オンライン・セミナー「多文化共生・日本社会を考える」連続シリーズ 第6回 特別編「日本のアルキ方 -国内日系人、デカセギからプロフェッショナリズムへ-」開催報告

掲載日:2022.02.03

イベント |

概要

会議名:「多文化共生・日本社会を考える」連続シリーズ 第6回 特別編
「日本のアルキ方 -国内日系人、デカセギからプロフェッショナリズムへ-」
開催日:2022年2月3日
主催:JICA
共催:JP-MIRAI(責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム)
場所:オンライン

主な参加者

主催者挨拶:北岡伸一(JICA理事長)
基調講演:二宮正人氏(サンパウロ大学法学部教授)
講演1:ジュニオール・マエダ氏(写真家)
講演2:安里・トレス・ルイス・アルベルト氏(研究開発職)(元JICA日系社会リーダー育成事業生)

背景・目的

「多文化共生・日本社会を考える」セミナー・連続シリーズは、国内日系社会の現状、外国人材受入・多文化共生にかかる課題、日系人・外国人の日本社会への貢献、共栄共存、日本のあるべき姿などを参加者に共有し、今後の課題解決に資することを目的としてJICAが開催しています。第6回となる今回は、中南米日系人の本邦就労がテーマです。かつての単純労働に留まらず、努力を重ねた日系人が様々な職業について日本社会に貢献していることや、今なおある課題を浮き彫りにしつつ、参加者との質疑応答により、議論を深めたものです。

内容

冒頭、北岡伸一JICA理事長より、日本人の海外移住の歴史を踏まえ、JICAが日本での外国人材受入支援を始めた経緯を説明しました。JICAは、研修員受入や日本人移住者送出しの経験を活用して外国人材の受入に貢献できることや、2020年度から外国人材受入支援を本格的に展開するようになったことを紹介しました。日本人移住者による現地社会発展への貢献の歴史が、日本社会が外国人を受け入れていく際の参考になると指摘し、外国の方に「日本に来てよかった」と思ってもらうことは、国民同士の信頼関係醸成に繋がり、「信頼で世界をつなぐ」というビジョンを掲げるJICAが外国人材受入支援を行う意義を強調しました。

最初に講演した写真家のジュニオール・マエダ氏は、14歳でデカセギ労働者として来日した日系ブラジル人3世です。工場労働者、写真専門学校への遠距離通学、写真家と進んだ努力の経験とその時々の自身と社会に対する想いを吐露し、「辛くとも夢を持つこと」の大切さを語られました。

次の講演者、安里・トレス・ルイス・アルベルト氏は、食品製造業の研究開発職で、日本生まれの日系ペルー人4世です。幼少期はスペイン語のみで生活し日系人としての自覚はなかったが、小学生時代に「JICA海外移住資料館」を訪問し、日系人としての誇りを初めて自覚したとのこと。中3の時に両親が解雇され、高校進学や日本滞在が危ぶまれた深刻な状況に追い込まれた実体験に基づき、各年齢毎の、日本社会の捉え方と自身のアイデンティティ、周りへの感謝について述べられました。

基調講演をされた二宮正人氏は長野県で生まれ5歳で家族とブラジルに移住されました。今はサンパウロ大学法学部教授で弁護士でもあり、伯国外就労者就労者情報援護センター理事長も務められています。先の二人の発表を受けて、自身が移民として伯国社会へ溶け込んだ経験や日本社会で外国人・日系人が生活する上での留意点を講演されました。特に、ブラジルでは一般的であり、自身も経験した高校・大学の夜学経験を通じて、外国人への就学支援の重要性や日本におけるリカレント教育など具体的な日本社会への提案が行われました。

最後にJICA中南米部の吉田部長より、150年を超える日本人海外移住の歴史があって、中南米を中心とした各国や日本の日系社会の方々の生きざまに耳を傾けつつ、現在の日本で努力し活躍される多くの外国人と共に生きる生活のあるべき姿、課題を一人でも多くの方と意見交換する場を今後も創っていきたい、と述べました。また、夜間学校、リカレント教育の重要性が提案されたことに対し、外国人が暮らしやすい社会は、日本人、日本にとっても暮らしやすい社会であり、未来の日本の多様性や新たな文化形成を担う可能性がある外国人材を受け入れることで、日本自身が変わっていく契機にしていきたいと述べました。

資料

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JICA北岡理事長

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二宮氏の基調講演

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マエダ氏の講演

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安里氏の講演

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JICA吉田中南米部長