるナショナリズムの考えについてなどの質問が上がりました。

第7回講義:「戦後日本の政治外交」(慶應義塾大学 田所 昌幸 教授)

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田所教授から、戦後日本の政治外交の変遷についての講義の後、学生からは「米国が日本での女性参政権導入を支持した理由」や「冷戦初期の共産圏における「潜在的侵略者」としての日本のイメージはどのように引き起こされたのか」など、政治外交以外に関する質問もなされました。

第9回講義:「経済成長と日本的経営」(国際大学 伊丹 敬之 学長)

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伊丹学長から、日本の経済成長の重要な要因を説明の上、日本の成長の裏に隠された本質を学び、自国の環境に合わせた形で実践を行うべき点など多種多様な視点での説明がなされました。学生からは「バブル崩壊後の日本の経済状況が、日本のビジネスにおける協力システムの根本的な規範に影響をもたらしたのか」など、労働環境における人本主義に関する質問などが寄せられました。

第11回講義:「日本の近代化と教育」(JICA緒方貞子平和開発研究所 萱島 信子 顧問)

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萱島顧問から、日本がゆとり教育に移行した過程・学力への影響・海外からの評価などを解説の上、コロナ禍での日本の教育事情について述べられました。学生からは、江戸時代の寺子屋や明治時代の留学制度(岩倉使節団)、また戦後の教育システムの再構築に関する質問など、日本における教育変遷に関する活発な議論がなされました。

第13回講義:「「アジアと日本」から「アジアの中の日本」へ」(熊本県立大学 白石 隆 理事長)

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白石理事長から、東南アジアと先進諸外国の関係性について、地政学的観点から「東南アジア地域」の外交的重要性やコロナ渦での海外援助などの重要性について説明されました。学生からは、1970年代における日本企業の東南アジア地域への進出理由や日中関係などについて多種多様な質問が寄せられました。

第15回講義:「日本の国際協力」(国際大学 加藤 宏 副学長)

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加藤副学長からは国際協力について豊富な知見・情報量に基づく幅広い解説がなされ、特にインドネシアへの日本のODA協力を中心に説明がなされました。学生からは、日本のODAの効果や歴史、人間の安全保障など多様な質問が寄せられました。

連続講義を終えて

本コースは、インドネシアにおける新型コロナウイルス感染症の感染拡大もあり、オンライン形式で開催されました。その結果、同大学と単位互換制度を導入しているインドネシア各地(バンドン、スラバヤ、マラン、ジョグジャカルタ、パダン、デンパサールなど)の大学からも日本研究に関心のある学生が受講可能となりました。特に地方の学生にとって、本コースに登壇された第一線の日本人研究者による講義を受講する機会は貴重であり、今回のオンライン講義はインドネシア国内各地の学生に広く日本の開発経験の理解を促進する機会となりました。

また、日本人講師による講義に先立ち、学生は事前学習でDVD教材の視聴とそれを踏まえたグループディスカッションを行い、グループで日本人講師への質問を考案・講師に提出したうえで、インドネシア大学側と各日本人講師間でも事前に打合せを行うなどの入念な準備作業により、各回において日本人講師と受講生の間でDVD教材の内容を超えた深い議論・講義が行われました。講義を終えた日本人講師の先生方からは、受講生からの質の高い質問を受けて、「DVD教材を踏まえ、よく事前に学習して受講している印象を受けた」、「受講生からの質問や議論を踏まえ、内容のある交流ができた」など、学生の取組姿勢等に対して高い評価をいただきました。

また、各講義でファシリテーターを務めたインドネシア大学担当講師のヒマワン・プラタマ氏は「学生のみならず、担当講師にとっても日本の近代化を学ぶ貴重な機会となったことに加え、第一線で活躍される日本人研究者との大変楽しい交流の機会にもなりました。」とコメント。また、同じく担当講師のアルドリ・アルマン・ドラジャト氏は「大学・学部・分野の垣根を超えて多くの学生が受講し、日本の近代化が多様な視点から考察される大変良いプログラムであった。」とコメントするなど、現地からも高い評価を得ています。

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ヒマワン・プラタマ 先生

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アルドリ・アルマン・ドラジャト 先生

JICAは、日本の開発経験を学ぶ「JICAチェア」を推進し、インドネシアの人材育成に貢献し、日尼の友好関係強化を図るべく、次年度以降も継続的な長期連続講義の開催を目指します。